カーライフのなにをもって幸せとするか?
永遠の命題を、奇才・渡辺敏史がユル〜く語りまくる新説自動車幸福論。
今月は、いかなる時も運転に退屈しない(というかそのヒマがない)、660ccの伝説的ミッドシップ・オープン、ホンダ・ビートを。
文|渡辺敏史|T.Watanabe 写真|宮門秀行|H.Miyakado
夕日とビートの2ショットを撮るべく高速道路を必至の体で走って湘南にたどり着けば、すでに夕日は海に沈んでおり。トホホ…。
実はこのビート、いま、僕のものであって僕のものではないという複雑な状況に置かれている。
話は今年の頭に遡る。ある日、便所でいつものごとくカーセンサーを開いていたところ、足立の方にあるマツダのディーラーで'94年型のマスタングが18万円で売られているのを発見した。伝統ということばのにんべんにそろそろカビが生えそうなくらい旧い、5リッターのOHVを積んだクーペだ。
日夜飽くなきスローカーライフを追求する僕は、早速便所からケータイをかけ、そのタマを押さえることに成功した。ボンネットの色が退けているからということで原付並みの値段で売られていたそれは、まんまと我が家の車庫にも収まり、トントンプーと契約までこぎつけてしまったわけである。
そうなると困ったのが、このビートの行方だ。手放したくはないけど置き場がない。そして、さらに駐車場を借りるほどの稼ぎもない。第一、三台も2ドアのクルマ並べてなにしようってえんだ俺は。後先顧みない買い物は、ここで大問題を我が家に投げかけたわけだ。
「1年くらいなら乗ってますよ僕」
救いの手を差し伸べてくれたのは以前、僕の担当をしてくれていた某編集者だった。
マスタングは1年でもいい。その間にOHV・V8の想い出が作れればそれで御の字だから。というわけでその間これ買ってよ、来年売った値段で買い戻すからさ。
本当に未練がましい話である。1年経ってこいつと別れたらまた付き合おうぜベイベー、なんて話を今日びの娘さんにしたならば、FOMAの角で血が噴き出すほど頭を殴られることだろう。
でも、クルマならそれができる。そして、手を挙げてくれる人がこうやって現れる。いやあいいもんですねえクルマって、書類さえきちんと回せば思い通りに事が運んで。と、アキバ萌え男くんと同種の満足感を覚えつつ、ビートは僕の元をしばし離れていったわけだ。
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