昨年のIAA(フランクフルト・モーターショー)でワールドプレミアを果たした40シリーズの後継、S40/V50シリーズが早くも日本上陸を果たした。
ここでは、そのトップグレードとなるターボモデル、T-5のファーストインプレッションをお届けしよう。

リポート|島下泰久|Y.Shimashita フォト|郡 大二郎|D.Kori

 決して苦戦していたわけではなく、むしろ堅調な販売を続けていたにもかかわらず、V70あるいはS60と較べるとやや影の薄かったボルボS40/V40が、フルモデルチェンジを実施。新たにS40/V50として日本上陸を果たした。その地味な印象は、おそらく日本においてだけの話ではなかったのだろう。この新しいシリーズは、これまでより強く“ボルボらしさcを打ち出した意欲作である。
 それが端的に表れているのが、最新ボルボと共通のテイストでまとめられたスタイリングだ。特にS40など、ほとんど“ミニS60cといった趣きで、これならもう「ボルボらしくない」なんていわれることはないだろう。ただ、ここまで似ていると、いざS60が並んだ際、何となく引け目を感じそうな気がしてしまう。その点、V50は全体のプロポーションやリアゲートの傾斜の強さなど、V70とは違うものを指向した感が出ていて、しっかりキャラが立っている。
 いずれにせよ、そのフォルムがプレミアム感を漂わせる出来なのは間違いないし、最近のドイツ勢が、やたらとダイナミズムを強調したスタイリングに走るなかで、このクリーンな印象はかえって引き立つようにも思えて、個人的にはとても好ましく思えた。
 デザインへのこだわりは、インテリアにおいてはさらに顕著だ。一番の目玉は“フリーフローティング・センタースタック”と呼ばれる、裏側が空洞となったセンターコンソール。それ自体、機能的には特に意味などないが、そこに配されたスイッチ類も同じ北欧のバング&オルフセンのオーディオあたりを彷佛させるデザインとされているなど、見た目の雰囲気はなかなかいい。その分、従来の「手袋をしていても操作できる」といわれた扱いやすさに関しては、ハッキリ後退してしまったが……。それでも、これなら堂々、従来はちょっと無理があったスカンジナビアンテイストを謳っていいかな、と感じたのは確かだ。
 こんな風に、見てくれからしてアピールには事欠かないS40/V50だが、実は一番の驚きは、その走りっぷりからもたらされた。
 エンジンは、上位モデルと同じ直列5気筒を採用し、140psと170psを発する2タイプの2.4リッターNAと、220psを発生する2.5リッター低圧ターボの計3種類を用意。今回は、そのうち2.5リッターターボのT-5が試乗に供された。
 いかにもボルボらしく、抑揚には欠けるが2500rpmあたりからトップエンドまで、フラットなトルクを発生するその特性は、S60より小さなボディには十分すぎるほど余裕がある。反面、いかな低圧とはいえ、やはりターボらしく2000rpm近辺のトルク感には物足りなさも感じた。T-5の場合、100km/hがちょうどこのあたりの回転域。そこから加速する際、いちいちキックダウンするのはどうにも煩わしい。いっそ、少しペースを上げた方が快適なクルージングを楽しめる。
 それよりも嬉しくさせるのは、シャシーの進化ぶりだ。基本骨格はフォード・グループ全体で使われるもの。先に使ったマツダ・アクセラの、いかにもマツダらしいシャープな印象が頭にあったので、ボルボらしさが損なわれていないか心配したが、それは杞憂だった。
 まず印象的なのは、ステアリングフィール。V70/S60も、最新モデルでは随分とキレが良くなったが、こちらはさらに上を行く。といっても、それは鋭利というのではなく正確性が高いという意味だ。サスペンションも剛性感の高さを感じさせつつ、ボルボらしい鷹揚さを失っていない絶妙な味付け。特に高速域でのフラット感など、ちょっとしたものである。
 気になるのは、攻め込んだときのリアの動きがやや大きめなこと。旋回中にブレーキングした際など、リア荷重が抜けたときの接地感がちょっと心許ないのだ。実はアクセラにも似たようなところがあるから、これはプラットフォーム自体の性格なのかもしれない。
 乗り心地は、低速ではやや硬め。特にリアに軽い突き上げ感があるが、スポーティセダンと見れば、まぁ許せる範囲か。ちなみに昨年スペインで試乗した2.4は、安定感はさほど損なわぬまま、より優しいタッチを実現していた。
 以上はS40の印象だが、V50では同じT-5でも、また違った感触が得られた。まず乗り心地が明らかにマイルド。そしてちょっと飛ばしたときも、荒れた路面での追従性においてS40を凌ぐと感じた。比較すればボディ剛性は劣るのだろうが、それがかえって良い方向に作用しているのかもしれない。
 不満が皆無とはいわないが、ボルボ随一のしっかり感と独特の穏やかさをも両立したS40/V50のシャシー。これならドイツ車の硬質な乗り味に馴染んだ人でも容易にスイッチできるだろうし、従来のボルボファンも、その進化を歓迎できるに違いない。
 出来はいい。では価格はといえば、これも結構頑張っている。Dセグメントのセダンをライバルとするなら、5気筒2.4リッターで350万円を切る設定は買い得感があるし、220psのワゴンが400万円台中盤というのも、アウディA4アバント1.8Tクワトロあたりと較べると、駆動方式こそ異なるが、やはりリーズナブルだ。
 洗練されたハードウェアに、より強まったボルボらしさ、そして心憎い価格設定。そうそう、このサイズにしてS80と同等のレベルを実現したというさすがの衝突安全性という要素も忘れてはなるまい。これだけの魅力が揃ったS40/V50が、ボルボの新たなファンを増やす可能性は、きわめて高そうだというのが実感である。


