北米を中心に売れに売れているカイエンに、ポルシェ初のV6エンジン搭載モデルが追加された。
VWグループのユニットと基本的に共通だが、そこはポルシェ、自ら開発を行ない、吸排気系などを見直すことでパワーアップを果たしている。
試乗の舞台は、雪と氷に覆われたフィンランド北部だ。


リポート|熊倉重春|S.Kumakura フォト|ポルシェ・ジャパン

 これでも暖かい方だと地元じゃ笑っているが、東京育ちの軟弱な身に零下18度は鋭く刺さる。もうすぐ冬至、まったく昼間がなくなるフィンランド北部のここは寒村ロバニエミ。あと8km北上すると北緯63.33度、本格的な北極圏だ。
 ロバニエミといえばサンタクロースの現住所。サンタ郵便の本局もここにある。そんな雪と氷と針葉樹の世界を訪ねてみたら、トナカイの橇ではなくポルシェ・カイエンが私たちを待っていた。 21世紀のサンタは、どうやらぬくぬく猛速で世界をぶっ飛ぶことになったらしい。
 その名はカイエン。それだけ。すでに発売されているターボ(450ps)やS(340ps)など大排気量V8搭載のスーパーモデルに対し、ベーシック仕立ての普及版だ。しかしそこはポルシェだけに、スペックの低い我慢グルマとは違う。それどころか、これが最もポルシェらしかったりするのが嬉しい収穫だった。こんなに巨大なSUVに、軽快なスポーツカーの面影がダブって見えたのだから。
 簡単に輪郭を紹介しておくと、最大の特徴はエンジンにある。今度はV8ではなくV6を採用、それも単一ブロックにジグザグにシリンダーを並べた特異な15度V型と聞けば、ハハ〜ンと思い当たるはず。そう、姉妹車VWトゥアレグのV6と基本的に共通だから、カイエンへの搭載性も問題ない。ほかにもゴルフR32をはじめアウディA3やTTにも使われているもので、排気量不相応のコンパクトさが武器。V8とくらべると、なんと単体で50kgも軽い。
 もちろんポルシェにも意地があるから、ただ流用したわけではない。吸排気系を丸ごと設計し直したほか圧縮比も上げ、220psから250psまで増強してある。その他はエアサスから車高調節などの装備まで基本的にV8系と同じだが、このV6から日本でも6速ティプトロニックS(アイシンAW製のTR6型)に加え6速MTも搭載されるようになった。カイエンMTは日本で599万円、SのMTが800万円になる。高級SUVでMTはこれだけなので、ポルシェ本来のファンを筆頭に、結構歓迎されるかもしれない。
 さて、このベーシック・カイエン、前述の通りサックリした軽快感が何よりの魅力。北欧仕様のダンロップ・グランドトレック(スタッドレス)に粉雪を噛ませて力強く発進し、最初のカーブを抜けただけで、きわめて回頭性が鋭いのが確認できた。だからといって直進性が低下したわけでもない。ブラックアイスの郊外道で130km/hまで伸ばしても、まったく楽々と巡航してくれた。
 一方、低・中速での底力もたいしたもので、のけぞるほどの急斜面(もちろん雪の)でも、2速のままたいして吹かさずに突破できてしまう。さらにコンソール上のスイッチでローレンジにシフト(連動してセンターデフもロック)すると、四輪のどれかが浮き上がるほどのオフロードセクションも難なく通過できてしまう。またMTの場合、こんな勾配の途中で停めても自動的なホールドモードが働いてブレーキがかかったままになるから、まったくフールプルーフだ。足元ではペダルが踏み込まれたままになっていて、クラッチとアクセルが発進操作を受けると同時に戻るのが見える。
 そのほかにもウィンター・ラリーの練習コースでいろいろ攻めてみた結果、単なるプレステージでなく行動するためなら、むしろこのV6仕様の方がV8より上なのではないかとさえ思えた。あえて分類するならターボはクルーザー、SがGT風、そしてV6が本来のスポーツ・ユーティリティー・ビークルというわけだ。ボクスターに近い価格といい、これから日本のカイエンの主役になりそうな気がする。
 
  3.2リッターV6エンジンは250ps/31.6kg-mを発生。開発はポルシェ自身が行なったが、製造はVWが担当する。カムそのものはVW製と同じだが、可変バルブタイミングのソフトウェアを変更して特性を変えている。
  5連メーターにポルシェらしさを残すインパネ回りは、デザイン上でターボやSと変わるところはないが、メーターリング、ペダルなど細かい仕様が変更されている。
  6MT、6速ATとも最高速は5速で出る。6速はクルージングギア。 MTのほうが、そのキャラを容易に引き出すことができるだろう。


シートは前後ともレザー仕上げで、バックレスト一体型のデザインはポルシェの他シリーズと共通のもの。トリム類にもレザーを多用し、普及版とはいえ高級感は十二分。
  タイヤは235/65VR17サイズを標準装着。オプションで18、19、20インチも用意される。試乗車は北欧仕様のスタッドレスを履いていた。
  吸排気系の見直しのうち、特に排気系に関しては「ポルシェらしいサウンド」を心がけたという。歯切れのいい乾いた音を響かせる。
  オフロードなどで最大のホイールストロークを必要とする時は、スイッチにより前後のスタビライザーのロックを解除できる。
 
  PORSCHE CAYENNE
■全長/全幅/全高(mm)
4782/1928/1699
■ホイールベース(mm)
2855
■トレッド(前/後)(mm)
1647/1662
■車両重量(kg)
2225
■エンジン種類
V6DOHC 24V
■排気量(cc)
3189
■最高出力(ps(kW)/rpm)
250(184)/6000
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
31.6(310)/2500〜5500
■トランスミッション
6MT
■サスペンション(F:R)
マルチリンク/エアサス:
マルチリンク/エアサス
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:Vディスク
■タイヤ(ホイール)
235/65VR17(−)
■東京標準現金価格
¥5,990,000
問い合わせ先
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
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