『アメリカン・グラフィティ』を今もし日本で再上映したら、中年は無事ではすまない。熱く胸を焦がした若き日を突きつけられた嗚咽が、映画館の闇の奥から聞こえるはずだ。
舞台は、カリフォルニア州の北にある小さな町。時は1962年の夏の終わり。軸になる登場人物は、高校を卒業するクラスメート4人だ。地元で就職する者もいれば、大学への奨学金を与えられて明日ここを発つ者もいる。でも本当にそうすべきかどうか決断を下せないまま、ガールフレンドとの会話もぎくしゃくしがち。そんな最後の晩、いつも遅くまでやっている溜まり場のメルズ・カフェに集った彼らの、翌朝までの風景。
そのメガホンを執ったのがジョージ・ルーカスであり、プロデュースを引き受けたのがフランシス・フォード・コッポラであり、やがてハリウッドどころか全米のエンターテインメント界を席巻する才能の最初の閃光だったことを、まだ私たちは知らずにいた。
それはともかく、'62年当時のカリフォルニアのハイスクール卒業生が漂っていたのは、「モラトリアム(猶予)と倦怠」の海だった。豊かさに埋もれて明確な目標も決められないまま人生の設計を一日延ばしにするのが彼らの常だった。そんな彼らにとって刺激らしい刺激といえばガールハントとレース。意気投合すればクルマに引っ張り込み、人目につかないガレージの裏でペッティングに耽るか、たまたま信号で並んでガンを飛ばしあえば、グリーンに変わる瞬間に飛び出して二、三ブロック先まで加速を競うのがお定まりのパターンだった(そんなシーンに端役として登場するハリソン・フォードが後にこれほど出世することも、もちろん当時の私たちは知るわけがない)。
そんな中で人気があったのがホットロッド。中古車をローダウンし、エンジンを極度にチューンし、徹底的に軽量化したスペシャルで、省けるものをすべて省いた象徴として、ボンネットもなく中身を剥き出しにしたものも多かった。映画の中で主人公ミルナーが乗り回す黄色いフォード・デュース・クーペなど、そんなストリート・ロッドの典型といえる。ちなみにナンバープレートのTHX138は、ルーカス監督が学生時代に撮ったSF『THX-1138』から取ったという。
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鮮やかなカナリアイエローのボディカラーは、鈍い光沢を放つエアストリームのキャンパーの前でもよく映える。太いタイヤによる尻上がりのリアビューは量感タップリ。今回、撮影にご協力いただいたアメリカン・ガレージでは、魅力的なアメリカ製のレトロなアイテムを多数扱っている。その品揃えは、ミニカーから古いガソリン・チャージャー、スロットマシンまでと実に幅広い。 |