

ポルシェ・ボクスター
PORSCHE BOXSTER

スポーツカーの理想形へ――
鮮烈なまでのジャンプアップ。

昨年9月のパリ・サロンでデビューした新型ボクスターが、997上陸の興奮がまだ冷めやらぬ日本へ、早くもやって来た。
基本コンポーネンツは先代のコードネーム986型を踏襲し、デザインも超キープコンセプトであるものの、その走りは、986とは別次元といえるほどに進化を遂げていた!

リポート|熊倉重春|S.Kumakura フォト|宮門秀行|H.Miyakado
 

つまり911はGTカー、ボクスターはスポーツカー

ポルシェ911の社内コードナンバーが996から997になったのと同時に、ボクスターも986から987になった。'96 年の登場から8年、常に改善が続けられてきたボクスターだが、コードナンバーまで変わったからには、見えない各部に多くの手が入ったことを意味する。そして、これから短くとも3〜4年は続くだろうが、これが現行ボクスターとして最後の世代になる可能性も囁かれている。つまりこの基本設計における完成形ということになる。
そこで早速テストした結論から報告すると、かなりお薦めではある。一切の先入観なくキッパリ明快なスポーツカー風味を好むドライバーにはSが、きびきび機動力あふれる洒落たスニーカー感覚を求めるなら2.7が、それぞれ的確なチョイスだろう。
どうもポルシェというと911のイメージがあまりにも強く、ボクスターが「ついで」的に見られる傾向にあるのが惜しい。格段に安いせいでもあろうし、たしかに以前は作りの印象が安っぽく思える部分もあった。しかし'99 年にSが追加された時点で、それまでとは比較にならないほど各部の質感が向上し、やがて2.7もそれを追ったから、もはやチープ感で語れるクルマではなくなっている。
それどころか、ポルシェ技術陣がことのほかボクスターに力を入れているのが、乗ってみればよくわかる。彼等の考えでは、911よりボクスターこそスポーツカーの本筋だと言いたいに違いない。ただ世間の思い込みがあまりに強いので、911伝統のRRを正面きって否定しにくいだけではあるまいか。そもそも、すでに広く知られている通り、戦後間もなくオーストリアの寒村グミュントで産声を上げた、ポルシェと名がつく本当の試作第1号車はミッドエンジンだった。だから早くも'50 年代から、GTたるべき356とは別に、リアルスポーツないしレーシングスポーツとしてのRSスパイダーはミッドエンジンであり、それはその後すべてのレーシングカーに受け継がれただけでなく、'70 年代初期にはVWとのコラボレーションによってミッドエンジンの市販車914も発売している。
話が大きく逸れてしまったが、そんな流れを汲むボクスターには、いかにもスポーツカーらしい軽さと開放感が満ち満ちている。これに比べると911は偉大かもしれないが、そのぶん空気が重い。そこでまず基本である2.7に乗って――いや、ここで今回の試乗が大失敗であることを発見した。基本的にはノーマル仕様であるものの、このページに登場するクルマは、本来ならオプションであるはずの太いタイヤ、すなわちSと共通する前235/40ZR18、後265/40ZR18のミシュラン・パイロットスポーツを履いているではないか。本来はもっと細い17インチが標準装備。公道で試せる範囲では、このタイヤ変更だけで2.7とSの差異が非常に小さくなってしまっている。
しかも、さらにオプションの電子制御減衰力可変ダンパーPASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネジメント)まで組み込まれてしまっている。本来あるはずのサスペンション性能の違いより、これのオン/オフの差の方がずっと大きい。だからここでは、それでも判明できる範囲の多少の差だけ報告しておこう。
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一見したところデザイン上の変更点は分かりにくいが、リアフェンダーの張り出しが大きくなり、よりシャープな印象を強めている。ボクスターSのマフラーはデュアルタイプ。 |
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水平対向ゆえ、エンジンはキャビン後方のごく低い位置にマウントされる。だが、フードを開けるのは大仕事。2.7のスペックは240ps/6400rpm、27.6kg-m/4700〜6000rpm。 |
左はSのノーマルシート、右は2.7のスポーツシート(オプション)。レザー表皮は両車ともにオプションで、通常は人工皮革+アルカンタラのコンビとなる。キャビンの質感は986に比べて高まっているが、スポーツカー的雰囲気では986に軍配が上がるか!?
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インパネの基本構造は997とほぼ共通だが、エアベントを丸形にしてカジュアルな雰囲気を作り出している。3連メーターの文字盤は2.7がブラック、Sがホワイト。ラップタイムの計測に便利(?)なダッシュボード上のストップウォッチはオプション設定。 |
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