従来のS40といえば、三菱との共同開発による成り立ちなどから、ボルボのエントリーモデルという位置づけにありながらも、やや異彩を放っていたのは事実。
しかし、今回登場した新型S40はそんなイメージを一新。
ボルボならではの高いプレミアム性が、全身に貫かれている!

リポート|河口まなぶ|M.Kawaguchi フォト|ボルボカーズジャパン

 アライアンスの成果が現れた。数年来の自動車業界再編成の動きによって、世界中の自動車メーカーは思わぬブランドと親子になったり、従兄弟になったりした。果たしてそうした新たな関係に、どんな意味や効果があるのかこれまでは理解し難かったが、ようやく具体的なカタチが見えてきた。
 ボルボは'99年、フォードに乗用車部門を買収されて以来、フォードのPAG(プレミア・オートモーティブ・グループ=高級車グループ)に属してきたが、これまでは特にアライアンスを感じさせる大きな動きはなかった。
 しかし今回、スペインのマラガで試乗したボルボのプレミアム・コンパクトセダン、新型S40(日本導入は今春の予定)は、まさにアライアンスのメリットを活かした具体的な成果の好例といえる。
 新型S40は、親子関係にあるフォードのC-MAX/次期フォーカス、従兄弟関係にあるマツダのアクセラと技術を共用する。具体的にはプラットフォームの共有化になるのだが、イメージの問題だろうか、ボルボはこれをコモン・テクノロジーと呼んでいる。
 プラットフォームの共有化は、ブランドごとの個性が勝負の分かれ目となる現代の自動車市場においてはマイナスイメージにも思えるが、新型S40が用いるプラットフォームは、まさに「三本の矢」を感じさせるポジティブなもの。それぞれが独自開発のプラットフォームでは、強みも弱みもあったはずだ。そこで新たなプラットフォームでは、求められる安全性、生産性、運動性、量産性、軽量化など実に様々な分野において、3社が互いに知恵を出し合い開発が行なわれた。その結果、非常に優れたベースが出来上がったのだ。
 もちろん、それぞれのメーカーが得意とする分野をリードしたことは間違いなく、ボルボの場合、それは安全面ということになる。さらに、テクノロジーを共有するメリットは開発コストの削減だ。それは同時に、各ブランドの個性を際立たせる部分への投資にゆとりを生む。つまり目に見えぬ部分を共用してコストを下げ、目に見える部分の個性を強められるのだ。


 新型S40は、RNCと呼ばれる新世代エンジンを搭載する。これは独自性の高い直列5気筒で、今回は2.4リッターのNAと2.5リッターのターボの2種類が用意されていた。ミッションはともに5ATである。
 走りにおいては、まず5気筒エンジン独特のフィーリングが印象的だ。4気筒よりも豊かなトルク感があり、回転フィールそのものも上質さで優る。NAは伸びやかかつ爽快な印象で、ターボはフラットなトルクにより、どの回転域からでも力強さが得られる。まさに、この5気筒エンジンが「らしさ」を強く主張する源でもある。
 シャシーは、これまでのボルボが持つコンフォート面での優位性を継承しつつ、スポーティな味が盛り込まれる。このあたりはコモン・テクノロジーの効果だろう。
 ハンドリングは、同社の上級車と比べると明らかにシャープだ。ボルボは、S60でこれまでのイメージを覆すスポーティなハンドリングを実現したが、新型S40はそれをキープしつつ、コンパクトらしいシャープさも合わせ持つ。操舵に対してノーズがキビキビと動き、コーナーでは狙ったラインを正確にトレース。同時に、ボディの動きも軽快で、きわめて爽快な走りが楽しめる。
 さらに、乗り心地も悪くない。かねてより得意とするコンフォート面を上手く盛り込んで、シャープなハンドリングとの両立を図っている。ゆえに、高速クルージング時などにおいては、ボディは常にフラットに保たれ、心地よく頼もしい感触を伝えてくる。
 個人的には、220psを発生するターボエンジン搭載のT-5に好印象を受けた。2.4よりも乗り味に張りがあり、しなやかさも損なわれないからだ。
 強いていうなら、こうした新しいスポーティなテイストが、他車との共用から得られた部分だろう。ただし、走り全体を見渡せば、他車にはないプレミアム感に溢れており、確実にワンクラス上の仕上がりを感じさせる。


