
自他ともに認める長距離ドライブ派の笹目二朗氏が、ヨーロッパの北の果て、ノルドカップを目指し、スカンジナビア半島を一周するドライブ紀行。
最終回は、ヘルシンキや世界遺産などを観光。のんびりスカンジナビアを楽しみつつ再びデンマークへ。計23日間にわたる総走行距離は11,369kmに及んだ。

文と写真|笹目二朗|J.Sasame
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5月15日(土曜日)晴れ

ヘルシンキには合計3泊する。この地を最初に訪れたのは'70年4月。当時はまだ港の海水が凍っており、カモメやカモなどの水鳥達が寒そうに氷上に群れて、首を羽の間に埋めていた光景を思い出す。海水が凍っているところを見たのも、その時が初めてだった。レニングラード(現サンクトペテルブルク)から列車でヘルシンキの駅に着き、共産圏の息苦しさから開放されて、冬空の鬱陶しさの中で青空を見た時は眩しかった。雪道で気軽にサイドブレーキを引いてUターンしていくオバサンを目撃したのもこの街で、フィンランド人はスゴイ! と思った。
その後、何度か訪れているが、他の北欧三国と比べても、フィンランドの人達の優しさは格別。我々と同じアジア民族である親しみもあって、個人的に好きな国のベストスリーに入る。よってヘルシンキはじっくり歩いて観光する。岩をくり抜いて造ったテンペリアウキオ教会やシベリウス公園は、そこにたたずみ時間を経過するだけで癒される気がする。
ヘルシンキ以外では、古い倉庫群が世界遺産になっているポルヴォー、同じく世界遺産の古い木造教会のあるぺタヤヴェシ、ハーメリンナのハメ城、ナーンタリのムーミン谷などを訪れた。

5月18日(火曜日)晴れ

スウェーデンに入り、そういえばまだ本格的なサーメの部落を見ていないということに気付く。そこで、アルヴィジョーのサーメ部落を見てから、ヨックモックのサーメ博物館を見学する。
サーメは北欧からロシアにかけての北部ラップランド地域に、太古の昔から住む独自の文化を持つ少数民族だ。日本のアイヌと似た生活様式もあるところが興味深い。寒い地域に暮らす知恵は、同じ発想を生むのかもしれない。どちらもアークティックサークル(北極圏を示す地点)と交差する地点にあり、また北極圏に入ったり出たり、今回の旅では都合4回このサークルとクロスしたことになる。

5月21日(金曜日)晴れ

ストックホルムは海が四方から繋がっていて、潮の干満によっては水位が異なり、船は水門を使って高度補正しながら行き来している。港の真ん中にはアフ・チャプマンという三本マストの帆船が係留されており、それがユースホステルになっていて、34年前に3泊した思い出がある。ストックホルムもヘルシンキに劣らず美しい街だが、今回は体調がすぐれず何を見ても面白くない。前日に食べた夕食で食当たりしたようで、下痢と腹痛に耐えての観光は最悪だった。中国の妙薬六神丸で何とか体調を回復して、海岸線を南下する。

5月22日(土曜日)晴れ

全長7kmにもおよぶ、海にかかる長い橋を渡る。エーランド島は南北140kmにおよぶ細長い島だが、その中間あたりでスウェーデン本土からの橋で結ばれている。生活道路ゆえ無料。浜名湖バイパスを引き延ばしたような形をしており、中央部が盛り上がっていて、大きな船はその下を航行する。
ここの風車小屋は独特の形をしており、観光案内書などによく紹介されている。しかし、見たかったのは世界遺産のイケトルプ遺跡。写真をほとんど見かけないから、昔の大農場? と文字で書いてあっても実態が分からなかった。探しあてた時はすでに夕方で、気温はプラスだが風がとても冷たい。
周囲に何も見当たらない広々とした牧場の先に、石積みの城壁のようなものが見えてくる。クルマはその中へは入れず、手前の駐車場に停めて歩く。もう開館時間は過ぎているが人は誰もいない。黒い角のあるヤギのような家畜が放牧されている中を通り城門の所まで行くと、特別な閉鎖物はなく中に入って見ることができた。
ペタヤヴェシの木造教会もそうだったが、日本でいえば重要文化財や国宝に値するものであっても、北欧は完全無防備だ。それだけ一般のモラルが高いということか。角の尖った砕石を積み上げたような壁を見ると、風雨に晒されて角が丸くなるわけでもなく、カビやコケの類がなければ、まるで新造家屋のようにも見える。エーランド島には、ここだけにしか生息しない特種な鳥や植物が多いらしく、その石壁の中に見たこともない植物を発見した。

