ヨーロッパ自動車市場最大、そして最激戦区であるCセグメントに、オペルが放ったニューモデル、第3代目アストラ。
アストラというクルマは、常にゴルフの牙城に迫る急先鋒の役割を果たしてきたが、では、新型は? ゴルフと比較しつつのインプレッションをお届けしよう――

リポート|小倉正樹|M.Ogura(本誌) フォト|日本ゼネラルモーターズ

 昨年のフランクフルト・ショーで発表され、今年3月ヨーロッパで発売開始となったアストラ。欧州新車市場の低迷がいわれるなかで、このオペルの新しいCセグメントカーは好調な滑り出しを見せているという。今回、本国ドイツで試乗してみて、その人気の理由の一端を知ることができたように思う。乗ればやはりオペルで、納得させられるものがあったのだ。
 まず、そのエクステリアデザイン。最大のライバル、ゴルフに比較すると、全長がやや長く、全幅がほとんど同じ、そして全高が明らかに低い。いかにも空力の良さそうなフォルムに、ダイナミックなライン、造形を与えて、若々しくスポーティな印象を強く打ち出している。昨年のフランクフルト・ショーで行なわれたウェブサイト上のアンケート調査でも、高い支持率を得たそうだが、なるほどインターネットを利用する若者には分かりやすいエモーショナルなデザインとなっている。
 インテリアのデザインそのものには特に新しさを感じないが、目を引くのは、ダッシュボードの左右端が少し張り出して、いわばドアのトリムにはまり込むようになっている点だ。ダッシュボードとドアトリムのそのチリ合わせは工作精度の高さを表すようなものだから、ここの隙間を少なくとも視覚的には意識させないようにする工夫だろう。もちろん、その全体の品質感はゴルフほどではないにせよ、前のモデルに比較して大きく向上している。
 室内空間はゴルフとほぼ互角というところだろうか。アストラは全高が低い分、長いホイールベースで前後長を獲得し、空間を稼ぐタイプ。ゴルフはその前後長が短い分、天井の高さで稼ぐ。フロントシートに座って体感する余裕は、どちらかといえば、背の高いゴルフに軍配が上がるが、それはまた使いもしない無駄な空間でもあるようで、このあたりは意見が分かれるところだろう。着座位置が自然と低くなるアストラのほうが、よりスポーティな感覚が得られることは確かだ。
 その走りは、当たり前だが、日常レベルではなんの痛痒も感じない。フロントがストラット、リアがトレーリングアームという、従来モデルから踏襲されるサスペンションは、操縦性、乗り心地の両面で熟成された感があって、不満を感じさせるものではない。対するゴルフは、リアにマルチリンクを奢ってランクアップを図っているが、それがアドバンテージを持つかどうかはなんともいえないところ。理論としてはその優位性を認めても、実用面で明瞭な差があるのかどうか、疑問だからだ。
 こうしてみると、アストラはヨーロッパ市場でかなり成功する要素を持っていることが分かる。それは、本国ドイツのユーザーが先に登場した新型ゴルフに飛びつくことなく、アストラの登場を待ったという実に冷静な動きからも予想できる。ご存知だと思うが、鳴り物入りで登場したゴルフは、IVに比較して大きな進歩がなかった感があること、また比較的高めの価格設定もあって、予想外の不振を囲っている。ヨーロッパではオプションとなるエアコンを標準装着するなどして商品性のアップに努めているが、まだ軌道の乗ったとはいえない状態が続く。彼の地では、合理性が重んじられるが、だとすれば、コストパフォーマンスの高いアストラには大いなる可能性があると思える。
 新型アストラに試乗してみて改めて感じたのは、オペルというメーカーの堅実さであり、そのクルマの素直さだ。日本市場では、販売ネットワークの弱さ、まだそれほどブランドが確立されていないというネックがあるものの、それでも、アストラは上陸を待つ価値はあるオペルだといっておきたい。

 
  今回の試乗会では用意されてなかったが、やはり気になるのは2リッターターボだろう。それも2種類用意されていて、最強版は最高出力200psで、最高速は232km/hに達するという。
  ごくごくオーソドックスな構成のダッシュ。いいかえれば、使い勝手に不安がないということ。その品質感は、ゴルフほどではないが、従来モデルからは確かな進歩を見せる。
  従来モデルに比較すると、明らかに広くなったと感じさせる室内空間。ゴルフほどではないが、実は車高は従来モデルより35mm高くなっていて、上下方向にも余裕がある。
  オペルとしては大胆なエモーショナルデザインを採用。ライバル達が全高を上げ、ミニバン的に室内空間を稼ぐなかで、ひとり全高を下げ(相対的にだが)、ダイナミックさとスポーティさを強調する。チャレンジングだ。
Specification
Opel Astra 2.0 Turbo
■全長/全幅/全高(mm)
4250×1795×1640
■ホイールベース(mm)
2615
■車両重量(kg)
1278
■エンジン種類
直4DOHC16V
■排気量(cc)
1796
■最高出力(ps(kW)/rpm)
125(92)/5600
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
17.4(170)/3800
■トランスミッション
5AT
■サスペンション(F:R)
ストラット:トーションビーム
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:Vディスク
■タイヤ(ホイール)
205/55R16
問い合わせ先
※上記スペックは本誌発売当時の値です。



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