カーライフのなにをもって幸せとするか?
永遠の命題を、奇才・渡辺敏史がユル〜く語りまくる新説自動車幸福論。
今月は、おふらんすの労働グルマにして
エスプリ全開のお洒落カー、ルノー・カングーを。

文|渡辺敏史|T.Watanabe 写真|宮門秀行|H.Miyakado

 バイクはカブでクルマは軽トラ。
 実は、これは福岡の田舎もんだった僕の話である。内訳は「人生で初めて運転を体験した乗り物」。もちろん(と威張れる話でもないが)無免許だった。オマワリさんにバレたらどうしよう。ビクビクしつつぎこちなく動かしたそれは、徒歩かチャリンコしか知らなかった青少年にとって、こないだ乗ったエンツォよりも全然刺激的な乗り物だったことを覚えている。
 たとえばメルセデスやポルシェに乗っているという読者の皆さんのクルマやバイクの原体験というのも、多かれ少なかれそういうものだったのではないだろうか。友達の父ちゃんが留守の間に乗ったライトバンとか、部活の先輩が持っていたスクーターとか、今やほとんど目を向けないようなそれが、その当時はすごく眩しかった。
 と、普通はそれを甘酸っぱい青春の想い出とするわけだが、僕の場合、今でもそのテのものに必要以上の執着を抱いてしまう。
 どんなに回しても壊れなさそうなガサツなエンジンやタフな足回り、なんなら住んでしまおうかと思うほどだだっ広い荷室や、雑巾でゴシゴシ拭けそうな素っ気ない内装。そういう、最低限の過不足ない程度の簡便なクルマを若者気分でブンブン走らせるのはやたらと気分がいい。タンクトップと短パンでわざわざ真夏の海に行って、ホットドッグやカレーを食って音楽ジャンジャン鳴らしながら帰ってくるみたいなしょうもないドライブがやりたくなるのは、こういうクルマに乗っている時だ。実際、引っ越しのためにプロボックスを借りている時は意味もなく湘南のR134を、マクドをかじりながら走ってみたりもした。
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