フォーカスRSは日本に入ってこないのか? とWRCファンはやきもきしながら待ちわびている。
残念ながら、いまのところRS導入の予定はないのだが、悲しむなかれ、欧州フォードのチームRSが開発するホットバージョン、ST170が上陸した。
迫真のインプレッションを、かなり本気モードの萩原氏がお届けする。


リポート|萩原秀輝|H.Hagiwara フォト|赤松 孝|T.Akamatsu

 試乗の舞台は、群馬サイクルスポーツセンター。本来は自転車のためのサーキットなので、コース幅は狭い。当然、エスケープゾーンもない。つまり、試乗の舞台としてはいささか緊張感をともなう設定なのである。
 フォードは、この舞台をある演出を前提としてあえて選択。その演出とは、ラリーのスペシャルステージ(SS)だ。こういうときには、その気になる方がいい。
 そもそも今回試乗したフォーカスST170は、欧州フォードの特殊車両開発部門(SVE)が手がけたパフォーマンス・デリバティブだ。ちなみに、STはスポーツ・テクノロジーの意味。SVE(現在はフォード・レーシングと統合し、フォード・チームRSに組織変更)は、世界ラリー選手権に参戦中のフォーカスRS・WRCと直結するフォーカスRSも開発。ST170にも、そうしたイメージが色濃く反映されている。
 SSのスタート地点に、フォーカスST170のノーズを合わせる。6速MTを1速にシフト。スムーズなシフト感が小気味いい。ホイールスピンを避けるために、エンジン回転数は3000rpmに抑える。だが、スタートに失敗。エンジンの低速トルクが足りないのではなく、後で気付いたが1速のギアレシオが高いのだ。
 これはもう、レーシングスタートしかない。エンジン回転数を4500rpmあたりまで上げる。そしてクラッチミート。一瞬、17インチサイズのタイヤがギュッと鳴く。だが、すぐにトラクションを確保。標準装備のESP(エレクトリック・スタビリティ・プログラム)は解除したが、ホイールスピンは盛大にならない。エンジンは一気に吹け上がり、7000rpmを超えようとする。車速は60km/h。すかさず2速へ。エンジン回転数は5000rpmあたりに落ちるが、トルクが充実しているので加速の繋がりはいい。
 SVEは、高回転高出力を狙うのではなく、全回転域のトルクを充実させながら、高回転域で伸びのあるパワーが実感できる設定としたのだ。それにあたって、吸排気系の変更はもちろん、エンジンの中身にも大幅に手が加えてある。したがって、ノーマルのフォーカスに対して43psを稼ぎ170psを獲得しただけではなく、力強いトルク感と高精度な回転バランスに裏付けられたスムーズな吹け上がりも得ている。
 100km/hで2速から3速にシフトアップ。速度はさらに上昇し、高速のS字を全開で駆け抜ける。ナビゲーターはいないので、ペースノートの代わりに、コースサイドには先のコーナーのレイアウトを示すサインが提示されている。それを信じてアクセルを踏み続けるが、ハンドリングの正確さやスタビリティの高さが実感できていなければ、右足は意気地をなくしていただろう。
 リアのスタビリティは、クルマを強引に振り回そうとしてもタイヤが路面を放さないほど高い。ブレーキングしながら中速コーナーに飛び込んでも、クルマの姿勢はビシッと安定している。そして、1速までシフトダウンし、タイトなヘアピンコーナーへ。その際に、かかとでアクセルを煽ると、ゴキゲンなエキゾーストノートが響いてくる。
 ステアリングを切り込む。フロントはグイグイとコーナーのインに入り、リアはしたたかに粘り続ける。1速でフル加速してもトラクションの不足は感じない。ゴール。タイムは表示されないが、満足度が高い走りができた。
 その後、一般路も走ったが、SSで示したシャシー性能の高さが不思議になるほど優れた快適性が実感できた。スプリングを10%硬くしダンパーも強化してあるが、乗り心地の荒々しさを感じない。それは、フォーカスの基本性能の高さの証明にもなっている。
 
  完全にエンジンパワーに対して足回りが勝っているため、まさに“使い切って走る”感覚。スプリング、ダンパーはノーマルより強化されているが、快適性は思いのほか高い。
  エンジンは、標準系2リッター直4DOHCをベースにファインチューン。鍛造アルミピストンを採用、カムや吸気バルブを強化タイプに変更するなどして173ps/19.9kg-mを発揮する。
  シルバーメーターパネルをはじめ、随所にメタリックのアクセントを配することでスポーティ性を高めている。軽量な6速MTはゲトラグ社製となる。
  シートはホットバージョンらしく、ホールド性の高いレカロ社製を採用。濃いブルーのファブリックとブラックレザーのコンビが視覚的にもスポーツ気分を煽る。
  居住空間、ラゲッジスペースの大きさなど、使い勝手で評価の高いフォーカスの美点は、もちろんそのまま継承される。
  ホイールはフィンタイプの17インチ。タイヤは215/45R17を履く。ブレーキは大径ディスクを採用、キャリパーも強化されている。

  FORD FOCUS ST170
■全長/全幅/全高(mm)
4170/1710/1480
■ホイールベース(mm)
2615
■トレッド(前/後)(mm)
1490/1485
■車両重量(kg)
1240
■乗車定員(名)
5
■エンジン種類
直4DOHC 16V
■排気量(cc)
1988
■最高出力(ps(kW)/rpm)
173(127)/7000
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
19.9(195)/5500
■トランスミッション
6MT
■サスペンション(F:R)
ストラット/コイル:
マルチリンク/コイル
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:ディスク
■タイヤ(ホイール)
215/45R17
■東京標準現金価格
¥3,000,000
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※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。

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