『勝手にしやがれ』
'59.FRANCE

アメリカン・ニューシネマにも大きな影響を与えたヌーヴェルヴァーグの問題作。監督は、この作品で一躍有名になったジャン-リュック・ゴダールでベルリン映画祭監督賞を受賞している。主演は、ジャン-ポール・ベルモンド。現在はDVDソフトが発売されており、価格は2,980円(税別)●発売元=アミューズピクチャーズ/東芝デジタルフロンティア●販売元=アミューズソフト販売
パリの街中を走るアメリカ生まれのオープンモデル――。
現代の感覚からすれば意外な組み合わせだが、
不思議と違和感はない。このクルマ、
作中での役どころは主人公のチンピラに盗まれた盗難車
という設定なのだが、そうなった理由は当時の闇市場で
アメリカ車が人気だったからだ。しかしパリの景色に
馴染んでいた理由は、実は別のところにあった。

写真=松本高好|T.Matsumoto 文=熊倉重春|S.Kumakura
取材協力=マリンコーポレーションTEL:04-7190-0260
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 泥棒には泥棒なりの、職業的価値観がある。クルマにしても、高く横流しできる値打ちがなければ狙わない。映画『勝手にしやがれ』でジャン-ポール・ベルモンド扮するチンピラが、マルセイユの街頭でオールズモビルをかっぱらうのも、闇市場の人気車だからだ。雰囲気の華やかなアメリカ車は、けっこうフランスでも歓迎されている。
『勝手にしやがれ』は'59年、当期まだ20歳代だったジャン-リュック・ゴダールが初めて長編のメガホンを執り、そのまま現代フランス映画界の頂点に躍り出てしまった問題作である。彼はその後に『女と男のいる舗道』、『新・七つの大罪』、『軽蔑』、『気狂いピエロ』などで世間を挑発しつつ大家の道を突っ走ることになる。
 そんな『勝手にしやがれ』の原案を書いたのが、自身もシャルル・アズナブール主演の『ピアニストを撃て』で颯爽とデビューした監督でもあるフランソワ・トリュフォー。さらに制作陣には『いとこ同志』などで知られたクロード・シャブロルも加わっていたと聞けば、戦後フランスを揺るがした才能の凝縮であることがわかる。
 そう、彼らこそ新時代の旗手として映像表現に革命をもたらした、その名もヌーヴェルヴァーグ(新しい波)の作家たちだった。旧来のドラマトゥルギーになど見向きもしない新鮮さは、苛立たしいほどの違和感と驚きをもって注目され、たちまち戦後世代を巻き込むうねりとなって世界に広がった。アメリカにおけるニューシネマの動きもそうなら、大島渚、吉田喜重、篠田正浩など大船撮影所に拠った若手も松竹ヌーヴェルヴァーグと呼ばれた。
 いや、このような流れも、主演のジャン-ポール・ベルモンドもジーン・セバーグも、それぞれ語れば長くなりすぎる。パリで変死したセバーグの謎だけでも分厚い本になる。そこで急いでクルマの話題に駆け込もう。
 映画の冒頭でオールズを盗んだ主人公が、次に手を出したのがフォード・サンダーバード。これがパリを走る光景は、やや意外でありながら大きな違和感もない。ヨーロッパとアメリカの接点から生まれたクルマであることを、そこからも感じ取ることができる。
映画に登場するのは'55年型。取材車は'56年型で、識別点はリアにスペアタイヤを背負っていること(コンチネンタル・タイヤと呼ぶ)。これはトランクが小さいという不評に対応したものだが、全長が約25cm延びた。フロントフェンダーに、ベンチレーション用開閉リッドが付いたのも'56年型から。'57年型になるとリアのオーバーハングを153mm延ばし、再びスペアをトランク内に収納する。'57年型はグリルも下方に拡大され、フロントバンパーもU字型に湾曲するので容易に区別できる。テールフィンも、それ以前よりやや目立つようになった。
 
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