LANDROVERランドローバー・レンジローバー
RANGE ROVER

史上最高にして最強のオールラウンダー

初代レンジローバーは、1970年に登場した。
4輪駆動車ならではの高い走破性と、乗用車並みの快適性で当時、羨望の的となった。
2代目は'94年にデビュー。
さらなる高級化を図り、そのステータスは不動のものとなる。
そしていま、第3世代の最新型が上陸。
きっと伝説はもうしばらく語り継がれることだろう。


リポート|吉田 匠|T.Yoshida  フォト|柏田芳敬|Y.Kashiwada
オンロードの走りは高級サルーン並み!

 かつて「4WDのロールス・ロイス」なる異名をとっていたレンジローバーが、第3世代の新型に生まれ変わったのは、2001年の冬のことだった。
 そのニューレンジローバーの新次元のオンロード性能と、これまでのモデルにも劣らぬオフロード性能をアピールするべく、ランドローバー社は真冬のスコットランドに世界中からプレス関係者を招いてワールドプレミアを開いた。実は、私もその壮大な舞台でニューレンジを走らせ、その素晴らしさに舌を巻いたジャーナリストのひとりなのだった。
 コンセプトやスタイリングの面において根底にはランドローバーらしさを維持しながらも、開発段階の少なからぬ期間がローバーおよびランドローバーがBMW傘下にあった時期と一致しているため、BMWの影響も随所に感じられるというのが、新型レンジローバーの大まかな印象だろう。
 ニューレンジの魅力のひとつはそのボディスタイリングにあるが、チーフデザイナーのドン・ワイアットによれば、インスピレーションの元は初代のクラシック・レンジと、リーヴァに代表されるパワーボートにあるという。
 角張った形状のボンネット、ミニとも共通するフローティングルーフ、2分割テールゲートなどがクラシック・レンジから引用した造形で、ヘッドライトとフロントグリルの関係、6ライトのウィンドー配置、縦長のテールライトなども、初代からの引用例だ。一方パワーボートからは、スピード感と力感に溢れるプレゼンス、つまり存在感を取り入れたという。
 いずれにせよ、単なるレトロに陥ることなく、全体としてはモダンな造形に昇華しているところが、このデザインの魅力である。
 しかもニューレンジローバーは、インテリアがまた外観に劣らず魅力的だ。歴代レンジと同じく、ウッドパネルとレザーをふんだんに使った豪華な空間ではあるが、ダッシュボードの造形はいわゆる英国車の伝統的手法を踏襲したデザインとは一線を画している。ウッドを大胆に縦方向に配置した新型のダッシュは、ヨットのキャビンや高級オーディオなどからヒントを得たものだという。
 このインテリアは好みの分かれるところだろうが、私は魅力的なデザインだと思う。特にカタログなどでメインにフィーチャーされている、明るいチェリーウッドを使った室内の雰囲気がいい。
 しかし、ニューレンジのウリはデザインだけにあるのではない。その内側に隠されたメカニズムもすべてが新しいのである。
 まず、これまではフレームと別体だったボディが一体式の強固なスチール製モノコックになり、そこに取り付けられるサスペンションも伝統的なコイルスプリングによる前後リジッドアクスルから、フロントがマクファーソン・ストラット、リアがダブルウィッシュボーンの4輪独立懸架へと激変した。しかもそれを、電子制御のエアスプリングと組み合わせる。
 エンジンも一新された。これまでのOHVローバーV8から、ぐっとモダンなDOHC32バルブのBMW製V8へと変更されたのである。排気量は4.4リッターで、286ps(210kW)のパワーと44.9kg-m(440Nm)のトルクを発生、デュアルレンジ作動の5段ATと組み合わせられる。
 以上が主要メカニズムの概要だが、ニューレンジローバーはボディサイズも拡大され、全長4950×全幅1955×全高1865mmの巨大なクルマになった。
 したがって車重もかなりのヘビー級で、最上級仕様たるVOGUE(ヴォーグ)では2500kg、やや装備の簡素なHSEおよびSEでも2420kgに達する。
 そのニューレンジローバーがいよいよ日本でも発売が開始されて、富士の裾野で最上級モデルVOGUEの試乗会が開かれた。
 ちょっと高めのキャビンに乗り込んで周囲を見回すと、視界は良好で、ボディサイズは大きくなっているがステアリングは先代より切れるから、使い勝手は心配するほど悪くなさそうだ。5段ATをDレンジに送ってスロットルを踏み込むと、車重2.5トンのボディが思いのほか活発に動き出す。
 試乗は主に山中湖周辺で行なったが、すでに夏の気配が濃厚なリゾートゆえクルマが多く、オンロードでの性能を存分に発揮できる状況にはなかった。そこで真冬のスコットランドでの走りを思い出してみると、ニューレンジはスポーティな大型サルーン並みのハイペースを保って、カーブの多い、しかし信じられぬほど空いたカントリーロードを嬉々として駆け抜けてみせたのだった。
 ラック&ピニオンのステアリングと前輪独立懸架が、それ以前のクロカン様式とは次元の違う正確さで前輪の軌跡を定めてくれるし、サスペンションも思いのほか締まっていて過大なロールを見せることがないから、速いコーナリングを安心してこなせるのだ。
 もちろん、ブレーキも巨体を止めるのに不足はなかった。
 ただし、スコットランドのように飛ばせなくても、ニューレンジのよさは理解できる。例えば手触りのいい革が巻かれたステアリングは、軽いけれども路面の情報を十分に伝えてくる典型的な高級車の感触を持っているし、脚は期待するほどソフトではない代わりに、フラットで上下動の少ない快適な乗り味を提供してくれる。
 さらにこの車重2.5トンのニューレンジが、オフロードでは魔法のジュウタンのごとく意のままに操れ、物理的に可能な場所であればどこへでも到達できることをスコットランドの大自然のなかで体験したが、今回の試乗会にも単純なオフロードコースが用意され、実力の片鱗を味わうことはできた。HDC(ヒル・ディセント・コントロール)のような電子制御の運転補助装置が必要かどうかは、いささか疑問があるが……。
 ところでニューレンジローバーには、最上級仕様のVOGUEが985万円、他の2モデルにも875万円および795万円というプライスが与えられている。
 これが高いか安いかは意見の分かれるところだが、私はクルマの内容からいって、それだけの価値は十分あると思う。ただし願わくば、この世界最高級のSUVとともにある生活をフルにエンジョイできる境遇にある人が、オーナーになって欲しいものだと思う。
 
