自他ともに認める長距離ドライブ派の笹目二朗氏が、ヨーロッパの北の果て、ノルドカップを目指し、スカンジナビア半島を一周するドライブ紀行。
第3回目は、ノルドカップでミッドナイトサン(真夜中の太陽)を体験する、という一応の目的を達成し、のんびりスカンジナビアを楽しむモードに――。

文と写真|笹目二朗|J.Sasame

5月10日(月曜日)曇り

(前回の続き)
 やっとの思いで到着したノルドカップだったが、そこに宿泊施設はない。結局、麓のホニングスヴォーグまで約30qの雪山を戻って、リカ・ホテルに泊まる。宿代は960Nクローネ。空腹を満たすべくピザを食べに出て、部屋に戻ると1時頃。やっと長い1日が終わる。本日の走行距離797q。
5月11日(火曜日)曇りのち晴れ
 朝から小雪が舞う。GSに寄るころにはアラレに変わり、給油後は再びノルドカップへ向かう。間もなく天気は回復して青空も見える。昨夜と状況は一変して周囲は白銀の世界。雲間にぼんやりとたたずむ太陽は真昼でほぼ真上。だから、海との間の90度くらいの範囲で太陽は沈まずにグルグル回って夜がない。これが白夜か、とそのメカニズムを実感する。
 ノルドカップの断崖に立ち、あたらめて極点の方角を見てみると、海と雲しか見えない。が、さらにその先にある陸地はここと反対方向に回っているのだと思うと不思議な気がする。とにかく、ここはクルマで来ることができる地球の最北端なのだ。宗谷岬からロシアを見るのとはちょっと違う。そう思うと、ついにやって来たという感慨もひとしおだ。
 ノルドカップ・ハッレンにて北緯71度10分21秒の最北端到達証明書をもらう。証明書そのものは売店で35Nクローネで販売されており、それを隣の郵便局に持っていってハンコをもらうのだが、ついでに郵便局長のサインももらった。証明書はたしか10カ国語くらいのバージョンが用意されており、もちろん日本語もあるが、あえてノルウェー語を選んだ。地下の大ホールでノルドカップのスーパービデオを見たり、大量の絵はがきを書いたりして4時間半ほど滞在。
 帰路はまったくの晴天で、遠くまで綺麗によく見える。メガーヌをモデルにあちこちで写真を撮る。3ドアクーペにして良かった。
 カラジョークでノルウェイにおさらばして、フィンランドに南下、国境近くの宿に泊まる。本日の走行距離334q。

5月12日(水曜日)晴れ

 フィンランドはサマータイムではなく1時間進んでいる。昼近くに出発して一本道の92号線を東へ向かい、キルキネスから南下する本道E75へ突き当たって右折。トナカイが散歩していたりと、のどかな森の中を走る。道はアップダウンが続き、ラリー車は本当にジャンプすることが実感できる。
 よくよく考えてみると、こんなに焦って南下することもなく、食料を買い込んでもう一夜、ノルドカップで夜明かししても良かったかなぁと反省。でも、またもう一度行ってみたい。次は秋がいいな。夕方、ロバニエミに到着。サンタクロース村はもう時間が遅くて閉まっていた。近くに泊まり、翌日あらためて訪れることにする。本日の走行距離469q。

5月13日(木曜日)晴れ

 サンタクロース村にはいろいろなお店があり、一軒ずつ丹念に見て回る。ここにはサンタクロースにまつわる様々なものがある。サンタさんにプレゼントする世界で一番長いマフラーのコーナーでは、家内も数センチ編んで繋げる。郵便局にはポストが2つあって、すぐに配達するものと、クリスマスに配達されるものとに分けて投函する。世界各地から送られてくるクリスマスカードも、国別に保管されている。日本からのものは3番目くらいに多かった。
 で、ゆっくりしてしまい、出るのは昼近くなってしまう。それから81号線でクーサモに向かい、E63でロシア国境寄りに南下。淡々と森や湖の間を走っていると、いつしか夕方になり、また宿の心配をしなければならなくなる。ベッドマークを見つけたとしても、必ず泊まれるとは限らない。季節限定であったり閉鎖されていたりで、元のルートに戻るまで30q程度のロスは覚悟しなければならない。
 バルティモという町を通りかかった時、ベッドマークを見つけて山の中へと入る。すでに20時を過ぎており、空腹でもあった。そのログハウスにはクルマが5〜6台とまっていて、ここならなんとかしてくれそうと思う。先客達はもう食事も終盤で盛り上がっている。主はニコニコと笑顔で迎えてくれた。先客は何とフィンランド軍の兵隊さん達で、軍服のまま。我々の食事は予定されていなかったものの、ありあわせ以上のものを作ってもらう。キートスと呼ばれるキノコのスープは絶品。地下のサウナは兵隊さん達より優先させてくれる。本日の走行距離581q。

