ランチア・ムーザ1.4 16V
LANCIA MUSA 1.4 16V

まさにランチア的な
コンパクト・プレミアム


コンパクトなモノスペースというと、そこはかとなく漂う生活臭がこれまではクルマ好きにとってのネックだった。だが、そんなカテゴリーも名門、ランチアが手掛ければご覧の通り。実用的ながら、趣味性も高いモデルをサラリと作ってみせたのだ。

リポート|小野泰治|T.Ono(本誌) フォト|佐藤正勝|M.Satoh


その走りは望外なほどスポーティでもある!


 近年、自動車メーカーや我々メディアが頻繁に使う「プレミアム」なる言葉だが、こと日本に関する限り、それが指すのはいわゆる「上質なモノ」。だが欧米のメーカーがプレミアムと言うとき、そこには「他にない独自性」という意味も込められているのだという。
  で、そうした視点で眺めると、ムーザは間違いなくプレミアムだと思う。基本的には現代的コンパクト・モノスペースながら、スペシャルティカーに通じる浮世離れした色気を醸す仕業をして、プレミアムと言わずに何と言おう。同クラスのモノスペースの多くが生活臭を払拭しきれていないことを思えば、陳腐な表現で恐縮だが「さすがイタリアン・デザイン」とか、「さすがはランチア」というセリフを思わず使いたくなる。
  もっともこのムーザ、同じランチアでもイプシロンやテージスほどオリジナル度は高くなくて、構成パーツの多くはフィアット・イデアと共通。我々、日本のクルマ好きが勝手に膨らましている“ランチア観”よりはずっと庶民派だ。だから、先に書いた色気ウンヌンも「ランチアの製品」という先入観からリポーターが過度にイメージを膨らませただけ、という指摘があっても否定はしないし、オリジナリティにしても単にイデアが日本に導入されていないからそう見えるに過ぎないのかもしれない。
  だが、そうしたイメージによる「役得」を無視しても、ムーザの魅力度は依然として高い。まず動力性能だが、1.3トン近いボディに95psにすぎない1.4リッターエンジンの組み合わせながら、走りは必要にして十分なレベル。ミッションはパンダ等と同じクラッチレスの5速セミATだが、1名乗車ならATモード任せでも不満はなく、とりあえず周囲の流れに後れを取るようなことはない。
  このATモードは、シフトのタイミングも読みやすく馴れればアクセルの加減でギアの選択も自在。もちろん絶対的な速さは知れたものだが、それで不満ならマニュアルシフトに切り替えれば、少しうるさいが元気よく回る直4ユニットを駆使して早いペースを維持できる。排気量が排気量だけに定員乗車は苦しいと思われるが、大人2人+子供あたりまでなら「遅い」と感じるケースは少ないはず。数値こそ凡庸だが、この1.4リッター+セミATは積極的に走りたいときに、しっかり応えてくれるのだ。
  積極的な走りに応える、という意味ではシャシーの出来映えも見事。背が高いモノスペースとあって、イプシロンあたりと比較すれば足回りは硬めの印象。しかし、乗り心地自体はソフトな感触で、高速域ではフラットかつ滑らかなフィールを満喫できる。その一方、ハンドリングはスポーティと表現しても差し支えないレベルなのだ。むろん、ラフな操作をすれば重心が高いだけにグラッと来るが、ロールスピードは入念にチューニングされている。だからスムーズな操作を心掛ければ、ニュートラルに近いステア特性を利用して相当な領域までコーナリングスピードが上げられる。実際に試してはいないが、おそらくワインディングの下りではモノスペースらしからぬ速さを披露してくれるだろう。
  というワケで、新世代のファミリーカーらしい使い勝手と楽しめる走りを実現したムーザというクルマ。コンパクトなモノスペースにプレミアム性も求めたい人にはうってつけの存在と言えるだろう。
4mを切る全長を考えれば、ラゲッジスペースは十分と言える広さ。非対称分割可倒式のリアシートには、前後スライドやリクライニング機能も備わり、フレキシビリティも高い。容量は320〜1420リッターとなる。
フィアットとの絡みで言えば、プントとイプシロンと言うよりもウリッセとフェドラ(いずれもミドルクラスのミニバン)の関係に近いイデアとムーザ。その走りはスペックから想像する以上に活発、ハンドリングに至ってはスポーティに仕上げられている。
ガレーヂ伊太利屋を通じて導入されるムーザには、「スカイドーム」と呼ばれるダブルグラスルーフが装備される。前側はアウタースライド機構付き。エンジンは1.4リッターガソリンで、ミッションは5速のセミAT。
インパネの基本形状はイデアと同じ。センターメーターを採用し、主要な操作系も中央部分に集めたデザインは、機能的ではあるもののムーザで唯一フィアットを意識させる部分でもある。
一方、シートはランチアのイメージに相応しいデザインと座り心地を誇る。リアは、写真のようなスライド機構やセンター部ヘッドレスト裏のカップホルダー等、多機能ぶりも魅力だが居心地も一級品。
Specification
LANCIA MUSA 1.4 16V
■全長/全幅/全高(mm)
3980/1690/1630
■ホイールベース(mm)
2508
■トレッド(前/後)(mm)
1444/1431
■車両重量(kg)
1280
■エンジン型式/種類
−/直4DOHC 16V
■排気量(cc)
1368
■最高出力(ps(kW)/rpm)
95(70)/5800
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
13.0(128)/4500
■トランスミッション
5速セミAT
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル:トーションビーム/コイル
■ブレーキ(F:R)
Vディスク/ドラム
■タイヤ(ホイール)
195/60R15(6J)
■東京標準現金価格
¥2,709,000
ガレーヂ伊太利屋 TEL:03-3769-0888
※上記スペックは本誌発売当時の値です。
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