  本国ではディーゼルも用意されるが、日本へはBMW製のガソリンV8のみが導入される。スペックは286ps/5400rpm、44.9kg-m/3600rpmと、BMW X5 4.4iとまったくの同数値。
  2分割テールゲートは、もはやレンジに欠かせない装備といえるだろう。下部は大人ふたりが乗っても耐えられる設計。ラゲッジスペースは535〜1756リッターと、若干拡大されている。
  オンロードでの走りは、重量級スポーティサルーンと比較できるレベル。V8ユニットもパワフルで、2.5トンという巨体ながらアクセルひと踏みで満足のゆく加速を披露する。
  「屋根」というイメージのフローティングルーフや、極端に持ち上げられたリアのオーバーハングなど、基本的な造形はオリジナルのレンジローバーを受け継ぐ。
  木と革という伝統的な素材を使いながら、高級クルーザーをイメージした大胆なデザインを採用する。ウッドパネルは写真のチェリーのほか、ウォールナットも用意する。

ゆったりとしたシートは快適そのもの。表皮はトップグレードのVOGUEがオックスフォード・レザー(写真)、HSEがブレンハイム・レザー、エントリーモデルのSEがファブリック。ベージュ、タン、ネイビーなど、インテリアカラーも豊富に用意される。

やや独特だった操作系は、一気にユニバーサルなものに。5速ATは「コマンドシフト」と呼ばれるマニュアルモード付き。ハイ/ローの切り替えやHDCのオン/オフは、その下のスイッチで行なう。


LANDROVER RANGE ROVER VOGUE
■全長/全幅/全高(mm)
4950/1955/1865
■ホイールベース(mm)
2880
■トレッド(前/後)(mm)
1625/1620
■車両重量(kg)
2500
■エンジン種類
-/V8DOHC32V
■排気量(cc)
4398
■最高出力(ps(kW)/rpm)
286(210)/5400
■最大トルク(kg-m(Nm)/rpm)
44.9(440)/3600
■トランスミッション
5AT
■サスペンション(F:R)
ストラット/エアSP:
Wウイッシュボーン/エアSP
■ブレーキ(F:R)
Vディスク:ディスク
■タイヤ(ホイール)
255/55R19(8J)
■東京標準現金価格
\9,850,000
問い合わせ先
※上記スペックは本誌発売当時の値、価格は税抜き価格です。



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