現在、オペルがヨーロッパで好調を維持するその原動力は、ザフィーラやシグナムなど、ニッチ市場での成功によるところが大きい。
そしていよいよ日本にやってきた、このメリーバもしかり。
「コンパクトミニバンなど、日本では珍しくもない」などというなかれ。
ヨーロッパ生まれらしい、このキビキビ感はそうあるものじゃない!

リポート|熊倉重春|S.Kumakura フォト|郡大二郎|D.Kori

 簡単に総括すれば、オペル・メリーバはとてもチャーミングな多用途車だ。全長4m級と小柄なので、パーソナル・ウェポンとしても選ぶ価値は大きい。最近どうも元気のないヴィータの守備範囲を、メリーバは補って余りある。
 出会った途端に感じ取れる引き締まり感、乗り込んで見渡すダッシュボードのわかりやすさ、しゃっきり軽快で素直な走行感覚など、どんな切り口から眺めても矛盾がなく、まったくもって筋が通った直球勝負が快い。
 クルマとしての基本構成はヴィータと共通で、少し延ばしただけなのに、室内の広さと使い勝手は数倍も上がった。特に着座位置が高く乗り降りがスムーズなのと、やや立ち気味の姿勢によって前後の余裕を稼げたのが効いている。もちろん天井までも余裕たっぷりなので、心理的にはさらに広い。
 特に注目したいのは後席だ。とりあえず3人掛けだが、6対4の分割に見えて実は4対2対4なのがカギ。だから中央部は補助席的だが、このクラスで常時リア3人乗車は考えにくい。そこで中央部を折り畳み、残った左右をまず中央寄り、そして後ろにカクンカクンをクランク状にスライドさせると、肩からドアまで余裕のセパレート2人掛けになる。乗用車としてはかなり快適なパターンだ。
 この後席はシングルフォールドするだけだが、そのまま低く押し込めるので荷室との段差がなく、コンパクトワゴンとしても使いやすい。いちいちヘッドレストを抜く手間もいらないので、全項目ほとんど満点に近い。ただしオペルの通弊で、上げたヘッドレストを下げる時、それぞれロックが2個ずつあるのは操作しにくいが。
 フロントに横置きの4気筒ツインカムは、日本では目新しいが、すでに本国ではコルサ(ヴィータ)やアストラで使い慣れた1.6リッターの100ps。べつに色気もないけれど、どこからでも実用的なトルクを生むし、これぐらいあれば大荷物を積んでも足りる。
 変速機は、これまで日本ではヴィータの1.2リッタースポーツ仕様に搭載されていたイージートロニック(シーケンシャル5速MT)だが、これがこの種のクルマの消費者にどう受け入れられるか興味深いところだ。スポーティに走るならMモードが生きるのはもちろんだが、クルマの性格を考慮するとATモードも大切なはず。そこを重点的にチェックすると、この種のもの(けっこう全自動が苦手)の中では最も変速がスムーズな方に属する。しばらく乗って慣れると、ATモードでも「そろそろシフトしそうだな」と読めるので、瞬間的に微妙にアクセルを戻すとか、自然にやっている自分に気付くはず。そうなってしまえば、トルコンが介在しないだけ普通のATより感覚がダイレクトなのが嬉しいし、燃費も有利になる。
 ハンドリングは、こんな背高ノッポにもかかわらず、まったく不安を感じさせない硬質感に終始する。ロール自体けっして小さくはないものの、しっかりしたサスペンションを押しつぶしながら外側がじんわり沈むタイプなので問題ない。S字カーブでの急な切り返しにも、グラリとよろめく感触は少ない。そのうえオペルの設計陣はよほど心配症だったと見えて、電動パワーステアリングもかなり重く設定してあり(特に切り始め)、それも全体のどっしり感を強調する結果になっている。
 ここまで観察すると、もはやセダン、ワゴン、ミニバンなどの線引きは無意味。ドイツ車とか日本車などというのも無意味。そんな先入観を超えた優秀なライフツールと位置付けなければ、メリーバの本当の価値はわからない。218万円は、日本のコンパクト道具グルマより高価だが、そういう数字だけでは計れない「世界の風」が、メリーバには吹いている。
 

  ヴィータの面影を残しつつ、185mm全高を上げて違和感なくミニバン化を達成。ホイールベースはヴィータに比べ140mm長く、これが居住性の拡大に大きく貢献しているのだ。

パワートレーンは1.6リッターエコテックにシーケンシャル5MT、「イージートロニック」の組み合わせ。車重1320kgに100psだから、動力性能は必要十分。変速タイミングは穏やかで、ギアチェンジによるショックは少ない。

インパネはベクトラにも通じる直線基調のシンプルなもの。5ナンバーサイズいっぱいのボディを生かし、左右方向も思ったより余裕がある。フロントシートバックにトレイが付くなど、ミニバンならではの装備も充実。

リアシートの多彩なアレンジはメリーバの真骨頂。写真左上が3人乗車時のノーマルポジション、シート中央をフロアに畳み込めばセンターアームレストが出現して余裕の2名乗車に(写真右上)、さらには最大200mm後ろにスライドさせることもできるのだ(写真左)。

ラゲッジルーム容量は通常で350〜560リッター(後席のスライド量による)。これがリアシートを両方畳むと1410リッター、さらに助手席も畳めば2005リッターにまで広がる。このとき、約2.4mの長尺物が楽々収納できる。これが「フレックス・スペース・コンセプト」だ。

  ロングホイールベース化されているだけあり、この背の高いボディにしてコーナリングは意外なほど安定している。イージートロニックは基本的にMTのため、動力性能も想像以上に活発だ。
  OPEL MERIVA
■全長/全幅/全高(mm)
4040/1695/1625
■ホイールベース(mm)
2630
■トレッド(前/後)(mm)
1450/1465
■車両重量(kg)
1320
■エンジン種類
Z16/直4DOHC16V
■排気量(cc)
1597
■最高出力(ps(kW)/rpm)
100(74)/6000
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
15.3(150)/3600
■トランスミッション
5MT(シーケンシャル)
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル:
トレーリングアーム/コイル
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:ディスク
■タイヤ(ホイール)
185/60R15(6J)
■東京標準現金価格
¥2,180,000
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