ランドローバー・レンジローバー・スーパーチャージド/ヴォーグ

LAND ROVER RANGE ROVER SUPERCHARGED/VOGUE

「ビッグキャット」の
後押しで速さも一線級に


3代目レンジローバーで使われてきたBMWエンジンがついに「退役」、ジャガー製にスイッチされた。その結果、巷ではBMWのV8を惜しむ声もチラホラ聞かれるが、結論を出すのはまだ早い。なぜなら、この交代劇によってレンジローバーは、新たな武器を手に入れたからだ。

リポート|竹平 誠|M.Takehira フォト|望月浩彦|H.Mochizuki


当然、エンジン本体はいずれも専用スペックに


 プレミアムSUVの王者、レンジローバーが、'02年(日本は'03年)の発売以来初の大きな変更を行なった。刷新されたのは、エンジンとトランスミッション。前モデルのBMWユニットは、レンジローバー史上最良のエンジンと賞賛されたが、近年パワー競争の様相を呈するプレミアムSUVセグメントでの競合を考えれば、モアパワーの要求に応えるのは必然。
  そこで新採用となったパワープラントはふたつ。ひとつは、すでにディスカバリー3の上級モデルで採用されているジャガー製4.4リッターV8。もうひとつは、同じジャガー製の4.2リッターV8スーパーチャージャーだ。こちらのユニットはすこぶる強力で、ベルト駆動のイートン製スーパーチャージャーは両バンクそれぞれに水冷式インタークーラーを備える。これはそれぞれに専用ラジエターを持つというカイエンターボばりのスペックで、レンジローバーのトップグレードにも相応しい。
  ここで、NAはランドローバー用として4.4リッターに拡大されたのにスーパーチャージャーの排気量が4.2リッターのままなのは、過給に耐えるためにシリンダーに鋳鉄製スリーブが入るためだ。クランク等は共通だが、ピストン形状の変更で圧縮比もスーパーチャージャーに最適化されている。またカムプロファイルが変更され、バルブリフトが過給に合わせて増やされている。オイルクーラーも、従来のラジエター内蔵に加え空冷のものが追加されている。
  エンジン自体は、NAもスーパーチャージャー仕様もお馴染みのランドローバースペックだ。オフロードを知り尽くしたエンジンコントロールはもちろん、耐水クランクオイルシールや傾斜に強いオイルパンの採用、補機配置を高くする等、伝統の手法が施される。トランスミッションは前モデル同様ZF製だが、従来の5速から新世代の6速(ディスカバリー3と同じ)にアップデートされた。ちなみに、このトランスミッションケースは専用の高強度スペックで、そのオイルパンさえも特注で非常に衝撃に強いプラスチック素材が使われている。さらにボッシュ製トランスミッション・コントロールユニットはこの中に収められ、過酷なオフロード条件からプロテクトされている。
  注目のスーパーチャージドV8がもたらす動力性能は、モアパワーを心待ちにしていたレンジローバー・ユーザーの期待を裏切らない。全域で力強いレスポンスを発揮するのはもちろん、その加速力はプレミアムSUVのトップクラスに位置するものになった。しかも、全力加速中ですらシフトショックを感じないという、お約束のエレガンスを守りつつだ。この動力性能に合わせ、ブレーキも強化された。スーパーチャージド専用装備のブレンボ製モノブロック2ポッドキャリパーは、制動力をひとクラス上のレベルに押し上げていて、これまで不満がないと思っていたノーマル仕様に乗り替えた際に違和感を感じるほどだ。
  ワインディングでは、相変わらずレンジローバーが別格の存在であることを確認できた。それは高G旋回に到るまでタイヤのスキール音を発しないことと、加速旋回時に微塵もラインを膨らませないことだ。これはキャンバー剛性の高いサスペンションと、トルセンセンターデフに依るところが大きい。多くのSUVはフロントタイヤがスキール音を発するし、フル加速の旋回では狙ったラインを外したり操舵感の変化を来すものだが、レンジローバーにはそういう不躾な振る舞いがない。当然、実際にアンダーステアはあるのだが、サーボトロニックのステアリングと相まって操縦者は機敏で正確なコーナリングとしか感じないのだ。スーパーチャージドは、強化された前後スタビライザーや20インチタイヤというオンロード向きのスペックを持つのでこのキャラクターが一層引き立つ。
  20インチを履いてなお乗り心地が快適というのも驚きだが、これもレンジローバーの常識というものだろう。今回車両価格でもこのセグメントの王者に返り咲いたレンジローバーだが、このクルマの購買層にしてみれば、最良のプレミアムに最高の値札がついただけ、ということなのかもしれない。
  ちなみに、NAエンジンの方は新しい排ガス・燃費規制への対応という事情もあるだろうが、ハーフスロットル領域でのレスポンス感が旧BMWユニット(より低回転で最大トルクを出していた)より物足りなく感じた。全開時ならスペック通り速くなっているのだろうが、レンジローバーらしさを考えると、ちょっと残念だ。
  最後に性能とは関係ないが、がっかりした話をひとつ。それは今回、法規制の関係で左フロントフェンダーに「サイドアンダーミラー」なる醜いオマケがついてしまったことだ。レンジローバーたるもの、このくらいのことはCCDカメラを搭載する等、「お金で」解決しておいて欲しかった。

今回のエンジン変更を機に、全モデル新意匠のフロントバンパーを採用する等、ディテールにも手が加えられた。スーパーチャージドは、ダイヤモンドメッシュのグリル類や20インチホイールが外観上の特徴。V8の4.2リッタースーパーチャージャーが叩き出すスペックは、もちろんランドローバー史上最強。
従来からあるヴォーグ(今回の試乗車)とHSEも、グリル回りの意匠を変更。搭載する4.4リッターのV8ユニットは、繊細にして優雅な振る舞いを見せた従来型と比較すると少々分が悪い。今後の熟成に期待したい。だが、それ以上に気になるのはサイドアンダーミラー。「似合う」と言う人など絶対にいないハズ。
スーパーチャージドは、専用デザインの「スーパーチャージド・パーフォレイテド・コンフォートシート」を装備。16ウェイの電動アジャスト機構が付き、バックスレストはショルダー部分のみの角度調節が可能。シートカラーは、写真の「ジェット」の他に「アイボリー」が設定されている。
当然のごとく上質なスーパーチャージドのインテリアは、ステンレス製のペダル類や専用デザインのタコメーター、そしてピアノブラックのウッドトリム等を装備。走りのパフォーマンスに相応しいスポーツ・テイストもアピールする。
 
VOGUE
SUPERCHARGED
■全長/全幅/全高(mm)
4950/1955/1900
■ホイールベース(mm)
2880
■トレッド(前/後)(mm)
1625/1620
1620/1615
■車両重量(kg)
2520
2560
■エンジン形式/種類
448PN/V8DOHC 32V
428PS/V8DOHC 32V
■排気量(cc)
4393
4196
■最高出力(ps(kW)/rpm)
306(225)/5750
396(291)/5750
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
44.9(440)/4000
57.1(560)/3500
■トランスミッション
6AT
■サスペンション(F:R)
ストラット/エアSP:Wウイッシュボーン/エアSP
■ブレーキ(F:R)
Vディスク/Vディスク
■タイヤ(ホイール)
255/55R19(8J)
255/50R20(8.5J)
■東京標準現金価格
¥11,800,000
¥13,200,000
問い合わせ先
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
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