クライスラー300C
CHRYSLER 300C

往年の味わいを現代的センスで包んだ、
アメリカン・ビッグ・スポーティセダン


押しの強い外観とV8、FR駆動など「いかにも」な成り立ちの300C。
だが、コイツを安直なレトロアメリカンと思ったら大間違い。中身はしっかりアップデート、スポーツ性ではドイツ勢をも凌ぐ実力派なのだ。


リポート|笹目二朗|J.Sasame フォト|松本高好|T.Matsumoto


自慢の「HEMI」は可変気筒システムを採用


 クライスラー300Cが、いよいよ日本でも発売された。最近、導入されたインポートカーの中でも、とびきりの個性派と呼べる1台だ。「強いアメリカ」の復権を象徴する5.7リッターV8の“HEMI”エンジン、15年ぶりとなる後輪駆動への回帰、強さを強調するボディデザインなど、特徴をざっと挙げただけでも、このクルマの輪郭は見えてくる。
  まずエンジン。HEMI(ヘミ)とは、Hemispherical(半球の)の略で、クライスラー製V8でこの愛称が最初に使われたのは'50年代のこと。元々、V型エンジンの燃焼室はクロスフローがほとんど。だから、半球型燃焼室は何もクライスラーに限ったものではないのだが、以降彼らは'60〜'70年代のレース活動などを通じてHEMIに大馬力高性能エンジンの象徴、というイメージを与えることに成功している。
  そんな背景の中で現代に蘇ったHEMIの基本構成は、アメリカ的なOHVの2バルブ。カムシャフトは1本で、プッシュロッドとロッカーアームを介してバルブを駆動する。OHVというと一見旧式のように思われがちだが、“頭デッカチ”なDOHCと違ってエンジンの重心高を低く抑えられるメリットもある。要するに「パワーなど排気量任せでいい」、という発想だ。ボア×ストロークは、99.5×90.9mmで、総排気量は5654cc。パワー&トルクは、340ps/5000rpm&53.5kg-m/4000rpmを発揮する。それを受け止めるミッションは5速ATとなる。
  最新技術としては、8気筒と4気筒の可変容積(MDS=マルチ・ディスプレースメント・システム)が挙げられる。これは、内筒と外筒で構成されるバルブリフターのうち、走行状況に応じて内筒をソレノイド作動で止めることでバルブを休止させるもの。実際には1、4、6、7という特定のシリンダーを止めるわけだが、ガスを掃気せず圧力が高い状態で止めておくので、8気筒への復帰に要する時間はわずか0.04秒。4気筒から8気筒への切り替えは、たとえば軽い登り坂のようなところで負荷が増した際にスロットルを踏み込めば確認できるが、実際は意地悪く観察しないとわからない程度にすぎない。
  300Cには、V8の他に3.5リッターV6も用意されていて、パワー&トルクは249ps&34.7kg-m。排気量だけ聞くと、同門のメルセデス製V6をイメージしがちだが、こちらは先代にあたる300M用を小改良したもの。300MはFFだったが、エンジンは縦置き。組み合わせる4速ATと共に、さほど大きな改造をせずとも300Cに搭載できたワケだ。
  復活したFR駆動だが、サスペンションもメルセデスとの共用パーツこそあれジオメトリーは独自のもの。前=ダブルウイッシュボーン、後=マルチリンクの4輪独立懸架である。ステアリングギアボックスは、ラック&ピニオン。日本仕様のタイヤサイズは、排気量を問わず225/60R18で、300C専用のピレリP7となる。
  ディメンションは、全長×全幅×全高=5020×1890×1490mm。ホイールベースは3050mmで、外寸はメルセデスのSクラス並み、ホイールベースの長さはそれを凌ぐ。よって、FRの利点でもある最小回転半径は6mに若干欠ける程度に止まる。
  だが、このクルマのハイライトは、極めて個性的なデザインだろう。60ハイトの18インチという巨大なタイヤ、下半身の丈を高く採りグリーンハウスを薄めにしたボディ、長いホイールベースと相対的に短い前後オーバーハングなどが織りなす外観は新鮮だ。高い安定性と機敏そうな操縦感覚を連想させる、ある種FF的プロポーションは強い押し出しも感じさせる。
  同時にメッキを配した格子グリルはアメリカ車らしい力強さがあり、一見してそれとわかるパワー感を漲らせている。

ヘッドがアルミ製となるV8のHEMIエンジン(写真左)には、クライスラーグループのセダンでは初採用となる5速AT(製造はインディアナ州のココモ工場)を組み合わせる。V6(同右)とその4速ATは先代にあたる、300M用を改良したもの。
センターパネルやクロームのトリミングなど、細部の質感はイマイチながら、ゆったりした雰囲気はならではの魅力。ステアリングやドアトリムの一部がウッド仕上げとなる5.7HEMIに対し、3.5は同じ部分がべっ甲調アクセントとなるが快適装備はほぼ共通。
サイズがサイズなだけに、前後席ともスペースは十二分。座り心地は、ドイツ車とアメリカ車の中間とも言うべき硬さ。座面が前下がりで、着座姿勢が乱れやすいのが難点。
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