プレミアムSUVでゼロヨン――
そんな時代錯誤な、と思うかもしれないが、
実はゼロヨンから見えてくる性能というものもある。
絶対的な速さだけでなく、目指した地点に注目したい。

 予想どおり、ゼロヨンの一番時計はカイエン・ターボが記録した。450psのツインターボに6速ティプトロニックの組み合わせだから、この結果は至極当然だろう。記録は14秒076と他を圧倒したが、それでもなおカイエン・ターボにとってこのタイムは余裕綽々のものなのだ。
 その理由は、パワーマネージメントが発進の瞬間に手加減を加えていることによる。ゼロヨンはストールスタートで行なうが、フットブレーキでクルマを静止させておいてスロットルを踏み、トルコンのストール回転数を保持してから発進するこの方法は、実はATに過大な負担を強いるのだ。MT車でいえば、高回転を維持した半クラッチを使うのと同じなのだから、想像に難くないはず。
 これはATを含むパワートレーン全体の耐久性に悪影響を及ぼすため、ストール発進ではエンジンマネージメントが力加減するよう働きかける、という筋書きだ。ブーストメーターも発進後ひと呼吸おいて振ってくるので、タービンの方も静止時にはプリランに近い状態で回っているのだと想像される。つまり今回のタイムは、何度でも連続して出せる「日常」性能である。もちろん、この信頼性は手加減だけで達成されているわけではない。潤滑・冷却システムなど構成要素の全てがハイパフォーマンスなポルシェ・スペックであるからこその贅沢な特権なのだ。
 なんだかブランド・イメージどおりの結果という気がしてならないが、X5が今回の2番時計。15秒137というのはまさにスポーツサルーンと肩を並べる記録だ。しかもNAなのだから、BMWの面目躍如というところか。
 新Xシリーズのウリである4人のちびっ子天使たち(Xドライブのキャンペーン・キャラクター)の活躍はゼロヨンにおいても目覚ましい。完全FR状態も可能なこのシステムは、極力後輪に駆動力を送るというアルゴリズムで制御される。後輪にギュッと駆動力が掛かる手応えとともに発進するが、微塵もホイールスピンは起こさない。さらにいかにも走行抵抗が小さいと思わせる尻上がりな加速感は、ステアリングに一切の駆動トルク反力を感じさせない(実際フロント駆動力ゼロ状態にもなる仕組み)。正直、このクルマが4WDであることさえ忘れさせる。
 前モデルの前後不等トルク配分システムにおいてもX5の操舵感はSUVでは群を抜くものだったが、Xドライブでは通常走行では4WDを操っているという意識すらなくなるというレベルに達している。Xドライブが本領発揮するのは、なんといってもコーナリングだ。素直な舵効きと俊敏なターンインはFRそのものといっていいレベル。これに加え、コーナーで「スポーティな旋回モーメントを保ちつつ」前後の駆動力を最適にバランスするのがXドライブの醍醐味だ。単なるトラクションエイドとしての4WDでなく、いわばスポーツドライビング・エイドとも呼べる仕組みなのだ。
 オールマイティなプレミアムSUVとして注目を集めているトゥアレグは3番時計を記録。X5との重量差(トゥアレグは2速トランスファーなどを備える)を考えれば、僅差で迫るこのタイムは素晴らしい。これにはパワフルなV8もさることながら、最新の6速ATの実力が大いに貢献しているものと考えられる。
 発進加速中のシフトは矢継ぎ早であり、ぐんぐん車速を高めていく感覚はスポーツカーの加速感に似たものだ。高速巡航での実力や迫力ある追い越し加速についてはもちろん、これで発進加速でもスポーツサルーンに引けをとらぬことが確認されたことになる。最新のプレミアムSUVは、思ったよりも随分速いのだ。
 最速データはセレクターをSモードにしてマップ任せのアップシフトで走るのが最も速く、手動シフトではこのタイムを上回れなかった。これはシフトショックを排除する制御が備わるため、手動操作ではマップにプログラムされているシフトスピードを上回れないためだ。トゥアレグで「よーいドン」をする場合にはSがベストチョイスです、ハイ。
 どっしりしたゆとりある安定感、という言葉がゼロヨン加速の記事に適切かどうかはともかく、フル加速の最中にもコンソールの中から手探りで物を探し出せるほどシフトショックは小さいし、直進性にも信頼が置ける。
 

秘めたるポテンシャルは
まだその先に


ステージとなった飛行場の路面がやや荒かったことと、ハーフウェットであったことを考慮に入れれば、ベストコンディションなら13秒台は堅いハズ。4.5リッターのV8+ツインターボユニットは、450psの最高出力と63.3kg-mの最大トルクを発揮する。今回の5台中、動力性能の高さは圧倒的だ。

1st time
14秒076(ハーフウェット)

Xドライブ搭載で走りは
さらにBMWらしく


昨秋搭載したXドライブが話題だが、同時に7や5シリーズに積まれるバルブトロニック付き4.4リッター、V8ユニットを手に入れ、最高出力は旧型比47psアップの333psとなった。最大トルクは45.9kg-m。やはり新搭載の6ATとの組み合わせで、路面コンディション次第では14秒台も狙えそうだ。

2nd time
15秒190(ハーフウェット)
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