カーライフのなにをもって幸せとするか?
永遠の命題を、奇才・渡辺敏史がユル〜く語りまくる新説自動車幸福論。
今月は、なごみ系ステーションワゴンのファイナルウェポン、
生けるスウェーデンの良心、サーブ9-5エステートを。
文|渡辺敏史|T.Watanabe 写真|宮門秀行|H.Miyakado
取材協力=日本ゼネラルモーターズ TEL:0120-86-9395
街中をチャリで流していたら、ふと姉さん女房ワゴンに目が留まり、しばし心を和ませるの図。
思い切り私事になるのだけど、去年の暮れにレガシィ・グランドワゴンを買った。ほぼ10年落ちの最初期型はアウディ・オールロードやボルボXC70の叩き台にもなった――と書けば聞こえはいいが、なんのことはない。50万くらいの予算で気の効いた実用車を探していたところ、クロカンとワゴンの両刀的な役目を果たしてくれるこれに行き着いたという程度の盛り上がんない話である。そもそも50万円で気の効いたもへったくれもないもんだろうと思うが、僕にとっては必死のお買い物だ。
ステーションワゴンというものを初めて手に入れて日常的に使ってみると、自分がこんなに絵にならない生活を営んでいたのかということを痛感させられる。
とにかく、積むモノがなんにもない。フロアの凸凹も整然と整えられた自慢の荷室は連日連夜もぬけの殻である。これを買ってからというもの、唯一活躍した瞬間といえば、パンクした自転車を修理屋にもっていった時くらいなものだ。世の中にはこれにカヌーやらボードやらテントやらをガシガシ積んで週末ごとにどこぞに出掛けている人がゴマンといるんだと思うと、自分の、健康的な遊びに対する貧困な知識と行動力のなさにほとほと嫌気がさす。
つまんない男の味気ない人生を乗せて、今日もレガシィ・グランドワゴンは空荷で箱根の取材現場を目指す。牛のあくびのようなエンジンのだらしない吹け上がりに加えて、ジャガーがネコ足ならこいつはタコ足とでも呼びたくなるようなヌルい足回りがもたらすクタクタのぬいぐるみのような乗り味で、まるで急ぐ気にさせられない。今の僕とグランドワゴンの関係を支えるキーは、狙い通りだったこの、熟女系の乗り心地である。
世の中的には今や、ステーションワゴンは瀕死の状況となっている。欧州はともかく日米においてはその主たる用途はSUVやミニバンにブン取られ、生きる目的を失いつつあるといっても過言ではない。果たしてこの道具は何をすべきものなのか。そういうところから考え直さないといけない領域に、このカテゴリーは来ているのかもしれない。
SUVやミニバンに取って食われたステーションワゴンの数少ない生き残りが目指している用途目的に「急ぐ」ことがある。高速道路は大排気量エンジンやハイブーストの過給器にモノを言わせてテポドンの如く突っ走り、山道ではシャコタンエアロで地面をわっしと掴み取り、高重心のSUVミニバン風情をドツキ回す。
思えばアウディのRS6アバントなんていうクルマは、そんなのの最たるものだった。乗ればもはや踏むくらいしかやることがない。目的地に行って何しようと胸を膨らませる以前の目的地に行くまでの間、悪い子はおらんかねえと、なまはげ状態で高速道路の右車線に目を光らせるのが週末の力点……みたいなステーションワゴンが世の中に蔓延した一因は、それこそボンネットに穴の開いたレガシィにもあったりするわけだ。
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