このなんとも不思議なスタイルのクルマは、その名を“ホンダ・エレメント(ELEMENT)”という。日本でブレイクしつつある「モビリオ」や「ステップワゴン」などと同一のスタイリングコンセプトを持つモデルだが、決定的に異なるところは、サイドドアを保持するセンターピラーがないことだ。しかも、観音開きとなる側面後部のドアは、前側ドアを開かないと同時に開けない構造になっている。これは、アメリカのピックアップトラックなどによくある形式だ。床面は低く、前席の先までフラットだから、シート下が大きく開いていることと相まって、使い勝手はすこぶる良い。後部座席は側面に折り畳むことができる他に、簡単な操作で取り外すことも可能。もはや、こうなるとクルマというよりも、移動する道具というべきだ。
 シャシーコンポーネンツやエンジンなど駆動系はアコードのものが使われており、性能的な余裕も十分なものとなっている。機能最優先のインテリアデザインは、一種独特の雰囲気を醸し出しており、実用的なクルマに対する新しい提案といえる。
 外見の不思議さに比べて、走りの性能はかなり高度なもの。気になるのは、センターピラーがないことによるボディ剛性の不足だが、ワインディングロードを走ってみたところ特に剛性不足は感じられず、各部の軋みやスカットル・シェイクなども皆無だった。こうしたクルマだから、遮音材などは最小限しか使われておらず、エンジンの騒音やハーシュネスの遮断はイマイチの感はあるが、そんなことを云々する種類のクルマではないから、あまり欠点とはならないはずだ。いわば、セルフカスタマイジングのベースとして捉えるのが順当なモデルなのだろう。ボディカラーや内装にあまり派手な組み合わせがないのも、メーカーがその辺りをよく分かっているからなのだと思われた。将来的には、4WDモデルなどもラインナップされるというから楽しみである。
 日本では単なる奇妙なクルマで終わりかねないモデルも、アメリカの空気の中では魅力的なツールとして見えるから不思議である。日本市場へも導入すれば、相当な人気者になることは間違いない。


  HONDAELEMENT EX
■全長/全幅/全高(mm)
4229/1816/1880
■ホイールベース(mm)
2576
■車両重量(kg)
1555
■エンジン種類
直4DOHC 16V
■排気量(cc)
2354
■最高出力(ps(hp)/rpm)
162(160)/5500
■最大トルク(kg-m(lb-ft)/rpm)
22.3(161)/4500
■トランスミッション
4AT
■サスペンション(F:R)
ストラット:Wウイッシュボーン
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:ディスク
■タイヤ(ホイール)
P215/70R16
※上記スペックは本誌発売当時の値です。
 

アウトドアライフを快適に送るためのツールであるエレメント。移動の道具と割り切って、走行性能をウンヌンすべきではないかもしれないが、意外やシャキシャキと走る。シャシーはCR-Vが基本。ホイールベースを縮め、前後トレッドを広げている。
  搭載エンジンはDOHC2.4リッターのi-VTEC。最高出力は160hp(162ps)、最大トルク161lb-ft(22.3s-m)。約1.5トンのボディを過不足なく走らせる。
  サイドの前後ドアを開けると、こんなに大きな開口部が現れる。フロントドアは78度、リアは90度の開口角度を持つ。かさばるアウトドアツールの出し入れには非常に便利。シート表皮は防水ファブリックだ。
ライトトラック的感覚を出すためだろう、リアゲートは上下分割タイプ。リアシートは、バックレストを倒してクッション部とほぼ水平にすることで、比較的簡単に、ご覧のようにサイドに上げておくことができる。広くフラットなフロアは、耐久性と防水性を求めウレタンコートを施している。
  サイドのリアドアは、フロント側が開いていなければ開けられない構造。フロント用のシートベルトがここに組み付けられる。
  ダッシュボード・デザインも、メーターこそ3連メーターとして遊び、カラーコーディネートも楽しんでいるが、全体には機能重視タイプ。シボは幾何学タイプ。
  そのデザインは斬新だが、どこかノスタルジックな雰囲気もある。全長4229mm、全幅1816mm、全高1880mmもあって、見た目の印象以上に大柄。さて、日本ではどう受け止められるか。
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