ついに5シリーズが日本に上陸した。
アルミとスチールを組み合わせるハイブリッド・ボディ構造、車速や走行状況に応じてギアレシオまでも自動で制御するアクディブ・ステアリングなど最新テクノロジーがこれでもかと投入された新しい5シリーズ。
当然その走りは革新と呼ぶに相応しい、想像を遙かに超える驚きをもたらしてくれた。


リポート|吉田 匠|T.Yoshida フォト|郡 大二郎|D.Kori

 人は一般的に、連綿と築き上げられてきたものに安心感を見出し、そういうものを身の回りにおいておきたいと願う反面、あるパターンが永いこと続くと、それをぶち壊して、まったく新しい方法論を選んでみたくなったりもする。
 最近のBMWは、その連綿と続けてきたパターンをぶち壊そうと思っている時期にあるのではないか、という気がする。一個人が抱くような感情の赴くままの変節願望ではなく、綿密なマーケティング理論や企業戦略に基づいたものであるに違いないが。
 その傾向はまず'01年発表の現行7シリーズに現れたのに続いて、'02年のZ4が流れを継承。'03年に出現したE60型ニュー5シリーズでは、それが一段と明確に表現されているように思える。
 そう考える根拠は、まずスタイリングにある。トランクリッド周辺の造形などは7シリーズに比べてずいぶん普通になってはいるが、それでも新型5シリーズは個性的だ。先代E39との類似性は、ルーフラインとキャビンのウインドーグラフィック以外にあまり認められない。これまでコンサバティブであるという風評に甘んじてきたクリス・バングル率いるBMWデザインが、新型5シリーズに、それを覆すに十分なインパクトを与えたのは間違いない。
 しかもボディサイズは先代に比べてホイールベースで60mm、全長で80mm、全幅で45mm、全高で35mm拡大され、後席やトランクルームが広くなっているのに、車重は先代と事実上変わっていない。これは、Aピラーから前のフロントセクションをフレームから外皮までほとんどすべてアルミ製とし、それをキャビン以降のスチール部分と一体化した軽量なハイブリッド構造ボディによって実現されたものだ。しかもそれは、50対50という理想的な前後重量配分を得るのにも役立っている。
 インテリアも、BMWらしいスポーティネスと高級感を維持しながら、ダイナミックなものに変貌している。ダッシュの両端からコンソールに向かってV字形に走る黒いアンダーパートや、ウッドまたはアルミ、チタンで設えられたダッシュやドアのトリミングのあしらい方に、それが見える。だいいち、センターに巨大なディスプレイを配したダッシュの全体形自体が、過去と決別している。
 とはいえ、コントロール類のシステムやデザインはE65型7シリーズに比べれば遥かに普通になっていて、エンジンの始動やATの操作は従来のクルマと変わらない。ATセレクターの後方にあるiDriveのコントローラー操作も、7シリーズの8ウェイから4ウェイに簡素化されている。
 一方、新5シリーズはクルマの本質にかかわる走りの分野において、7シリーズよりディープに新しい方向に切り込んだクルマだといえる。その最たるものが、アクティブ・ステアリングだ。
 車速やエンジン回転数に応じてパワーアシスト量を変え、操舵力が変化するステアリングは珍しくないが、E60のアクティブ・ステアリングはもう一歩進んで、ギアレシオまでも変化させる。車速その他の走行条件によって、ステアリングの重さだけでなく反応の速さも変えようというのだ。しかもそれはダイナミック・スタビリティ・コントロール(DSC)と連携していて、車両の挙動が不安定になり始めると、最大9度までの範囲でカウンターステアを切るという。日本仕様は、これを新5シリーズ全車に標準装着したのだから、本気のほどが伺える。
 
  インパネは7シリーズの流れを汲むデザインだが、操作性そのものは7シリーズよりも「普通」。なんら予備知識を持たなくとも、エンジン始動やシフト操作に困ることはない。
 iDriveのコントロールも7シリーズの8ウェイから4ウェイへと、より簡素化されて、使い勝手は向上している。
 525i/530iのシート&ドア内張りは、ファブリックが標準。とはいえ、車格を考えるとレザーをチョイスしたくなるのも事実。
 拡大されたボディの恩恵で、520リッターという容量を誇る広大なラゲッジルームは、9インチのゴルフバック4個を余裕で飲み込む。日本における重要なアピールポイントだ。


545iは、レザーシートが標準となる。後席足元の広さは十二分。写真はオプションのコンフォートシートで、アクティブ・ヘッドレスト、ランバーサポート等が装備される。


 
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