
クーペは特別という50年来のスタンスを、またもアルファは貫いた。だから外見には156の面影が少しもない。そのくせGTVやかつてのザガート系ほど理性を失わず、しっかり実用的であるところも注目ポイントだ。
それにしても、この造形力には脱帽せざるを得ない。部分ごとに見ればアンバランスなのに、実際にはそんな細部より全体が目に飛び込んで来て、姑息な批判など封殺してしまう。パッと見て惚れるかどうかに賭ける気概が、クルマそのものに漲っている。
それにこのデザインは、私たち東洋人にとっても都合がよろしい。一般にイタリアの洒落グルマには鼻ぺちゃのショーユ顔では太刀打ちできないが、これならぎりぎりセーフだろう。ぱっくり下まで開くテールゲートと容積の大きいラゲッジルームも、カジュアルなコスチュームとして点数が高い。青春時代をCR-Xと過ごした身としては、そこそこ年輪も重ねたいま、ふたたび颯爽と駆け抜ける相棒として、これを選ぶ理由はおおいにある。 |
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ドライバーの目からは、やはりV6エンジンが最大の魅力だろう。特に中速から吹け上がる過程での響きが感涙を呼ぶ。アルファが凄い(というよりモノの本質をわかっている)のは、3リッターから3.2リッターへの拡大に際し、安易なボアアップではなく、わざわざ高価なクランクまで新造してストロークを延ばしたところにある。これが古典的エンジンの良さを倍加したのは疑いもない。
その一方で、シャシーがエンジン性能をカバーしきれていないことも忘れてはならない点だ。普段は操作に素直に反応し、きびきびスポーティだが、いざ本気になって攻め込むと、ある瞬間ポーンと前輪の反応がすっぽ抜けることもある。つまり深みに欠ける。これがGTAの脚なら理想的なので、将来そういう仕様も追加されることを祈っておこう。
そこで結論。アルファGT(の3.2 V6)は、人間として成熟し重みも具え、いろいろクルマも経験し、達観も含みつつ熱いモビリティに未練も残す都会人に最適。そんな場合はお約束の真紅ではなく、渋めのボディカラーを選ぶと味わいも深まる。 |