

スバル・インプレッサS203
SUBARU IMPREZA S203

ミツビシ・ランサーエボリューション IX GSR
MITSUBISHI LANCER EVOLUTION IX GSR

高性能車の双璧が織りなす
熾烈な闘いの先に見る、
新たなる道―軌跡―。

モータースポーツ最高峰のWRCを舞台に、語り尽くせぬほどの名勝負を繰り広げながら切磋琢磨を繰り返してきた2台、ランサーエボリューションとインプレッサWRX。
熾烈なる闘いを通し、速さとドライバビリティを磨き続けた結果、驚くなかれこの2台、欧州プレミアムセダンに匹敵する、貴重な財産を無意識のうちに手中に収めていた――。

リポート|石井昌道|M.Ishii フォト|郡 大二郎|D.Kori
 

速さを追求し続けたことで
極限まで高まった機械精度

メルセデスやBMWといったプレミアムセダンが持つハイクオリティシャシーに価値を感じる人にも、「買うべき」とまでは言わないが、「機会を見つけて一度乗ってみてほしい」とは言っておきたい。
そりゃあ、ガンダムチックな見た目に品はないし、レカロシートや小径の本革ステアリングが奢られているとはいえ、室内だって思いっきりチープだ。それに何より、コンマ1秒を削るためになりふり構わない戦闘車両の刺激なんて、せわしないだけでちっともソソられない方も多いだろう。
確かに、ランサー・エボリューションとインプレッサWRXが目指してきたものは、敵を蹴落とすための絶対的な速さであり、オトナなクルマ好きにウケるような「質」だの「味」だのといった官能面は置き去りだ。しかし、互いを良きライバルとしながら、世界を舞台に凌ぎを削って十数年。レギュレーションというモータースポーツならではの制限の中で純粋に速さを磨き続けた結果、自ずと贅肉が削ぎ落とされ、機械精度は極限まで高まった。
あらゆるステージで安定した速さを得るには、それを操る人間に一体感を与える必要もあることから、ドライバビリティも一級品。つまりこの両車、無意識のうちに、名だたるプレミアムセダンたちが伝統に裏打ちされた技術力と信念、それに多大なコストをかけて創造しているシャシークオリティと同様のものを手に入れてしまっている。しかも、モータースポーツでの勝利という確固たる目的に打ち込んできたからだろうか、本物感が強い。「質」や「味」は造り出されたのではなく、知らず知らずのうちに滲み出てきているのだ。
もっとも、初期の頃からそんなにイイものだったわけではない。
'92年9月に産声を上げたランエボは、4WDのネガティブさ丸出しの操縦性だった。コーナーの曲率が小さくなるほど強まるアンダーステア。もちろん直進状態でのトラクションは強力だし、暴力的なターボパワーを路面に余すことなく伝えるには2WDより4WDの方がいいに決まっている。それでも、フロントのグリップ力と相談しながらのドライビングはもどかしいものだった。これに対処するには、センターデフの効きを弱くする手があったが、やりすぎると今度は肝心のトラクションが弱くなる。ノーマル+αのグループN(およびN1)競技に出ている車両は、センターデフのちょうどいいイジメ具合を探るのに四苦八苦していたという。
もっとも、アンダー傾向なのは何も4WDシステムのせいだけではない。インプレッサの水平対向に比べれば重心の高い直列4気筒というエンジン形式も、ライバルに対してはハンデだっただろう。だから、進化の歴史は旋回性能を高める志向が強い。エボIIでは、フロントのジオメトリーを見直し、キャンバー変化を抑制。エボIVでは、リアデフに従来のLSDに変わるAYC(アクティブヨーコントロール)を採用。エボVでは、さらにフロントにヘリカルLSDを標準装着と、曲がらない4WDという悪癖を改善してフットワークはどんどん身軽になっていった。
エンジンに関しては、もともと低速トルクが太く、インプレッサよりも扱いやすくて実戦的。耐久性の面でも上回っており、ダートトライアルやジムカーナといった比較的身近な競技でのシェアは、ライバルを圧倒していた。
一方のインプレッサも、ランエボからわずか2カ月遅れの'92年11月にデビュー。重心の低い水平対向エンジンに加え、ちょうどこの時、20周年を迎えたという4WDに対する技術的アドバンテージがあった。それゆえ、生まれながらにしてランエボよりも曲がりやすい資質をもっており、'94年11月に登場したWRX-RA STiに至っては、任意でロッキングファクターを変化させられる「ドライバーズコントロール・センターデフ」を得たことで、まるでFRのような走りさえ可能となった。旋回性能に関してはインプレッサWRXが優位に立っていたが、エンジンのトルクが比較的薄く、ランエボとの戦いでは常に均衡が保たれていたのだから、このライバル対決、本当に上手くできている。
直接比較されるライバルがいるからこそ見えてくる弱点を強化し、長所にはさらに磨きを掛ける。それを十年以上に渡って続けてきた結果、両車ともに世界のどのメーカーも真似のできないスーパーウエポンに仕上がったわけだ。
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MITSUBISHI LANCER EVOLUTION IX GSR |
熟成の極みに達した9世代目 |

Specification
■全長×全幅×全高=4490×1770×1450mm
■ホイールベース=2625mm ■車両重量=1410kg
■エンジン種類/総排気量=直4DOHC+ターボ/1997cc
■最高出力=280ps(206kW)/6500rpm
■最大トルク=40.8kg-m(400Nm)/3000rpm
■ トランスミッション=6MT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク ■タイヤサイズ=235/45R17
■東京標準現金価格=3,570,000円(三菱自動車工業)
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