事実上の最後発だけに、ユーティリティは万全。
ライバルにはない、独自のシートアレンジも備わる。
しかし、フォードがリリースしたフォーカスCマックスの魅力は、実は一般的なミニバンのそれとは別の次元にあったのだ。


フォト&リポート|イアン・アドコック|I.Adcock 訳|磯部道毅|M.Isobe

 ルノーが、初代セニックでコンパクト・ミニバン市場を開拓して7年。フォードもフォーカスCマックスによって、ようやく同カテゴリーへの参入を果たした。フォード・ヨーロッパ副社長兼、製品開発担当のデリック・クーザックによれば、発売が遅れた理由は、フォーカスをベースに進めていたミニバン開発をいったん破棄。改めて、ゼロからCマックスのプロジェクトをスタートさせたからだという。そう、フォーカスと名乗ってはいても、Cマックスは新開発のプラットフォーム上に構築された、完全なブランニューなのだ。
 この新しいプラットフォームは、今後マツダやボルボなど、フォード・グループ各社の新型車に採用される極めて重要な基礎部分。となれば、気になるのは傑作の誉れ高いフォーカスのプラットフォームに対する新作の出来栄え。今回は、その回答として最初に走りの実力からご報告しよう。
 まず、Cマックスを走らせて印象的なのは、完璧といえる乗り心地だ。特にソフトなセッティングではないが、路面の凹凸を巧みに吸収し、フラットな乗り心地を提供する。フロントはストラット、リアがマルチリンクのサスペンションは、基本的にフォーカスからのキャリーオーバー。しかしホイールベースは25mm伸び、トレッドも40mm拡大。ジオメトリーも、フォーカスとは異なる。
 この足回りは、先述の乗り心地に加えてハンドリングでも非凡なところを見せる。ハードなコーナリングでも前後方向の動きやロールは効果的に抑えられ、背の高いモノスペースにありがちな不安を乗り手に与えることがない。
 電動パワーステアリングの味付けも適切。速度域を問わず自然なアシストをもたらし、レスポンスもシャープ。インフォメーションも、このクラスとしては豊富だ。
 そして、かように秀逸な操縦性、乗り心地に多大な貢献をしていると思われるのが高剛性ボディ。開口部の大きなミニバンながら、Cマックスの捩れ剛性はフォーカスに対して10〜15%も向上しているという。特に、フロント回りはトンネルブレースなどで入念に強化。これに堅牢なサブフレームを組み合わせていることと相まって、NVHも極めて優秀だ。
 シャシーとは直接関係ないが、パワートレインにも不満はない。今回、試乗したのは1.8リッターのガソリンと2リッターディーゼルだったが、動力性能は1.8リッターでも十分。滑らかな吹け上がりをみせるこのエンジンは、Cマックスを軽やかに走らせる。山岳路でこそ、5速MTを駆使してマメにシフトする必要に迫られるが、操作性が良好なので(この傾向はディーゼル用の6速MTでも同じ)苦にはならない。もし、それでも足りないというなら、ディーゼルをチョイスすればいい。充実した中速トルクと洗練されたマナーは、粒ぞろいのヨーロッパ製ディーゼルの中でも上位に入る実力派だ。
 ここまで読んでいただければ、もうお分かりだろう。結論からいえばフォードの新しいプラットフォームは、非常にレベルが高い。フォーカス譲りの足回りや高い剛性を誇る上屋など、Cマックスに優れた走りをもたらしている要素は他にもあるが、このクルマを走らせていると次期フォーカスに対する期待も自ずと高まる。
 それはさておき、ミニバンに不可欠な要素のユーティリティはどうかというと、Cマックスはここでも優秀だった。絶対的な広さはもちろん、自然なポジションが取れるフロントシートはミニバン予備軍にとって魅力的なポイント。セニックほど収納スペースは多くないが、ひとつひとつの容量が大きいので、使いにくさはない。
 また、ライバルにはない独自の機能もある。それは車体中央に向かって斜めにスライドするリアシートの両サイド。通常は3人掛けなのだが、センター部分の座面を起こして後方にスライド、残った左右を斜め後方に移動させると、レッグルームが10cm延びて左右シートのショルダー回りも6cm拡大する。こうすることで、フル乗車でない場合に後席に座った人は、よりリラックスした姿勢が取れる。セニックも、リアのセンターシートを取り外せば同じようなレイアウトが可能だが、Cマックスの手法を見せられると少々旗色が悪い。このあたりは、まさにライバルを研究した成果のひとつだ。
 このように、走りの実力も含めてCマックスの商品性は極めて高い。ベストセラーになる資質は十分以上といえるだろう。
 
  試乗車のエンジンは、1.8リッターガソリン(写真)と、2リッターディーゼル。動力性能は、1.8リッターでも十分といえる水準。

直線基調のインパネは、現行フォーカスよりもモンデオに近いテイスト。レイアウトは、極めて常識的だ。インパネシフトとなるマニュアルミッションは、ガソリンが5速、ディーゼルは6速という設定。

フロントシートは、自然なポジションが得られる作り。リアシートは両サイドが斜め後方にスライド、レッグルームとショルダースペースを拡大する独自の機構を採用。このとき、センター部分は左右シートの後方に畳まれる。


ラゲッジスペースは、標準の状態で550リッター。最大では、1620リッターにまで拡大する。特徴的なスライド機構を持つリアシートは、それぞれ取り外すことも可能。
  1.8リッターガソリンの4気筒は、スムーズな吹け上がりが魅力。操縦性は、最新のフォードらしくスポーティな味付け。乗り心地も秀逸だ。高剛性を誇るボディと入念な遮音対策などにより、NVHもハイレベル。


  FORD FOCUS C-MAX
■全長/全幅/全高(mm)
4333/1825/1595
■ホイールベース(mm)
2640
■トレッド(前/後)(mm)
1535/1531
■車両重量(kg)
1312
■乗車定員(名)
5
■エンジン種類
直DOHC 16V
■排気量(cc)
1798
■最高出力(ps(kW)/rpm)
120(88)/6000
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
16.8(165)/4000
■10・15モード燃費
■トランスミッション
5MT
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル:
マルチリンク/コイル
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:ディスク
■タイヤ(ホイール)
205/50R17(7.5J)
■東京標準現金価格
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。
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