5月23日(日曜日)晴れ

カルマーに泊まった翌日、マルメとコペンハーゲンを結ぶ海峡の橋(半分はトンネル)を渡る。これでスカンジナビア半島を一周し、デンマークに戻ったことになる。ヨーロッパ大陸に戻るには、さらに同じくらい長い海に掛かる橋を渡りオーデンセに至る。それぞれ20分程度で駆け抜けられる距離ではあるが、この海峡を渡るということが、気持ちの上ではとても大きな意味を持つ。その昔はフェリーで渡ったが、待ち時間や船の乗り降りの手間や手続きを考えると便利になったものだ。時間で決まる距離感とは別に、やはり海を渡って遠い国に行くという感覚は、両方を経験している身には特別の感慨がある。
今回の旅を、ドイツ国境のフレンスブルグを起点に集計すると、23日間で1万1369kmになる。燃費はGS起点なので多少距離は異なるが、平均で15.4km/リッター。ガソリンの単価は日本より高く、レギュラーで170円前後。トータルでは12万7568円掛かった。パリからパリまでの集計では、40日間で約2万kmを走破。日本なら2年分乗った計算になる。
メガーヌは、欧州ではベストセラーゆえによく見かけたものの、3ドアクーペは意外と少なく、北欧圏では数えるほどでしかなかった。RSが発売になり、日本でもようやく3ドアの姿を時々見かけるようになったが、見る度にミッドナイトサンのノルドカップを思い出してしまう。メガーヌは本当にいいクルマだった。 |
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林の中の1本道を走っていると、突然こんな集団に出くわした。カカシでもなさそうだし、いったい何の目的で並べてあるのか詳細不明。着ているのは古着のようでもあるし……。


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| ハメーンリンナのハメ城。堀も浅いし土手も子供が簡単に駆け登れる。この城は1260年代に要塞として建造された。城内も見学したが、有料で5ユーロ。近くに刑務所博物館もある。 |
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アルヴィジョーのサーメ野外博物館。あちこちに点在していたものをここに集めたような感じだ。ログハウスともまた違った味で、木でできた家の温かみがある。 |
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| トナカイが道路を悠々と闊歩する。集団行動しており、動きは遅いが遠くから見えるので、クルマが近づく頃には渡り終える。大きさは牛馬より少し小さい。可愛い目をしている。 |
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ヨックモックのサーメ博物館を見た帰り、R97号線上のアークティックサークルでまた北極圏外へと出る。こちらには板壁と白いポールと丸太のベンチがあった。 |
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| ストックホルムの王宮では正午に衛兵の交代式が行なわれる。1時間に及ぶ観光行事だ。兵隊さんの中には女性も含まれており、ヘルメットの後ろからお下げ髪が覗く。道路には馬糞が散乱。 |
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イケトルプ遺跡。きちっと切り揃えたかのように整然と積み上げられているが、石は砕石のままのような鋭いエッジをもつ。家屋の構造材や内装などは木材が使われている。 |
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| エーランド島の環状列石。南北140kmの細長い島には、風車と遺跡がたくさん点在する。気温はプラスでも風が強くとブルブル震えるくらい寒いが、小さな花が咲き乱れている。 |
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イケトルプ遺跡の中の井戸。大農家の集落といった感じの大きな規模で、周囲に城壁のような石積みの囲いがある。家畜は夜だけ中に入れて、昼間は場外に放牧といったところか。 |
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| エーランド島には、ここにだけしか生息しない珍しい鳥や植物がたくさんあるらしい。バードウォッチングのメッカでもあるが、これもイケトルプ遺跡の中で見た珍しい植物。 |
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マルメとコペンハーゲンを結ぶ橋。途中から半分がトンネルになっていて東京湾アクアラインのような感じ。こちらは直線ではなく中間はアーチ状の曲線で結ばれている。 |
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海峡を渡る橋は外から見ると雄大で長い。中間で曲がっている部分が高くなっていて大型船を通す。まだヨーロッパ大陸と陸続きではないが、ここを渡るとやはりホッとする。 |
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