FERRARI フェラーリ612スカリエッティ
612 SCAGLIETTI

別の意味で乗り手を選ぶ
究極のフェラーリ


フェラーリの草創期、多くの魅力的なボディデザインを生み出したコーチビルダー、セルジオ・スカリエッティ。
その名前をフィーチャーした最新のV12フェラーリがやってきた。
F1システムにより、誰もがフェラーリをドライブできるようになったいま、ある意味で、もっとも乗り手を選ぶのはこのクルマかもしれない。

リポート|熊倉重春|S.Kumakura フォト|郡大二郎|D.Korii

456の跡を継ぐ2+2のV12モデル

 最新の612スカリエッティと過ごした2日間、もちろんドライビングも満喫したが、それよりこのクルマと共にある状況そのものを反芻せずにはいられなかった。スポーツカーやGTというより、ライフスタイル・カーとしての濃密さこそ魅力のカギと見よう。
  フェラーリにもいろいろな流れがある中で、4座あるいは2+2というのは、ある意味で主流かもしれない。スーパーカーの使われ方として、ヨーロッパでは最もあり得る姿だからだ。
  たとえばF1モナコGPの予選を終えた土曜の晩、カジノ広場やオテル・ド・パリの周辺には無数のスーパーカーが轡を並べる。そこではフェラーリでも8気筒では肩身が狭く、12気筒でもミッドエンジンや2シーターでは、やはり場違いな感じがある。
  やはりここはもったいないほどの過剰感を漂わせる4座ないし2+2であるべきで、低く滑らかな排気音とともに乗りつけ、恭しく出迎えるヴァレット・パーキングの係にたんまりチップをはずみ、着飾った美女をエスコートしつつ悠然と姿を消すのがスタイルだ。
  そんなコスチュームとしての存在感で言えば、新しい612スカリエッティはひときわ異彩を放っていたに違いない。歴代のフェラーリで最大のボリューム感を誇るだけでなく、ピニンファリーナによる造形も、粗い格子のグリルなど見紛うことなきアイデンティティを守りながら、最新の世界の流れを取り入れている点で新しいからだ。もっとも、意地悪く言えば、この前面デザインは、フェンダーの峰からザクッと切り下げたVラインに縁取られた逆台形のグリル、高く位置する小径のライト、強く張り出したフェンダーなど、スマート・ロードスターにふくらし粉を混ぜたようにも見えるが。
  ここでクルマそのものを簡単に復習しておくと、ホイールベース約3m、全長4.9m、全幅2m近くと、ビッグセダン並みのボディが最大の特徴。そのノーズに積まれるエンジンは、車名こそ612(6リッターの12気筒)だが、実際には575Mマラネロと同じ5748ccの65度V12。大柄なだけに100kg以上も増えた重量に応じて圧縮比をわずかに高めるなど強化された結果、最高出力も515psから540psに引き上げられている。
  もっとも、変速機をデフと一体化してリアに置いたトランスアクスル構成のため、エンジンも目一杯スカットルにめり込むような、いわゆるフロントミッドシップ配置なので、前後の重量配分は限りなく50対50に近くなっている。その変速機はカンビオF1Aと呼ばれ、オートマチックモードが多用されることを想定したシーケンシャル6速MTだ。
  サスペンションはフェラーリの文法通りの前後ダブルウィッシュボーン、それに組み合わせられるタイヤは前245/45ZR18、後285/40ZR19と、スーパーカーにしては過激なサイズではない。ある程度は乗用車としての用途を考えた設定といえる。
 
  エンジンは従来通りの5.7リッターV12だが、575Mに比べて圧縮比を0.2アップ。結果として最高出力は25ps向上し、スペックは540ps/7250rpm、60.0kg-m/5250rpm。これに6速MTとF1システムが組み合わされる。
  アルミがふんだんに使われたインテリア。シリーズのトップモデルらしく、その高級感は随一。各操作系もユニバーサルなものとなり、別のクルマから乗り換えても違和感がない。
  スピードメーターは340km/hスケールで、左側には液晶モニターを配置する。ここに燃料系/油圧計などが適宜表示される仕組み。
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