 だが、僕が何より感心したのは、エクステリア/インテリアのフィニッシュと安全装備の充実ぶりだ。
 コンパクトボディながら、エクステリアにはきわめて上質感があり、このあたりは確実にアクセラやC-MAX/フォーカスを凌ぐ。インテリアにおいても、これまで以上に上質かつ機能的なスカンジナビアン・デザインを強くアピール。特にフリー・フローティング・センターコンソールを中心としたインパネ回りは、シンプルながらも入念に使い勝手が練り込まれた秀逸な仕上がりといえる。
 そして安全面では、このクラスの常識を超えた万全の構えを見せる。ボディ自体が高い安全性を持つのはもちろん、装備内容的にも上級車種とほぼ同等、ボルボならではの安全哲学が貫かれる。また、新技術としてはIDIS(インテリジェント・ドライバー・インフォメーション・システム)が盛り込まれる。このシステムは、例えば追い越しやブレーキング時など注意力と集中力が要求される状況で、ウォッシャー液の補充など緊急性のない警告メッセージを保留するというもの。これは、いうまでもなく運転中のドライバーの注意をそらさないことを目的にしており、ドライバーの操作状況を常に感知するという、ハイテクを駆使することで実現している。
 もちろん、こうしたエクステリア/インテリアにおけるプレミアム感や安全装備の充実こそ、コモン・テクノロジーの効果である。基本となる部分の開発コストが削減できたからこそ、クラストップレベルの高品質と豊富な安全装備が盛り込めたといえるのだ。
 三本の矢とは「一本の矢では折れやすいが、三本の矢とすれば折れにくい=団結することが大切」という喩えだが、新型S40の場合は、その喩えをさらに推し進めた次元にあるといえる。つまり、三本の矢から生まれた考えを活かすことで、一本の矢がより強力なものになる、という意味において。
 
  効率的なパッケージングにより、新型S40のエンジンは他のボルボ車のエンジンよりも200mmのスリム化に成功。その結果、コンパクトボディながらも横置き直列5気筒エンジンの搭載を可能としている。上が2435ccから最高出力170ps/6000rpm、最大トルク23.5kg-m/4400rpmを発揮する2.4i。下は2521cc+ライトプレッシャーターボを装着するT5で、最高出力220ps/5000rpm、最大トルク32.6kg-m/1500-4800を発揮。
  全車に標準装備となるIDIS(インテリジェント・ドライバー・インフォメーション・システム)は、運転に集中しなければならない状況をモニターし、車載電話の呼び出し音や、緊急性のない警告メッセージの伝達を保留するという、世界初の画期的な安全システム。
インテリアでのトピックは、独立した構成のフリーフローティング・センターコンソール。センターコンソールとインスツルメントパネルをエレガントにリンクさせ、上級なインテリアを演出する。スイッチ類は機能的で使いやすいデザインが特徴。
  人間工学に基づいたシート形状により、最適なポジショニングを実現。室内は従来に比べ、より広い居住空間を獲得。とりわけ、後席足下のゆとりは格段にアップ。
  ロービームには、プロジェクタータイプのヘッドランプが採用。さらに左右ドアミラーにはサイドターンインジケータを装着することで、側面からの被視認性も向上。
  全長は先代に比べ54mmほど短縮、特許を取得した新開発のフロント構造を採用する。また、ボディのねじれ剛性は従来比で68%アップ、走行安定性、操作性にも大幅に貢献している。


  VOLVO S40
  2.4i T5
■全長/全幅/全高(mm)
4468/1770/1452
■ホイールベース(mm)
2640
■トレッド(前/後)(mm)
1535/1531
■車両重量(kg)
1399
1419
■エンジン種類
直5DOHC20V
直5DOHC20V+ターボ
■排気量(cc)
2435
2521
■最高出力(ps(kW)/rpm)
170(125)/6000
220(162)/5000
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
23.5(230)/4400
32.6(320)/1500-4800
■トランスミッション
5AT
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル: マルチリンク/コイル
■ブレーキ(F:R)
Vディスク/Vディスク
■タイヤ(ホイール)
205/55R16(-J)
■東京標準現金価格
\4,190,000
\3,960,000
問い合わせ先
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。



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