5シリーズのライバル筆頭といえば、メルセデス・ベンツEクラス以外にあり得ない。
こなた新しい方法論と技法を駆使したコンテンポラリーミュージック。かなた伝統の極みたるスタンダードナンバー。
ここでは530iとE320、主力となる2台を乗り比べてみた。はたして両車が奏でる旋律の違いとは――。


リポート|萩原秀輝|H.Hagihara フォト|柏田芳敬|Y.Kashiwada

 まさに、この企画のタイトルの通りに、両車はコンテンポラリーとスタンダードである。もちろん、BMWの新型5シリーズがコンテンポラリーで、メルセデス・ベンツのEクラスがスタンダードだ。つまり、現代的なるものと模範的なるものの違いといえる。
 ただ、現代的なるものはしばしば難解だ。新型5シリーズも、従来型からの変わりように、まだ馴染んでいない人もいるはずだ。すでに、イタリアのサルディニア島で開催された国際試乗会やフランクフルト・ショーで見慣れているはずのリポーターでさえ、こうしてEクラスと並ぶと、新型5シリーズには従来のミドルサルーンに対する価値観がそのまま当てはまらないことに気付いてしまった。
 Eクラスは一見して模範的であり、いかにも高級そうに思える。ボディサイドのクロームメッキのあしらい方だけを見ても、過剰な装いにならないギリギリの範囲で華やかさを演出している。そうした印象を抱きつつ新型5シリーズを見ると、ボディサイドは妙にアッサリしている。従来型もモール類は控えめにしか用いていなかったが、新型はプロテクターさえないので素っ気なく感じるのだ。
 ところが、新型5シリーズだけを見ると印象は一転する。ボディサイドを上から下に見たときに、凹から凸、そして凹へと変化する面構成は、ミドルサルーンどころか他にも例のないデザインだ。装うのではなく、肉体そのもので何かを表現しようとする形態のパフォーマーといってもいい。
 そうした違いは、インテリアにも表れている。Eクラスは、かつてのメルセデス・ベンツと比べるとデザインコンシャスになってきたが、新型5シリーズは従来型までのいわゆるコクピット感覚から決別。エクステリアの流れを受け継いで、ダイナミック感とリズム感のあるデザインになっている。
 それでいて、丸形2眼式メーターを踏襲しているので、基本となる部分では安心感がある。エクステリアにしても、キドニーグリルやサイドウインドーのグラフィックなど、デザインをエレメントとして見れば、変わらない安心感がある。それは、直列6気筒エンジンについてもいえることだ。
 今回試乗した530iが積むエンジンは、従来型と同様のM54型であり、相変わらずスムーズに吹け上がる。単にスムーズなエンジンは他にもあるが、剛性の高いシリンダーブロックの中で、完璧に回転バランスが取れた機能要素が稼働しているような高精度感が得られるのは、6気筒エンジンでは他にない。しかも、中回転域までのトルク感が高回転域でパワー感に変わるといった、ドラマチックな特性も実感させてくれるのだ。
 この感覚は、BMWならではの魅力だ。さらに、新型530iは従来型よりも加速性能が向上している。6速ATを組み合わせたことでオーバーオールのギアレシオがワイドになり、1速がよりローギア化されているからだ。アクセルを踏んだときにスッとトルクが立ち上がり、リアにグッとトラクションをかけながら加速する。なおかつ、エンジン音にも変化が認められる。従来型よりも音質が澄んでいる。フロント部をアルミニウム製、リア部をスチール製とするハイブリッド複合ボディを採用したことにより、従来型と音の伝わり方に差が生じたようだ。
 音という意味では、フル加速しながらシフトアップが繰り返されるときの“休符”の置き方もBMWらしい。サルーンのスタンダードは休符など置かず、連続感を重視して加速のスムーズさを際立たせようとする。だが、530iに限らずフォーン・フォーン・フォーンと“・”の間に、加速の段付きを意識させることなく絶妙な休符を置いている。こうした音の演出が、走りの臨場感を高める。
 その点、同じ6気筒エンジンを積むE320は、サルーンのスタンダードであることを自覚している。シフトアップを繰り返していても、あたかも無断変速のように加速する。音は休符を置くというよりもフッと一瞬消えるような気がするだけだ。サルーンらしさという意味では、明らかにE320の方が理解しやすい。
 エンジン特性も、低回転域から充実したトルクを発揮し、力強さを全域で維持している。それでいてトルクが過剰に感じることはなく、力強さが刺激ではなく余裕として実感できるのだ。
 ただ、E320のエンジンは、2000rpmあたりから微小な振動をステアリングなどに伝え始める。不快感をともなう振動ではないが、530iにはそれがない。そうした要素の積み重ねが、単にスムーズに吹け上がるエンジンではないという価値を、530iにもたらしているのだ。
 


明確にフードのアーチを2つ持つ5シリーズのインパネデザインは、7シリーズを除いて、他のどのクルマとも似ていない。もちろん過去にその範を求めてもいない。またモールを排除してボディ造形そのもので表現しようとするエクステリアも、やはりオリジナルな意志を感じさせる。そういう意味で5シリーズはコンテンポラリーだ。530iが搭載する直6DOHCユニット(231ps/30.6kg-m)の吹け上がり方さえも、BMWらしい独特な世界を表現する。

「良いクルマ」のためのメソッドをひとつひとつ消化し、それを積み上げて究極のサルーンたろうとするEクラス。それはスタイリッシュでありながらも従来の文法に則ってデザインされたインパネや、オーソドックスなボディモールやクロームメッキの使い方からも窺い知ることができる。機械の正確かつ緻密な動作感が伝わるV6ユニット(224ps/32.1kg-m)も、「極上のサルーンエンジンとは?」という問いに対する模範解答といえるだろう。

 
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