メルセデス・ベンツCLSクラス
MERCEDES-BENZ CLS-CLASS

名家メルセデス・ベンツの異端児は
華麗なデザイン・エゴイスト。


丸形4灯式ヘッドランプを持つ、W210型Eクラスが登場したのは'96年のことだった。これによって幕を開けたメルセデス・ベンツのデザイン革命は、'99年のW220型Sクラスを経て、CLSクラスでひとつの極みに達したといえるだろう。CLSはデザインにもっとも重きを置いて開発された、史上初のメルセデスなのだ。

リポート|萩原秀輝|H.Hagiwara(CLS350 & CLS500)
リポート|熊倉重春|S.Kumakura(CLS55AMG)
フォト|郡 大二郎|D.Kori(CLS350 & CLS500)
フォト|宮門秀行|H.Miyakado(CLS55AMG)



CLS350 & CLS500

積極的に回したくなる3.5リッターV6DOHC

 メルセデス・ベンツのカタログは、これまでそこで紹介されるモデルのボディカラーの多くがシルバーメタリックだった。BMWの本拠があるミュンヘンでは、空港にアウディ、中央駅(環状線から見える)にメルセデス・ベンツのショールームがあり、さながら包囲網を展開。それは余談として、メルセデス・ベンツのショールーム前面を覆うガラス張りの壁面内側は、シルバーメタリックの各モデルで埋め尽くされている。
  つまり、シルバーメタリックはメルセデス・ベンツのイメージを象徴するボディカラーなのだ。もちろん、ドイツのナショナルカラーという意味合いもあるが、シルバーメタリックには完璧な機能を備えたクルマというイメージとも重なる。それはそれとして、いかにもメルセデス・ベンツらしかった。ただ、その一方では、情緒に欠けるクルマというイメージもあったのではないだろうか。
  だが、メルセデス・ベンツは変わろうとしている。その先駆けとなるCLSクラスが誕生したからだ。CLSクラスのカタログには「一世紀を超えて待ち続けた初めてのメルセデスです」と、自ら明らかにするように、見る人の情緒を直接刺激するスタイリングの価値を前面に押し出している。カタログの多くのページを飾るクルマのボディカラーも、ボルドーレッド。ある意味、これは事件だ。
  実際に目の当たりにしたCLSクラスは、カタログで見る以上に美しい。Eクラスをベースに車高を1390mmまで落とし前後のオーバーハングを長くしているので、スタイリングは低く伸びやかだ。機能という点では、オーバーハングの長さは無駄になりかねないが、CLSクラスのスタイリングを見ればほとんどの人が代償として余りあると感じるだろう。
  スタイリングの美しさを実現するためのプロポーション上の手法としては、クライスラーの各モデルや従来モデルのジャガーXJとの共通性が見出せる。ジャガーは現行モデルのXJで、情緒よりも機能を優先した点は、メーカー間の取り組みの違いとして興味深いが、それまでにない価値を求めた結果といえるはずだ。
  CLSクラスは、室内スペースをあえて小さく見せてクーペのようなプロポーションを得ている。とはいうものの、前席で狭さを感じることはない。フロントウインドーはかなり傾斜しているが、運転席で感じる頭まわりのスペースはSクラスよりも広いほどだ。インスツルメントパネルのデザインで、横方向の広がりを際立たせていることも効果をもたらしている。
  ちなみに、インスツルメントパネルを覆うウッドパネルは、シルクマット仕上げとハイグロス仕上げが用意されている。とくに、艶を抑えたシルクマット仕上げは、新しいメルセデス・ベンツを象徴する。リポーターの主観として、こうした仕上げは珠目ではなく柾目が似合うと思うが、市場の反応は上々だという。従来ながらの艶やかなハイグロス仕上げを好む人も少なくないはずだが、CLSクラスの誕生によって顧客の志向も変わりつつあるのかもしれない。
  後席も、足元スペースはEクラスと変わらない。さすがに、頭上スペースは余裕十分とはいえず、Cピラーが横方向の開放感を減じている。それでも、実用上はまったく不満のない広さを得ている。さらに広い室内スペースが必要なら、メルセデス・ベンツにはほかにいくつもの選択がある。
  さて、CLSクラスを走らせずに長々と行数を埋めてきたが、基本的にEクラスの派生モデルなので走りはその保証が付いているようなものだ。ただし、CLS350は、新開発のV型6気筒3.5リッターエンジン(最近Eクラスにも搭載された)を積む。最高出力は272psに達するだけに、全長が5mに迫るボディを軽々と加速させる。同じエンジンを積むSLK350のように高回転域で豪快なサウンドを響かせる演出は控えられているものの、6000rpmオーバーをきわめる過程で感じる力強さはかなり刺激的だ。
  トランスミッションは、7速ATを組み合わせる。トランスミッションの多段化はトレンドといえるが、頻繁な変速は先を急がされるように感じかねない。だが、そのあたりは高度な電子制御が変速タイミングを最適化しているらしく、期待以上にシフトダウン/アップが繰り返されることはない。
  多段化のメリットは、加速時よりもむしろ高速巡航時にある。日本の速域であれば2000rpmそこそこを使えば事足りてしまい、騒音の低減はもちろん燃費の向上にも役立つ。追い越し時は、アクセルを少し踏んだだけでも7速から6速にシフトダウンするが、ギア比が接近しているので変速ショックは皆無だ。
  CLS350で唯一気になったのは、サスペンションの動きがスッキリしていないことだ。メルセデス・ベンツにしては大径で幅広な245/45R17サイズのタイヤを装着する(それがスタイリングの美しさの一因になっている)ため、ばね下の重さを増やすことになり、サスペンションとの相性を損なっているのかもしれない。
ボディサイズはEクラスに比べ、全長+95mm、全幅+55mm、全高−40mm。2855mmのホイールベースは共通だ。とはいえ、その強い存在感はEクラスとは比べものにならないほど。
CLS350はSLKで初搭載された新世代3.5リッターV6DOHCを積む。組み合わされるトランスミッションは7速AT。スペックは272ps/6000rpm、35.7kg-m/2400〜5000rpm。
完熟の域に達したV8SOHCはCLS500用。1気筒あたり吸気2排気1の3バルブユニットで、5リッターの排気量から306ps/5600rpm、46.9kg-m/2700〜4250rpmを生む。
CLS350。街中から高速道路までパフォーマンスはこれで必要十分以上。SLKほどのサウンドチューンは施されていないが、なかなかスポーティなエキゾーストノートを響かせる。
CLS500。タイヤがやや勝ち気味のCLS350に対し、こちらは上手く履きこなしている。快適な乗り心地を保ちつつ、ワインディングでもボディの無駄な動きのほとんどを抑えながらハイペースで駆け抜けられる。
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