タイトルにある「AMG史上最強」という表現は、なにもエンジン出力のことを指しているのではない。
ここでいいたいのは、その多面性。
このE55AMGというクルマは、スポーツカーといってもおかしくはないハイパフォーマンスを持つ一方、本当にファミリーユースにも、フォーマルユースにも使えるというジェントルな側面も持つ。
これまでの一連のAMGが“羊の皮を被ったオオカミ”ならば、このクルマは乗り手の意思次第で、羊そのものにも、オオカミそのものにもなるという懐の深さを持つ。
これ1台でコト足りる、これまでにないクルマ。
その意味で、「AMG史上最強」というのだ。

リポート|小倉正樹|M.Ogura(本誌) フォト|柴田幸治|K.Shibata
取材協力=ダイムラー・クライスラー日本

 ミスコースが、このクルマの超絶のパフォーマンスを知るキッカケを与えてくれた。リポーターと柴田カメラマンは、メルセデスAMGが設定の試乗コースを順調に消化していた。渡されていたルートマップには実に丁寧なコマ地図が並ぶ。だから、それを追っていけば、間違えようがないはずだった。しかし、我々はあろうことか、距離を読み違えて、曲がるべきところの手前で曲がってしまったのである。と、それは、アウトバーンの入口だった。
 もちろん、すぐにミスコースに気づく。リポーターは即、フルアクセルだ。アウトバーンであるし、次の出口が何km先にあるかは分からない。そこを出て、Uターンをして、同じ道を同じ距離、戻らなければならない。何分ロスするかが分からないし、それを少なくするにはなにしろ飛ばす以外にない。
 E55AMGは、このフルアクセルで、まさに豹変した。それまでのあくまでもジェントルなサルーンというイメージは一挙に吹き飛ぶ。姿形は同じでも、ワイルドなスポーツカーそのものといった感じに劇的に変化する。
 搭載エンジンは、すでにお馴染みのAMG製5.5リッターV8だ。排気量を正確にいえば5439ccだが、リショルム式のスーパーチャージャーで過給圧を加えているから、モータースポーツ界の規定で換算すると8442ccにもなるモンスター。こいつがわずかにスーパーチャージャーのシャーッという金属音を聞かせながら、素早い回転上昇とともにトルクをガンガン出してくる。それは分厚い、太いといったありきたりのものではない。あたかも地下の巨大マグマが地表を押し上げるような、途方もない圧力といったものを感じさせるものなのだ。
 最大トルクは700Nm、なんと71.4kg-mもあって、これを2650rpmから4500rpmという広い回転域で発生する。0〜100km/hがたった4.7秒というスサマジイ加速データは、この猛烈なトルクが実現しているといって過言ではない。
 ちなみに最高出力の方は、476ps/6100rpm。Eクラスのエンジンルームも、5.5リッターV8を入れるとさすがに排気系の取り回しに苦労するのか、S55AMGやCL55AMGのそれに劣ること24psとなる。SクラスやCLクラスに比較すればボディ重量が軽いことから、これで十分と考えたのか、いずれにしても、このエンジンが本来持つポテンシャルを十分に発揮させているわけではない。それでも、パワーウエイトレシオをチェックすると、たった3.86kg/ps! この机上の計算でもその速さは分かる。
 しかしながら、最高速は自主規制の250km/hにとどまる。この最高速は、実に簡単に出た。もし、足枷を外したなら、トップスピードは一体どれほどのものになるのか。おそらく、300km/hに限りなく近いだろう。今回ほど、この自主規制を恨めしく思ったこともない。
 その圧倒的なパフォーマンスは、W124ベースの、あの有名な、AMG史上でも燦然と輝く`ザ・ハンマーcの再来を思わせるものだったのだ。
 冒頭から、AMGの最大の魅力であるエンジンパフォーマンスに関わる部分をリポートしてしまったが、このクルマの魅力は、もちろんこれだけにとどまるわけではない。
 
  最高出力が476ps/6100rpm、最大トルクが71.4kg-m/2650〜4500rpmとなる、スーパーチャージャー付き5.5リッターV8エンジン。回転上昇に伴い、音色を変えていくのが心くすぐるが、基本的にはAMGらしい野太いサウンド。
  バンパー下のエアインテークは拡大され、AMG独自の3分割タイプとなる。それにしても、オプティカルチューンはごく控えめだ。
  試乗の起点になったシュツットガルト空港にて。かつての“羊の皮を被ったオオカミ”は、つまるところハード関連がオオカミ系で、快適性を犠牲にしなければならなかったことを考慮すると、このE55AMGはまさに夢のようなクルマといえるのではないだろうか。
  ホイールは新デザインのスリットスポーク・タイプ。このフロントは8J×18(ET30)で、装着タイヤは245/40ZR18 サイズ。ブレーキは36mm厚の360mm径と大径。キャリパーは8ピストン!
  リアは9J×18(ET39)で、タイヤは265 /35ZR18サイズ。撮影のクルマの装着タイヤは、コンチネンタルのスポーツコンタクト2 MO。ブレーキは26mm厚の330mm径。もちろん、ベンチレーテッド。



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