カーライフのなにをもって幸せとするか?
永遠の命題を、奇才・渡辺敏史がユル〜く語りまくる新説自動車幸福論。
今月は、一見いびつなミニバン崩れ。その実そこらのプレミアム
サルーンよりも豊潤な世界を提供するアヴァンタイムを。

文|渡辺敏史|T.Watanabe 写真|宮門秀行|H.Miyakado
取材協力=ルノー・ジャポン TEL:0120-706-365

フレンチ・モダンアートたるアヴァンタイムには、都会の雨がよく似合う。夜の神宮前にて、不思議オーラ全開の図。

 仕事が立て込めば週に4度は行き帰りすることになる箱根という場所は、僕にとっては水と緑に溢れる観光の名所というより、単なる「現場」でしかない。
  嫌味っぽい耳障りかもしれないが、悲しいことに十数年も同じことを続けているうちに、いつの間にかそういう醒めきった心持ちになってしまった。別に箱根を往復すれば、クルマのすべてがわかるわけでもなんでもないのに。
  なんて偉そうに言いながら、先日も取材でヘイコラと箱根に赴いた。道中は交通の流れも霧の被り具合も含めて余りにいつも通り。刺激といえばクルマが大層ご立派なものだったことと、それに呼応するように撮影場所が某オーベルジュだったことくらいである。
  ひと通りの撮影が終わったあと、そこで昼飯を食った。
  そこのオーベルジュに隣接したバリテイストのスパ&リゾートと言えば、その方面に明るい読者の方はなんとなくお察しいただけるだろう。オーナーシェフの振るってくれたアジアごはんは両親に申し訳ないほど美味しく、そして、小雨にそぼ濡れる窓際の景色と共にゆったり流れる箱根のひとときも瞳孔が開くほど新鮮だった。
  ひと通りの料理を食らい、バリ式コーヒーをすすりながらオーナーシェフの話を伺うと、なんでもそのオーベルジュには「2泊」というプランがあるという。
  たとえばの話、こういうことだ。
  よくある平凡な金曜日に平穏に仕事を終えてクルマを引っ張り出し、都心のオフィスから娘さんなり嫁さんなりを乗っけてズパーンと箱根を目指す。谷町JCTからそのオーベルジュまでは、適度なワインディングも織り込みつつ1時間半程度のドライブといったところだろうか。つまり、6時に都心を出れば8時にはそこに着くという計算だ。急ぐ必要もない。着いてしまえばともあれ旨いメシ食って酒飲んでその日はグタッと寝ることになる。
  そして翌朝は布団の中で思い切りグダグダしてもよし、しゃっきり散歩でもよし、テニスもゴルフもOKなら温泉でほっこりしてもよし。それらに飽きた頃合いに蕎麦でもすすった後、件のアジアンスパでこってり体を揉みほぐしてもらい、夕暮れ時に再び湯船に浸かってグニャグニャに体を慰めた後、前日とは違う旨いメシと酒と部屋で寛ぎまくるというわけである。翌日は日曜日だから午前中にチンタラとドライブして東名に乗り、左車線をテレテレと都心に向かってもげんなりするような渋滞に捕まることはない。
  ――と、ちなみにこの週末が一人4万円+α。確かに贅沢だが、都心で時間に追われる人にとってはそれがお手軽かつ濃密なリフレッシュの機会になる。そして思えば箱根は、首都圏で息苦しい毎日を送る人々にとって、もう長いことそういう役目を担い続けてきたエリアでもあるわけだ。
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