5月14日(金曜日)晴れ

 朝食時に話を聞くと、何とこの宿の御夫婦は、フィンランド・エアーの機内誌など、幾多の雑誌で日本にも紹介されている著名な人だった。ファームステイなどでフィンランドの良さを味わってもらおうという親日派である。それにしても2食付きで64ユーロは良心的。奥さんの料理の味付けは、我々にもちょうど良い塩加減で絶妙。
 ロシア国境に沿って南下。もう3日も森と湖を見ていると、少々飽きてくる。イマトラでは国境ゆえのロシア製品を売る青空市でもあるかなぁと期待したが、不案内でよく分からず、そのまま国境近くを走り海の方へ。宿探しは難航し、夜遅くヘルシンキに着いてしまった。ヘルシンキは都会だ。遅くまで人で賑わっているし食事もできる。本日の走行距離736q。
 
つノルドカップの象徴的な地球儀のモニュメント。海の下には遊覧船が浮かんでいる。この岬の先には陸地がなく、その先の陸地は反対方向に回っている、と思うと不思議な感じ。



ノルドカップを見据える展望台は一面の銀世界。しかし、積雪量はさほどでもない。クルマの中は暖かいが、外気温度計はマイナス5度を表示している。     ノルドカップを望む。昨夜の夜景色と昼の景色とはまったく雰囲気が違う。やはり昼間はもっと明るく、陽が当たっていれば暖かい。雲は低く、天が近いと感じる。
ノルドカップより実は少し北にあるクニヴシェロッデン岬への道は、雪で閉ざされたまま。防寒装備もないので踏み込まず。道の境も分からず、この先へは行くのはちょっと無理。     ノルドカップ・ハッレンの駐車場の奥では、雪の間から花が顔を出していた。よく見るとお花畑状態だ。高山植物のような小さな花、キラキラ光る綺麗な小石も落ちている。
停めておいた間にできたツララ。4時間半滞在した間には、ミゾレもアラレも降ってウインドーは凍結してしまう。風が強いので、吹き飛ばされても遠くへ行かないようにハンドルを切っておく。     日も暮れて寂しくなってきたが宿はナシ。太陽は白樺の林の裏に消えても、まだまだボーッといつまでも明るい。クルマはほとんど通らない。
ホニングスヴォーグの港。最果ての町という感じのわりに、人は思ったよりたくさん住んでいるようだ。フィンランドの船は丸みがあって可愛い形をしている。     イナリ湖畔で食べたランチ。いうなればトナカイ・ハンバーグ。見た目どおりに美味しいが、塩味はやや強め。ジャガイモは世界共通の味がする。
ここが北緯66度32分35秒のライン、有名なサンタクロース村。初日は着いた時間が遅く閉まっていたので、翌日再び訪れる。いろいろな店があり、あっという間に時間が経つ。     天に消え滝のように下るフィンランドの道。ノルウェイのアップダウンともまた違って、鳥や小動物のいる森と湖の中を抜ける景色はなかなかロマンチックだ。
  バルチモで泊めてもらった民宿の主。アニタ/ヘイッキ・オヴァスカイネン夫妻。フィンランド・エアーの機内誌でも紹介されている有名人。
  これが北緯71度10分21秒の最北端到達証明書。表記は漢字で書かれた日本語バージョンも用意されるが、やはりご当地のノルウェイ語を選ぶ。ついでに郵便局長のサインをもらった。
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