6月初旬、梅雨空の日本を抜け出して、サーブの生まれ故郷へと向かった。
デザインの方向性をはじめ、いままさに変革を遂げようとしているサーブをもっと知るために――
そんな同社のいまとこれからを求めて、スウェーデンの空気を胸いっぱいに吸ってきた。

リポート|川本裕介|Y.Kawamoto(本誌)
フォト|日本ゼネラルモーターズ
取材協力|日本ゼネラルモーターズ TEL:0120-06-4984
 
「5年後、そして10年後に、たとえば小さな子供が街中でサーブを見かけたときに、飛行機みたいだな? と思うようなデザインを採用するつもりはないんですか?」
 サーブのプロダクトデザインチーフを務めるサイモン氏に、僕がそんな質問を投げかけたのは、サーブ・マーケティング本部におけるプレゼンテーションでのこと。
 こう質問したのには、それなりの理由がある。サーブといえば、もとは航空機メーカーからスタートしたという成り立ちを持ち、現在でもブランドカルチャーを形成する要素のひとつとして、航空機メーカーとしてのアイデンティティが大切にされているという。しかし、最近のモデルを見て触って、そして説明を受けても、どこかしっくりこない部分があったからだ。
   サイモン氏は僕の質問に対し、こう答えてくれた。
「デザインの中に、そういった要素を盛り込んでいた時期もありましたが、今後は視覚的な要素よりも、むしろ独創性を追求して、サーブとしてのアイデンティティを強めていくつもりです」
 つまり、目に見えるデザインで表現するのではなく、独自のユニークな発想を大切に持ち続けるマインドこそが、現在サーブが考える「航空機メーカーとしてのアイデンティティ」なのだという。
 決してアイデンティティを見失なうことなく、常に変革を求めているように思えるサーブ。今回の旅では、そんなサーブのいまとこれからを探ってみた。

 サーブでは、向こう5年を目途に、世界的な販売台数を20万台プラスに引き上げることを目標とし、販売拠点の拡大をはじめ様々な取り組みを始めている。ひとつは、欧州市場での競争力強化に向けた、ディーゼルエンジン開発への取り組みだ。欧州のガソリン車のみの市場では、9-5エステートが市場の2割を占めているだけに、ディーゼルエンジン強化が欧州市場での競争力強化に繋がるというのは大いに頷けるところではある。現行ラインナップのみならず、今後世界的に展開されることになるであろうモデルの競争力強化のためにも、早急なディーゼルエンジン開発の必要性をピーター・オーガストソンは感じているようだ。
 そして、今後の躍進における重要なカギとなるのは、9-5の後継モデルだ。いま欧州で注目度の高いクロスオーバービークルを睨みつつ、開発を進めるのが今後のサーブの課題といえるだろう。事実、9-5と9-3スポーツセダンの類別化が曖昧になってきているのは社内でも認識されていて、きちんとした棲み分けをするためにも、今後9-5はよりエンリッチさせ、より大きなサイズにする方向で検討が進められているという。いまや、GMグループが抱える莫大な素材から最適なモノをチョイスして組み立てられるだけに、次の9-5がどのようなカタチで現れるのかが非常に楽しみなところでもある。
  Peter Augustsson:
vice president of GM Europe& CEO of Saab Automobile AB.
<サーブ躍進のカギを握る、欧州のディーゼル市場

「欧州市場全体の75%を占めるディーゼル市場で、競争力強化を図ることが大切。現状では、約半分のモデルにしかディーゼルエンジンを用意できていないが、9-3用に新開発した1.9リッターコモンディーゼルを筆頭に、フルレンジでのエンジン開発を目指す」そう述べたのはサーブ社会長兼GMヨーロッパの副社長を務めるピーター・オーガストソンだ。
 
Saab Main Gate @ Trollhattan & Marketing Department @ Gothenburg
<ヘッドクォーターで今後の展開を聞く>

トロールハッタンにあるサーブ本社および、ヨーテボリにあるデザイン/セールス/マーケティング本部にてサーブの現状と今後の展開を取材。昨年の総販売台数は13万台だが、今後の目標販売台数は20万台プラスだという。
  Dealer:Saab Ana Trollhattan.
<世界的なディーラー網拡充も重要なトピック>

世界的な販売網拡充にも力が入れられており、特にアジアのマーケットでは、オーストラリアと日本、そして中国市場が重要視されている。オーストラリアでは今年、'03年の販売台数2700台を上回る3000台以上を目指す。中国では'01年からディーラーネットワークの拡充が図られており、3年以内には年間で3000台を販売可能な体制を整えていくという。

 サーブ最大のマーケットとなる北米市場では先頃9-2xが発売開始、来春にはSUV市場へ9-7xが投入され、さらなる販売台数獲得を目指す。この2台は今のところ北米のみでの展開が予定されており、世界的には熟成された次世代モデルからになるとピーター・オーガストソンは語る。9-2xのライフサイクルは7〜8年というから、その頃には新型ディーゼルと合わせて展開されるのではないだろうか。
 日本へ導入される次なるモデルは、9-3のワゴン版となる9-3スポーツハッチで、来年には上陸する予定。日本国内では拡販プログラムが採用され、マーケティングへの投資額は倍増されているという。ヤナセをはじめスバルのディーラー網の協力を得て、年間3000台まで販売台数を引き上げるという。
 
<Japanese Market.>
9-3 sports hatch concept.
<日本での次なるカードは“9-3”のワゴンモデル>

日本で展開される次なるモデルは、来年に発売される予定の9-3のワゴンモデル、9-3スポーツハッチ。写真は昨年のフランクフルト・ショーで発表されたスタディモデルだ。
<U.S.Market.>
9-2x <スバルとサーブの結晶“9-2x”が北米で発売開始>
北米で発売されたばかりの、スバル・インプレッサがベースの9-2x。現在は北米のみの展開で、欧州市場での販売はディーゼルエンジンを搭載する次世代モデルから。
 
9-7x <混沌とする市場で独自の顧客を獲得できるか?>
北米ではサーブオーナーの4割が別途にSUVを所有し、オーナーの2割がSUVへと流れてしまったという。そんな状況を打破すべく生まれた9-7x。来春には市販予定。



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