クライスラーとメルセデスの記念すべきコラボレーション第一弾、クロスファイアが上陸した。
ベースとなっているのは、メルセデス・ベンツSLK。
といっても、流用率は39%程度にすぎず、単なる派生モデルではないことは数値からも明らか。
実際、その内容はクライスラーらしさに満ち溢れていた。

リポート|笹目二朗|J.Sasame フォト|松本高好|T.Matsumoto

 クロスファイアは、実に自動車らしいカタチをしている。クラシックな雰囲気を醸しながら、新しい感覚で処理された──そうPTクルーザーと同じだ。さかのぼれば、バージル・エクスナー時代のクライスラーもそうだった。シボレーのコルベア、フォードのファルコンに対し、クライスラーはバリアントというモデルを用意していたが、大衆車にしては個性的なエクステリアだった。
 クロスファイアは、まず「スーッ」と走り去る瞬間のフォルムが映える。シンプルなシルエットでも、時にハッとさせる瞬間があるものだ。その一方、ディテールにも凝っているから、じっくり眺めれば味わいも感じられる。だから、長くつき合える。凝った作りは製造原価を上げ、価格競争力を低下させるが、それを承知でここまでデザインを重視した車を商品化したクライスラーには、自動車に対する情熱を感じる。「走ればいい」「壊れなければいい」という時代はとうに終わった。もはや、一定レベル以上の走行性能や信頼性は確立された技術だ。だから、そうした部分は他に任せ、勝負するのはデザイン。これこそが、クライスラーの得意分野を生かした車造りだと思う。
 中には、すべてのコンポーネントを自前で賄うことに惹かれる純血主義の人もいるだろう。だが、魅力ある製品を生み出すためには、良いモノを積極的に採り入れる柔軟性が不可欠だ。メルセデスとクライスラーはパートナー同士なのだから、変な意地を張る必要などどこにもない。まぁ、そういう目で見がちなのは我々プレス関係者だけで、ユーザーはもっとドライなのかもしれないが……。
 さて、日本にもようやく上陸したクロスファイアは、メルセデスとクライスラーによるコラボレーションの記念すべき第一弾だ。この車、写真では大きく見えるが実寸はコンパクト。ライバルと目されるアウディTTクーペと比べると、4060mmの全長は20mm長いだけで、全幅は1765mmで同一。そして全高は1305mmと、TTの1350mmより若干低い。つまり、ほぼ同じ大きさだ。一方、2400mmのホイールベースはTTより20mm短いが、タイヤが前225/40R18、後255/35R19と大径だから、サイドビューのタイヤのボリュームは相当なもの。それでも、オーバーハングが短い最新モデルらしいプロボーションは、TTと相通じる。
 メルセデスからの流用率は39%、とのことだが、これは「摘み食い」の“いいとこ取り”。まずエンジンは、お馴染み3バルブSOHCの3.2リッターV6。パワー&トルクはメルセデス用と同じで、218ps&31.6kg-mを発生する。ミッションは5速ATで、もちろん駆動方式はFR。サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン、リアはマルチリンク(5リンク)の4輪独立懸架で、つまりはSLKからの流用。ちなみに、ステアリング形式も同じリサーキュレーティングボール式で、ラック&ピニオンを選ばなかったところにクライスラーの見識を感じる。ブレーキは、フロントがベンチレーテッドの4輪ディスクだが、大径ホイールの隙間から見えるローター径は小さめ。タイヤは、ミシュランのパイロットスポーツが銘柄指定される。
 
  ホイールは、伸びやかな7スポークデザインが魅力的。カラーは、サテンシルバー。写真のフロントが18インチ、リアは19インチ。ボディサイズや、エンジンパワーを考えると明らかにオーバークオリティだが、意外や乗り心地は許容範囲内。
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