現行A3が3ドア専用ボディでデビューした時点で、その登場が噂されていた5ドアモデル、A3スポーツバックの国際試乗会が、南仏ニースを基点に開催された。
にしても聞き慣れぬのは、そのスポーツバックというネーミング。
そこにはいったい、どんな意味が込められているというのだろうか?

リポート|吉田 聡|S.Yoshida(本誌) フォト|アウディジャパン

 ハッチバックならぬスポーツバックというネーミングが与えられた、今度のA3の5ドアバージョン。その成り立ちを簡単にいえば、3ドアボディの全長を延ばしてラゲッジルームを拡大したステーションワゴン風といったもの。
 具体的にいうと、その延長分は83mmで、そのうち63mmがリアオーバーハングに割り当てられた結果、ラゲッジルーム容量は3ドアのそれが通常で350リッター、最大で1100リッターであるのに対し、スポーツバックは370リッターに1120リッターと、20リッターの増加をみている。デザイン的にも6ライトのウインドーグラフィックが与えられるなど、独立したラゲッジルームを持つことを主張してはいるが、アウディはこのモデルをあえてアバント=ステーションワゴンとは呼ばずにスポーツバックとしている。
 今回、ひとしきり南仏コートダジュールの裏山を駆け回ってみた結論でいうと、確かにこのクルマはA3以外の何物でもないものの、プラスアルファの付加価値が与えられた、新しいプレミアムコンパクトと捉えるのが正解だ。アウディいわく、A3は当初から3ドアと5ドアは全く別のコンセプトで開発が進められたそうで、単にドアの数が異なるだけのバリエーション展開は考えもしていなかったという。そこで、3ドアはよりパーソナルユースを主眼に、そして5ドアはユーティリティを突き詰めた上でスポーツバックというコンセプトが導き出された。
 ある意味で、自動車マーケットのニッチ化、クロスオーバー化の流れを受けたモデルとも解釈できるが、クルマのカテゴリー分けなど、本来はまったく意味のない話。実際には、ユーザーが使って納得できればそれでいいのだ。そして、様々なニーズに応えるだけの懐の深さが、このスポーツバックには確かに備わっていた。


 それでは、あらためてこのA3スポーツバックの概要をお伝えしよう。まず、ボディサイズは全長4286×全幅1765×全高1423mmで、ホイールベースは2578mm。前述のとおり3ドアに対して全長は83mm延びており、これは主にリアオーバーハングの延長分と、フロントエンドのデザイン変更によるもの。もちろん、ホイールベースは同寸である。
 エクステリアでのトピックは、フロントエンドにアウディの新しいアイデンティティであるシングルフレームグリルが採用されたことだろう。バンパー上下を跨ぐ格好で、格子状のラジエターグリルを逆台形型のクロームの縁で囲んだこれは、たったそれだけでA3の表情を激変、一転してダイナミックな印象を見る者に与えている。一方のリアエンドは、ハイマウントのコンビネーションランプが3ドアのそれに対して薄く横長になったことで軽快感をアップ、視覚的には3ドアよりむしろスポーティな度合いを強めている。
 また、後方へ向けてスッと伸びたロングルーフを見れば分かるとおり、室内は後席の頭上回りを中心に快適性を向上。ドアが2枚追加されたことによる乗降性の良さに加え、足元も若干サイズアップされたようで、フル乗車でもストレスフリーの移動を実現している。
 エンジンバリエーションは、ほぼ3ドアのそれに準じたものだが、現時点で唯一スポーツバック専用となるのが2リッター4気筒の直噴FSIターボだ。TFSIとネーミングされたこれは、今秋発表のフォルクスワーゲン・ゴルフGTIにも搭載される新開発ユニットで、最高出力200ps/5100〜6000rpm、最大トルク28.5kg-m/1800〜5000rpmを発生。この10月中旬にも導入予定の日本仕様にも、ツインクラッチシステムによるシーケンシャル式6速セミAT、DSG(ダイレクト・シフト・ギアボックス)との組み合わせで搭載される。
 この他、日本仕様のパワートレインは3.2リッターV6FSI+DSG、2リッター4気筒FSI+ティプトロニック6ATという布陣で、駆動方式は3.2V6のみフルタイム4WDのクワトロ、他はFFというコンビネーションになる。
 その乗り味はというと、端的にいって3ドアのそれとほぼ同じ。つまり、すべてがスムーズかつナチュラルで、どこをどう操ってもおよそフリクションの類を伝えてくることが一切ない。サスペンションも同様にやや硬めの設定ながら、決して不快なレベルではなく、むしろ姿勢変化の少ない快適な乗り心地をもたらしてくれる。もちろん、あらゆる走行モードで接地感を失わないしたたかさも健在で、その限界の高さは並みのスポーツカーをも凌ぐレベルにある。
 注目の2リッターFSIターボは、スポーツユニットとしてよりも、実用ユニットとして、ほぼ完璧な仕事っぷりに感心させられた。もちろん、トップエンドへ向けてスムーズに吹け上がっていくが、最大トルクの発生回転数を見ればお分かりのとおり、ほぼ全域で力が漲っているようなものだから、今回のように6MTとの組み合わせであれば、シフトチェンジは一段飛ばしでこと足りる。そう、とにかく扱いやすいのだ。直噴ユニット特有の、ガツンと踏んだ瞬間のトルク感が希薄なあたりも解消されているので、立ち上がりから気持ちのいい加速フィールが得られる。
 一方、パワーで50ps増しとなる3.2リッターV6の場合は、こうして乗り比べてしまうとある意味でオーバースペック。DSGを駆使してのリズミカルな走りは快感ですらあるが、鼻先の重さはやや気になるし、姿勢変化も若干大きめ。もちろん、そのあたりはクワトロが力業でネジ伏せてしまうから何事も起こらないが、クルマとの一体感でいえば2リッターFSIターボの方が気持ちいいといえるだろうか。
 というわけで、ユーティリティとスポーティをちょうどいい具合にブレンドし、アウディ風味が存分に効かされたA3スポーツバック。個性豊かな欧州Cセグメントの中にあって、ひと際ユニークな存在として注目されるのは必至だ。
 
