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| 『ニュー・シネマ・パラダイス』 |
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'89.ITALY/FRANCE

アカデミー外国語映画賞をはじめ、数々の映画賞を受賞している名作。監督は『海の上のピアニスト』などでも知られるジュゼッペ・トルナトーレ。巨匠、エンニオ・モリコーネが手掛けたサウンドトラックも話題になった。現在は初公開版に新たに約51分、60カットを追加した『完全オリジナル版』のDVDが発売中で価格は3,800円(税別)。●発売元=アスミック http://www.asmik-ace.co.jp
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物語の中で、このクルマが出てくるのはまさに終盤。
その端正な外観が大写しになるのは一瞬にすぎず、
登場するシーンは室内のアップがほとんどだ。
それでも、乗ってきた人物がどのような
バックグラウンドを持っているかを表現する上では十二分。
また、イタリア南部というロケーションまで考慮に入れると、
それは象徴的な意味合いをも帯びてくるのである。
写真=松本高好|T.Matsumoto 文=熊倉重春|S.Kumakura
取材協力=ランチア・テーマ・オーナーズ・クラブ
http://www.lancia-thema.com/
ランチア・クラブ・ジャパン http://homepage2.nifty.com/lcj/ |
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『ニュー・シネマ・パラダイス』には、誰もが涙するという。まさか今の日本、そんなに伊藤左千夫的ロマンティシズムの信奉者が多いとは思えないが、それぞれ部分ごとに、我が身に引き寄せて思い当たる節はある。
あえて個人的な角度からいわせてもらえば、この映画の特に前半、行き交う登場人物の中に、確実に私もいる。1954年のシシリーの小さな村は、そのまま東京郊外の小さな町でもある。ようやく平和を取り戻してから10年足らず、かつて軍需工場の膝元だっただけに、まだ戦争の爪痕が深く刻まれた町だった。今すっかりマンションの列になってしまった線路沿いには、外地からの引き揚げ者寮が、木造安普請の軒を連ねていた。小学校の上級生には、父親が戦地から戻って来ない子も珍しくなかった。
まだテレビの本格放送が始まる前だから、娯楽はラジオと映画だった。学校でもしばしば映画会があり、みんな行儀よく講堂の床に座って『三太と花荻先生』や『二十四の瞳』などを観せられた。少年トトが村の映画館に潜り込んで見入った『駅馬車』(監督ジョン・フォード/主演ジョン・ウェイン)、『どん底』(監督ジャン・ルノアール/主演ジャン・ギャバン)や『揺れる大地』(監督ルキノ・ヴィスコンティ)は、そっくりそのまま片岡千恵蔵、嵐寛寿郎、市川右太衛門らの勇姿に置き換えることができる。ひとたび映画館の暗闇に入れば、まだ見たことのない世界が無限に広がっていた。そして乏しいフィルムをやりくりするため、上映のたびに隣町の映画館との間を丸く平たい缶を荷台にくくり付けた自転車が疾走していたところまで、何もかも変わらない。これほどまでに郷愁を突きつけられてしまうと、平然と批評的に『ニュー・シネマ・パラダイス』を眺めるなど、できるわけがない。
だから後半いきなり展開が緩み、ありがちすぎるメロドラマ仕立てに陥っても、ついつい見続けてしまう。いや、あれはあれで当時の恋愛観の一つでもあったから、その部分に若き日の我が身を投影することもあるのだろう。
前置きが長くなりすぎたが、ほんの少しだけ登場するランチア・テーマが妙に胸にしみるのも、こんな映画の最後を締めくくる小道具だからだろう。イタリアの裕福な家庭の日常用として、この映画が制作された'90年前後で代表的なセダンといえばテーマだった。
'84年春のトリノ・ショーにプロトタイプとして出品され、その年の10月に発売されたテーマは、ガンマの跡を継ぐランチアの高級セダンと位置付けられていた。「高級」というのは、何よりも重要なキーワードだった。そういうイメージを代表して演ずるのがランチアの役割だったからだ。その15年前、フィアットがランチアを支配下におさめたのも、そこに狙いがあった。
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