ノヴィテック・ロッソ

NOVITEC ROSSO
Ferrari 575M Maranello

素材の良さを活かした
GT的ライトチューンに滲む
フェラーリへの深い敬意


イタリア車を手掛けるドイツのチューナーという、一風変わったプロフィールを持つノヴィテック。
そのノヴィテックにおいてフェラーリを専門とするブランドが「ノヴィテック・ロッソ」だ。今回は最新の575Mに、本国ドイツで試乗した。


リポート|中三川大地|D.Nakamigawa フォト|柴田幸治|K.Shibata


ストリートGTとしての資質を追究


 アルファをはじめとするフィアット・グループのクルマに、スーパーチャージャーなどの過給器で圧倒的なポテンシャルを与える。これこそがジャーマンチューナー、ノヴィテックの個性である。
  それはちょうど2年前、'03年のフランクフルト・ショーで発表したフェラーリのプログラム、「ノヴィテック・ロッソ」に対しても同様だった。第一弾として今年の初頭に日本上陸したノヴィテック・ロッソF360、すなわち360モデナベースのコンプリートカーも、お得意のスーパーチャージャーが2基搭載されて最高出力606ps、と強大なパワーに生まれ変わっていた。
  だから、フェラーリのフラッグシップたる575Mマラネロをノヴィテック・ロッソが手がけると聞いたとき、どのような飛び道具が用意されるのかと、リポーターは期待に胸をふくらませていた。
  だが実際には、本国で完成したばかりの575Mは、吸排気チューニングおよびコンピュータのマッピング書き換えのみで、ノーマル比18 psアップの533ps/7250rpmにとどまっていた。
「フェラーリのフラッグシップは、ノーマルのままでパーフェクト。だから我々はそれにちょっとしたアクセントを加えるだけでいい」
  とは、ノヴィテックのセールス・ディレクターという肩書きを持ち、自らも積極的にステアリングを握って開発に着手するディルク・ムルスドルフ氏の言葉である。
  ノヴィテックは、フェラーリを崇拝し、そして最大の敬意を払っている。だからこそ、575Mマラネロに対しては、あえてライトチューンに抑えたのだと思う。
  その推測は、実車を前にして、触れ合い、そしてステアリングを握った瞬間、確信へと変わった。
  外観は、いかにもチューニングカーである。ロングノーズがもたらす美しさは、エアロパーツによってさらに引き立てられる。サスペンションシステムやブレーキ、そしてホイールなどはすべてノヴィテック・オリジナルだ。どこをとっても、即席の開発では到底成し得ないクオリティを持っている。
  ソロソロと走り出すと、そこにチューニングカーらしい神経質さはない。どの回転域からでも無限に溢れ出るトルクに、量産車の中では最速スピードで変速されるF1マチック。これなら、なんの気兼ねもなくドライブできる。
  アクセルを深く踏み込むと、アウトバーンを走り込んでセッティングされたサスペンションシステムの恩恵にあずかれる。荒れた路面であっても突き上げを上手く吸収し、快適であるばかりかドライバーを安心感で包んでくれる。
  これはフェラーリのレーシングカーではなく、グランドツーリングカーである。と考えれば、この方向性に納得できる。過給器に頼って暴力的な加速を手に入れるのもいい。だが、ノヴィテックはフェラーリを愛するがゆえに、スペックにはこだわらず、GTカーとしての質感を追究したのである。

フロントスポイラーの素材は、カーボン+グラスファイバー。オリジナル・エキゾーストシステムは、リアスカートと見事に調和している。ホイールは19インチ。タイヤサイズはフロント255/35R19、リア355/25R19。
内装にはホールド性抜群のオリジナルフルバケットシートにステアリングホイール、ペダル、そして360km/hまで刻まれるメーターが装着される。メーターやステアリングのカラーにはレッドとイエローが用意される。
アウトバーンでのテストを重ね、最適なダウンフォース効果を得られる角度にセッティングされたリアウイング。見た目だけで決まったものではないのだ。これらボディパーツは、550マラネロ用もラインナップされる。
ライトチューンとはいえ、最高出力533ps/7 250rpm、最大トルク60.1kg-m/5300rpmという動力性能。あっという間に異次元的な加速で、200km/hオーバーの世界へと連れ去ってくれる。最強のGTカーだ。
Dirk Morsdorf
ノヴィテック・ロッソSales Director ディルク・ムルスドルフ氏

ラインナップを拡大するノヴィテック・ロッソに期待していてください。

  今回、リポーターはノヴィテックが本拠を置くシュテッテンのファクトリーにお邪魔した。完成したばかりの575Mマラネロを、取材体制が整っていないにも関わらず快く取材させてくれたノヴィテックには感謝の意を示したい。
  さて、セールス・ディレクターを務めるディルク・ムルスドルフ氏は、この575Mマラネロと今後のノヴィテック・ロッソについて、このように話してくれた。
「我々は'89年からフィアット系チューナーとしてやってきましたが、ようやくフェラーリを手掛けることができるようになりました。昨年の360モデナ、そしてこの575Mマラネロと立て続けに発表しましたが、どちらも開発には1年以上かかっています。575Mマラネロは、我々が尊敬するフェラーリのフラッグシップモデルですし、マーケット的にも需要があります。クルマとしてはモデル末期でしたが、ノヴィテック・ロッソブランドとして製作する必要性を強く感じていたのです。現在は、F430の開発が進んでいます。その後は、575Mマラネロの後継車に着手することになるでしょう」
  徐々にラインナップを拡大するノヴィテック・ロッソは、フェラーリチューナーとして今後が期待される要注目ブランドである。
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