「いちばんポルシェらしいカイエンはどれ?」と聞かれたとき、もしあなたが3グレードすべてに試乗したなら迷わず「ターボ」と答えるだろう。
でも「いちばんスポーツカーらしいカイエンは?」という問いには窮するはずだ。
なぜならターボとは異なるスポーティさが、このV6モデルには溢れているからだ。

リポート|萩原秀輝|H.Hagiwara フォト|郡大二郎|D.Kori

 ポルシェ・カイエンとVWトゥアレグの成り立ちについて、しばしば話題になる。パワートレインやプラットフォームに共通項が見出せることから、主従の関係から発展して「どちらが買い得?」といった評価までやかましいほどだ。
 それでも、カイエンSやカイエン・ターボは、数値上の性能からいってもポルシェらしい走りが期待できそうだ。だが、カイエンはVW製のV型6気筒エンジンを搭載。なおかつ、それは狭角バンクを持つモノブロックという、きわめてVW色の強いエンジンなのだ。
 しかも、車重は2335kgにも達する。いくらポルシェがエンジンに手を加え、最高出力はトゥアレグV6の241psから250psに向上しているとはいえ、パワー・ウエイト・レシオは2リッタークラスの日本製ミニバン並みとなる9kg/ps台だ。それではポルシェの名折れ、トゥアレグV6ならば価格的な買い得感もあるだけに、その選択の方が賢明とも考えられる。
 ところが、こうした数値上の比較が意味を成さないことが少なからずある。カイエンの場合は、その典型だ。アクセルを踏み込むと、最高出力が300psオーバーに達しているのではないかと思えるほど、加速に勢いがあるのだ。レブリミットまで引っ張ると、1速で40km/h、2速で80km/hに達することから分かるようにギア比が低いためもあるが、それにしても力強さに不足を感じない。
 しかも、4000rpmあたりからほかのV型6気筒エンジンでは聞いたこともない「コォーン」という快音を響かせる。それは、誇張なしにフェラーリ・サウンドに通じる魅力がある。そして、ギア比が低いだけに、その快音を日常的な場面でも楽しめるのだ。
 ギア比が低いとATの変速頻度が多くなり、いわゆるビジー感が問題になりそうだ。だが、周囲の流れに合わせるような加速なら2速からスタートするので、その心配はない。もちろん、それでもモタつきは感じない。そこどころか、カイエンにはこのエンジンが合っているとさえ思うのだ。
 なぜかといえば、カイエンSやカイエン・ターボは、エンジンの性能が際立ちすぎていると感じる場面が少なくないからだ。とくにカイエン・ターボは、山岳路でポルシェらしい走りを試すとPTM(ポルシェ・トラクション・マネージメント)が頻繁に介入する。コーナーの立ち上がりでアクセルを踏み込んでも、機能に含まれるASR(アンチ・スリップ・コントロール)が働いて力強さが立ち上がらないといった事態が起こる。ところが、カイエンは例の快音を楽しみながらアクセルを積極的に踏み込んでも、極端に滑りやすい路面ではな限り、PTMの介入を意識することがない。
 実際には、前後の駆動力配分を最適化する機能は常時働いているはずだが、その制御は自然なので気にならない。あるいは、ステアリング操作に対する応答性が予想に反して鋭いだけに、操舵速度や舵角によってフロントへの駆動配分を瞬時に減らしているのかもしれない。それだけに、カイエンが500kgシェイプアップされたようなハンドリングが得られる。
 さらに、カイエンを強引に振り回せば、さすがにPSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメント)が介入してスタビリティを確保する。それはそれとして最近のクルマでは当然の機能だが、そもそも2335kgの巨体を振り回そうと思えること自体がカイエンの本質といえそうだ。
 ちなみに、カイエンはトゥアレグV6よりも100万円以上高価だ。ただし、その差を性能や装備で比較するのは意味がないことを思い知らせてくれた。インテリアの造り込みにしても、カイエンは見紛うことなきポルシェなのだ。
 

  17インチホイールとリアのエンブレムがカイエンSとの識別点(カイエンSは18インチホイール)。テールエンドはV6でも迫力の左右2本出しとなる。
  VWの3.2リッターV6をベースに、ポルシェがヘッド回りを新設計。スペックは250ps/6000rpm、31.6kg-m/2500〜5500rpm。ちなみにトゥアレグV6は241ps/31.6kg-m。
  インパネの眺めもほとんどカイエンSと変わらない。ただしエアコンはマニュアルになる(試乗車はオプションでオートを装着)。6MTも選べるのがスポーツ派には嬉しい。
レザーシートが標準設定。ほかにも装備はきわめて充実しており、この点でベーシックグレードを意識するところはない。サイズがサイズだけに、室内の広さも文句なし。

ラゲッジルームは通常540リッター、リアシートバックを折り畳むと最大1770リッターに拡大する。ガラスハッチは便利だが、開口部が高いため女性にはちょっと使いづらいかもしれない。

  フェラーリのような澄んだ快音を響かせつつ、V6エンジンは鋭く吹け上がる。カイエンSに比べて車重は75kg軽く、ノーズの軽さから来る軽快感も見逃せないポイントだ。
Specification
PORSCHE CAYENNE
■全長/全幅/全高(mm)
4800/1950/1700
■ホイールベース(mm)
2855
■トレッド(前/後)(mm)
1655/1670
■車両重量(kg)
2335
■エンジン種類
V6DOHC24V
■排気量(cc)
3189
■最高出力(ps(kW)/rpm)
250(184)/6000
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
31.6(310)/2500〜5500
■トランスミッション
6AT
■サスペンション(F:R)
Wウイッシュボーン/コイル:
マルチリンク/コイル
■ブレーキ(F:R)
Vディスク/Vディスク
■タイヤ(ホイール)
235/65R17(7.5J
■東京標準現金価格
¥6,919,500
問い合わせ先
※上記スペックは本誌発売当時の値です。
 
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