CLKのトップモデル、AMGバージョンが国内導入された。
注目のパワーユニットは自然吸気の5.5リッターV8で、このところ盛んに行なわれていたスーパーチャージャー装着ではなく、大排気量ユニットへの換装という手法で高性能化が図られている。
で、その走りをひと言で表現するなら、まさに意のまま。
エレガントにもアグレッシブにも、気分次第で着こなせる!


リポート|萩原秀輝|H.Hagiwara  フォト|柏田芳敬|Y.Kashiwada

 たかが367psと甘く考えていた。なにしろ、最近のAMGで話題になっているのは、5・5リッターのV型8気筒エンジンのバンク内にスーパーチャージャーを押し込み、500ps級のパワーを発揮するSL55、CL55、E55である。それらに比べて、CLK55AMGは100ps以上もパワーが控えめだ。ところが、だ。
 リポーターは、この手のクルマを試乗するとき、必ずトラクション性能を確かめる。電子制御安定性向上機能(メルセデス・ベンツでいえばESP)が進化しているだけに、それがシャシーの限界をわかりにくくしているからだ。
 そこで、その種の機能を解除しスタートでチョットばかり小細工をしてみる。つま先でブレーキを踏みながら、アクセルを少しずつ踏み、リアにトラクションがかかりテールがグッと沈んだところでスロットルを全開に!
 すると、どうだ。255/35R18サイズのピレリPゼロは激しくホイールスピン。そのまま一気にレブリミットの6500rpmまで吹け上がり、アップシフトが繰り返される。そして、路面にスキッドマークを残しながら3速までフル加速したのだ。
 この段階では、トラクション不足とは断定できない。367psとはいえ、その威力があまりにも凄まじいのかもしれない。そのあたりの真実を確かめるために、ESPを解除したままコーナーの出口でアクセルを踏み込んでみる。すると、たとえばイン側のホイールからトラクションを失うといった状態にはならず、当たり前のように加速態勢に持ち込める。キッカケがなければ不意にホイールスピンが起きたりはせず、その意味ではトラクション性能は高い。
 そうなってくると、だったらコーナリング中にキッカケを作り、より大胆な走りをしてみたくなる。ここまでパワーがあれば、リアタイヤのスライドを自在にコントロールできるはずだ。全長4640mmというボディサイズも、クルマを振り回すのに大きすぎない。
 メルセデス・ベンツのスタビリティの高さは定評のあるところで、ステアリングを一気に切り込むぐらいではキッカケは作れない。コーナーの入口でブレーキを緩めつつ、荷重がフロントに残っているタイミングを図ってステアリングを思い切りよく操作する。
 だが、結果は何も起こらない。最近のクルマは、ブレーキング中に自動的に安定性を向上させる制御(前後の制動バランスを変える範囲で)が介入することがあるので、その影響かもしれない。大胆な走りを楽しむことはできなかったが、それは誰もが望む領域ではないだけに、潔く忘れてしまおう。CLK55AMGの本領は、別のところにある気もする。
 そう、むしろスタビリティの高さを生かして、凄まじいパワーをじっくりと楽しむというのも一興だ。ここまでパワーがみなぎっているだけに、アクセルを踏み込む量に応じ、必要なだけ、あるいは必要以上、さらには血の気の引くような加速が得られる。
 ただ、その刺激をより積極的に楽しもうとするとき、メルセデス・ベンツのシフトプログラムには不満があった。ティップシフトを左右に倒しマニュアル感覚の操作をしようと思っても、アクセル操作が優先されてしまうからだ。
 ところが、このCLK55AMGは違う。セレクターの左側にシフトスケジュールを変更できるスイッチがあり、それを押すとS、C、Mの順で切り替わる。ちなみに、メルセデス・ベンツのS(スタンダード)は通常のDレンジとなり、他にウインターモードのWがある。AMGのSにはスポーツの意味がある(実は正式な名称がない)らしく、より高回転域が使えるシフトスケジュールになる。だとすれば、Cはコンフォートということなのか、低中回転域が生かせるシフトスケジュールになる。
 注目できるのはMだ。これはまさにマニュアルモードであり、セレクター操作が優先される。しかも、ステアリングのスポーク部裏側にはシフトスイッチ(AMGステアリングシフト)が装着、右がシフトアップ、左がシフトダウンであり、指先でタッチすると鋭い応答性が得られる。
 気になるのは、コーナリング中にシフトする場面で、メーターパネル右隅にある小さなタコメーターがステアリングに隠れてしまうことだ。これはシフトのタイミングを逃すことにもなりかねないだけに、せめてAMGだけでも専用メーターを採用してほしいものだ。もっとも、コーナリング中にシフトすること自体が非日常的な速域に限られるだけに、これまた誰もが望む領域ではないのだが……。
 場面設定を変えて、高速道路でシフトするなら、ステアリングに与える舵角が少ないだけにタコメーターは見える。左側のスイッチを2回タッチして3速までシフトダウン。そして、アクセルを踏み込む。エンジンは軽いビートを響かせながら吹け上がり、レブリミットに達するのと同時に右側のスイッチをタッチ。4速にシフトアップしても加速の勢いは衰えない。
 こうした場面で抜群のスタビリティを発揮するのは、AMGに限らずメルセデス・ベンツならではの魅力といえる。ステアリングはセンターで落ち着き、手応えもシッカリとしている。さらにアクセルを踏み続けたくなる。
 オッと、フルスケールのスピードメーターを半分以上を使い果たしてしまった。この手のクルマに乗っていると、どうもリポートが荒くれてきていけない。スピードを落とし、クルージング態勢に入る。この時の快適性もまた、CLK55AMGの魅力である。
 
  ボディ回りではフロントスポイラー、サイド&リアスカート、トランクリッドのリップスポイラーなどがAMGのオリジナルメニュー。クロームのデュアルエキゾーストも定番だ。
  もはや熟成の域に達したといえる、AMG製の3バルブ5.5リッターV8ユニット。367psと52.0kg-mを発生し、0→100km/h加速=5.2秒という圧倒的なハイパフォーマンスをもたらす。
  これでメルセデスの日本仕様は、AクラスとVクラスを除くすべてにAMGバージョンが設定。チューンドというよりトップモデルという位置付けがいよいよ明確になってきた。
  前後異型タイヤに組み合わされるのは、18インチのAMGツインスポークホイール。ブレーキも強化され、フロントには345mm径ドリルドローターと4ポッドキャリパーが装着。
  センターにヌバック、サイドにナッパレザーを使ったAMG専用シート。なお、前席にはサイドサポートをきめ細やかに調整可能なマルチコントロールシートバックが採用される。

 
MERCEDES-BENZ CLK55 AMG
■全長/全幅/全高(mm)
4640/1740/1415
■ホイールベース(mm)
2715
■トレッド(前/後)(mm)
1495/1480
■車両重量(kg)
1680
■乗車定員(名)
4
■エンジン種類
113M55/V8SOHC24V
■排気量(cc)
5438
■最高出力(ps(kW)/rpm)
367(270)/5750
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
52.0(510)/4000
■10・15モード燃費
7.4
■トランスミッション
5AT
■サスペンション(F/R)
■ブレーキ(F:R)
ストラット/コイル:マルチリンク/コイル
■タイヤ(ホイール)
F:225/40R18(7.5J) R:255/35R18(8.5J)
■東京標準現金価格
¥10,900,000
問い合わせ先
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。



■広告■

Copyright (C) GAKKEN CO., LTD. All Rights Reserved.