舞台をWRCからストリートやワインディングに移した、三菱が誇る公道最速ウェポン、ランサー・エボリューションVIII。
今回、アルミルーフパネル等の新技術を引っさげて登場したMRは、シリーズの伝統に則って、さらなる「進化」を遂げていた。

リポート|島下泰久|Y.Shimashita フォト|宮門秀行|H.Miyakado

 1年ぶりにWRC復帰を果たした三菱が、それに歩調を合わせるかのように、公道最速ウェポンであるランサー・エボリューションを、さらに進化して登場させた。それがランサー・エボリューションVIII MRである。
 今回のモデルは“エボIX”ではなく、あくまで“エボVIII”のMR。よって変更は小規模に留まる……かと思いきや、その内容は至極充実している。つまりは、戦闘力が確実に増しているということだ。
 最大のトピックは、国産車初のアルミ製ルーフパネルの採用で、これによって重量は約4kg低減、重心高は3mm低下している。「たったそれだけ?」と思われるかもしれないが、同等のロール低減効果をボンネットの高さで得るには、12kgの軽量化が必要だという。高い部位ほど、その効果は如実に表れるのだ。これに加えドア内部のサイドインパクトバーもアルミ製とされ、こちらは両側で計3.5kgの軽量化に繋がっている。
 果たしてその効果は、ハッキリと体感できるものだった。今回は、ハンドリング評価路とパイロンスラロームコースにて“エボVIII”との比較試乗ができたのだが、特に右へ左へと連続して切り返すような場面では、ロールの収まりが断然素早く、一体感が大いに高まっていた。なるほど、たった4kgのためにここまでする価値は、十分以上にあったといえる。
 エンジン、シャシーにも改良が加えられている。エンジンは、競技仕様であるRSの5速MT仕様以外のターボチャージャーとカムシャフトを、より高回転域でのパワーを重視したものとする一方で、過給圧制御の最適化、バランサーシャフトの軽量化によって、低中速域のトルク特性の安定化とレスポンスアップを図っている。
 これも“エボVIII”との比較では、高性能ターボユニットらしい、その高回転で炸裂する特性こそ基本的に変わらぬものの、低速トルクが増して、回転が落ちてもリカバーしやすくなっているし、自慢の高回転域でもトップエンドの伸びが俄然良くなった。要するに、全域で速さを増しているのである。
 シャシーでは、ビルシュタイン製ダンパーの採用と、スーパーAYC(アクティブヨーコントロール)のリセッティングがトピックだ。特に前者は、ダンパー性能が格段に上がったため、減衰力自体は“エボVIII”より低くなったというから面白い。後者は、コーナー進入時のABS作動時にも積極的なヨー制御を行なって、回頭性を高めたところがポイントである。
 実際、その挙動のシャープさは、FFベースの4WDという先入観を覆す。リアがぐんぐん回り込み、なのにまったく安定感を失わない様は、まさに異次元の感触。それゆえに走らせ方には独特のクセがあるが、それを飲み込むことができれば、思い通りのラインを、思った以上の速度で駆け抜けることができる。もちろん、絶対速度がとんでもなく速いから、誰でも容易に限界を極められるなんてことはないが、そのはるか手前で走っていても速さは尋常ではなく、容易には目が慣れないほどだ。
 もはやWRCマシンは、ベース車とは別物のWRカーへと移行しており、よってランサー・エボリューションの存在理由は、かつてほどに明確ではない。なのに、愚直なまでにパフォーマンスアップを求めてリファインを重ねてきたことは、素直に賞賛したい。つまるところ、その名に「エボリューション」つまり「進化」を戴く以上、進化それ自体が目的であり、存在意義でもあるのだろう。
 よって不満があるとすれば、そう、このMRも、いつかさらに進化した次世代モデルへと取って代わられるだろうということ。しかし、まさしくそれは宿命なのだ。


  MITSUBISHI LANCER EVOLUTION MR
  GSR RS
■全長/全幅/全高(mm)
4490/1770/1450
■ホイールベース(mm)
2625
■トレッド(前/後)(mm)
1515/1515
1500/1500
■車両重量(kg)
1400
1310
■エンジン種類
4G63ターボ/直4DOHC16V+ターボ
■排気量(cc)
1997
■最高出力(ps(kW)/rpm)
280(206)/6500
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
40.8(400)/3500
40.0(392)/3500
■トランスミッション
6MT
5MT
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル:マルチリンク/コイル
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:Vディスク
■タイヤ(ホイール)
235/45ZR17(8JJ)
205/65R15(6JJ)
■東京標準現金価格
\3,398,000
\2,740,000
問い合わせ先
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
 
  競技仕様のRSには6MTと5MTを用意。6MTのみスーパーAYC&スポーツABSが標準装備となる。GSRに比べ6MTは40kg、5MTは90kgも軽量となり、その差は走りに顕著に現れる。
  従来の4G63型エンジンを細部にわたって改良し、最高出力280ps、最大トルク40.8kg-mを発生。低速トルク向上をはじめ、特に高回転域での伸びが大幅に向上している。
  専用チューンを施したビルシュタイン製単筒式ショックアブソーバーや、ブレンボ製ブレーキシステムによりシャシーを強化。BBS製の17インチ鍛造ホイールはオプションとなる。
  ブラックモノトーンで統一されたインパネ回り。MOMO社製本革巻きステアリング(RSはオプション)やカーボン調インパネオーナメントパネルなどが新採用されている。
  前席にはショルダーパッド付のレカロ社製フルバケットシートを採用(RSはオプション)。後席はスエード調のハイバック形状で、すべての乗員に高いホールド性を提供する。
  リアスポイラーのアウターパネルには、カーボン素材に似たダークグレー塗装を採用。オプションのボルテックスジェネレーターを併用すれば、より強力なダウンフォースを獲得することができる。
  新開発のボルテックスジェネレーターはオプション装備。8つのフィンが気流に縦渦を発生させることで空気抵抗を低減、結果として揚力係数を約35%減少させるという。
  技術的なハイライトであるアルミ製ルーフパネルの採用は、数値にして約4kgの軽量化と3mmの低重心化を実現。ルーフにおける4kgの軽量化は、数値から想像される以上のロール低減効果を発揮する。



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