ベントレー・コンチネンタル・フライングスパー

BENTLEY CONTINENTAL FLYING SPUR

由緒正しき掟破り

コンチネンタルGTに続く、ベントレーとVWのコラボレーション第2弾、コンチネンタル・フライングスパーの試乗会がイタリア・ベネチアを基点に開催された。そのネーミングは1957年に発表された同名サルーンに由来するが、約48年の年月を経て蘇った21世紀版フライングスパーは、果たしていかなるパフォーマンスを披露してくれるのだろうか。

リポート|吉田 聡(本誌) フォト|ベントレーモーターズジャパン

常軌を逸するハイパフォーマンス


 このところドイツ勢を中心とする狂気とも思えるほどのハイパワー化の波は、いまや最高級サルーンの世界にまで及んでいるが、その力と技、そして存在感において、目下このコンチネンタル・フライングスパーの右に出る者はいない。
  それもそのはず、ベースは一昨年に登場するや、超絶的なパフォーマンスで我々の度肝を抜いた4座クーペのGTであり、そのホイールベースを320mm延長して全長5.3mのビッグサルーンに仕立てたのがフライングスパー。今回、その最新4ドア・ベントレーを北イタリアで駆り、さて、何からどうお伝えするべきかに逡巡していたのだが、はっきりいって、もはやこのクルマの精神世界は我々の常識を遥かに超えたところにあるといわざるを得ない。
  たとえばその加速感。GTに対して車両重量は+90kg嵩上げされているにも関わらず、アウトストラーダでアクセルペダルを踏みしめた瞬間、「背中がバックレストに押しつけられる」どころではなく、視界が一気に狭まり、その先にあるブラックホールの中に吸い込まれていくような感覚に陥るほど。すなわち、200km/hはほんの通過点であり、速度計の針が250km/hを超えてもなお、アクセルには踏み代が十分に残されているという有り様。だから100km/h巡航など、感覚的には軽くジョギングしているようなものだ。
  GTと共通のパワーユニットは、VWアウディ系のトップモデルにも搭載される、バンク角15度の狭角V6を2基組み合わせた6リッターW12気筒がベース。これを英国クルー工場に送り込んでボルグワーナー製ターボチャージャーを2基装着、結果として560psと66.3kg-mという途方もないパワーとトルクを発揮する。注目すべきは、わずか1600rpmという低回転でピークトルクに達し、そこから6000rpm以上までそれをキープし続けるという超フラットなトルク特性で、実際、どこから踏んでも弓なりの加速が得られるほど全域で力が漲る。もちろん、裏返せばそれだけ扱いやすいということでもあり、トランスミッションはパドルスイッチ付きのティプロトニック6速ATが組み合わされるものの、このエンジンならばギアは4枚でこと足りるはずだ。
  これほどのパンチを路面に伝えるシャシーも基本的にはGTと共通というか、元を正せばVWフェートンのコンポーネンツが多数流用されているのは知ってのとおり。すなわち、駆動方式はトルセン式センターデフと前後LSDの組み合わせによるフルタイム4WDで、前後50対50のトルク配分を基本に、スリップを感知すると適宜必要なトルクを4輪に振り分ける。
  サスペンションも同様で、エアスプリング、ショックアブソーバーともに完全電子制御タイプ。任意にノーマル/コンフォート/スポーツのモードに設定できるほか、車速が250km/h以上に達すると、自動的にフロントが10mm以下、リアが25mm以下に下がって車両を安定方向に導く。ただし、各コンポーネンツはGTから若干の改良が施されており、たとえばリアのサブフレームはスチール製からアルミ製のそれに変更。ボディの大型化とリアパッセンジャーの乗り心地に配慮して剛性アップと軽量化が図られているほか、エアサス自体もややコンフォート方向にチューンされている。
  ちなみに、今回のテストドライブでは、結果的に大部分のルートをスポーツモードで走らせることになった。やや硬めの乗り心地ではあるのだが不快なほどではなく、むしろフロアがフラットに保たれるぶん快適。これもリアコンパートメントならば、また異なる印象を受けたのかもしれないが。
軽量コンパクトなVW製6リッターW12にターボチャージャーを2基装着。エンジン本体は各パーツの状態で英国クルー工場に運び込まれ、ベントレーの熟練工が手作業で組み上げる。
試乗車が履いていたタイヤは275/40ZR19サイズのピレリPゼロ・ロッソ。オプションで専用開発となる275/35ZR20のヨコハマ・アドバンスポーツを選ぶこともできる。
GTに対して50cm長く、9cm高い4ドアボディ。ただし、空力性能はフライングスパーの方が優れており、Cd値はGTの0.33に対して0.31をマーク。車重も+90kgに抑えられている。
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