日本仕様に用意されるエンジンで注目は、新開発となる2リッターFSIターボ。2ペダルのシーケンシャル式セミAT、DSGを介して200psと28.5kg-mを発生させる。この他、3ドアにも搭載の3.2リッターV6と2リッターFSIの全3タイプが用意。
  シャシー系は基本的に3ドアと共通で、リアサスペンションはFFが4リンク、クワトロがダブルウイッシュボーンとなる。同様に、操舵力、操舵速度、車速に応じてアシスト量を電子制御するエレクトロ・メカニカル・ステアリングも標準装備。
  走行感覚は3ドアのそれとほぼ変わりないもの。実際に比較したわけではないが、後輪荷重が増えたことで、高速走行時のスタビリティはさらにアップしているように……。
ルーフが後方に延ばされたことで、車内は特に後席の頭上スペースにゆとりがもたらされた。トリムラインはアトラクション、アンビション、アンビエンテの3タイプが用意。
  特樹脂加工の極致ともいえるほど緻密なインテリアは、基本的に3ドアと共通のもの。なお、ステアリングセンターにはフロントエンドのシングルフレームグリルが象られる。
  ラゲッジルームは通常で370リッター、ダブルフォールディングで後席を畳めば最大で1120リッターの容量が確保できる。ゴルフバッグなら2個を横置き可能という。
  リアエンドへ向けて絞り込まれた6ライトのウインドーグラフィックがスポーツバックのキャラクターを物語る。なお、クローム仕上げのルーフレールもオプションで用意。
Specification
2.0 FSI
2.0 TFSI
3.2 quattro
■全長/全幅/全高(mm)
4286/1765/1423
■ホイールベース(mm)
2578
■トレッド(前/後)(mm)
1531/1515
■車両重量(kg)
1345
1410
1565
■エンジン種類
−/直4DOHC16V
−/直4DOHC+ターボ
−/V6DOHC26V
■排気量(cc)
1984
3189
■最高出力(ps(kW)/rpm)
150(110)/6000
200(147)/5100-6000
250(184)/6300
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
20.4(200)/3500
28.5(280)/1800-5000
32.6(320)/2500-3000
■トランスミッション
6速
6速セミAT
■サスペンション(F)
ストラット/コイル
■サスペンション(R)
4リンク/コイル
Wウイッシュボーン/
コイル
■ブレーキ(F/R)
Vディスク/ディスク
■タイヤ(ホイール)
205/55R16(6.5J)
225/45R17(7.5J)
■東京標準現金価格
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※上記スペックは本誌発売当時の値です。
 
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