  VOLVO
  S40 T-5 V50 T-5
■全長/全幅/全高(mm)
4470/1770/1450
4515/1770/1450
■ホイールベース(mm)
2640
■トレッド(前/後)(mm)
1535/1530
■車両重量(kg)
1460
1480
■エンジン種類
B5254/直5DOHC20V+ターボ
■排気量(cc)
2521
■最高出力(ps(kW)/rpm)
220(162)/5000
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
32.6(320)/1500〜4800
■トランスミッション
5AT
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル:マルチリンク/コイル
■ブレーキ(F:R)
ディスク:ディスク
■タイヤ(ホイール)
205/50R17(7J)
■東京標準現金価格
¥4,305,000
¥4,672,500
問い合わせ先
※上記スペックは本誌発売当時の値です。
 
  S60をギュッと凝縮したようなデザインのS40。コンパクトなだけに、走りのキビキビ感という点ではS60などよりもずっとスポーティな印象を受ける。グレード構成はセダン、エステートともに共通で、下から2.4、2.4i、T-5という3モデルがラインナップされる。
先代よりも全幅、全高、ホイールベースをプラスしたことで居住性は向上。また、衝突安全性に関しても、ボルボの最上級サルーンS80と同等レベルを実現しているという。
  S40のトランク容量は404リッター(VDA法)。先代の415リッターから見ればやや縮小されているものの、全長が45mm短くなっていることを考えれば、この数値は及第点だろう。
  セダンのスリーサイズは、全長4470×全幅1770×全高1450mm。これは先代のS40と比較して全幅で50mm、全高で30mmの拡大となり、全長は45mmコンパクト化されたことになる。また、ホイールベースは2640mmで同じく先代比では+80mmもの延長となる。
  北欧デザインの影響を受けたというインテリアのデザインはセダン、エステートともに共通。全体的にはクリーンなイメージでまとめられるものの、それを構成するラインや面は複雑に入り組んでいるのが面白い。
  「IDIS(インテリジェント・ドライバー・インフォメーション・システム)」は、レーンチェンジなど運転に集中する必要がある場面で緊急性のないウォーニング表示などを一時的に保留するという安全のための情報システム。S40、V50への搭載が世界初だ。
  インテリアのハイライトとなるのが、立体的にレイアウトされる「フリーフローティング・センタースタック」。こうしたエレメントだけでなく、インテリア全体を貫くテイスト自体も、ヤコブセンやアアルトといった北欧デザインにインスピレーションを得ているという。
ホイールは、グレードおよび車型ごとにすべて異なるモデルを装着。写真左がセダンT-5で「Stylla」、右がワゴンT-5で「Sculptor」というモデル。ちなみに、サイズは7J×17インチ(205/50R17)。
  S60とV70の関係に倣うように、エステートの車名はV40からV50へと変更。そのV50では先代V40に比べ、ボディのねじれ剛性が34%向上。同じくS40では68%もの向上を果たしているという。
  シート地はテキスタイル、本革、T-Tec/テキスタイルという3パターンから選べる。また、ファミリーパッケージ装着車では、リアシート左右に埋め込み式のインテグレーテッド・チャイルド・クッションが備わる。
  V50のラゲッジ容量は通常の状態で417リッター、6:4分割可倒式リアシートを畳むと1307リッター(ISO/DIN法)。先代V40の413〜1324リッターとほぼ同レベルだが、スクエアなデザイン&レイアウトにより、ラゲッジの使い勝手は大きく向上している。
  V50のスリーサイズは全長4515×全幅1770×全高1450mm。これは先代V40比で全幅+50mm、全高+20mm。全長は先代と同値。ホイールベースはセダンと同じ2640mmで、やはり先代比で+80mmとなっている。
 
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