

Mercedes-Benz メルセデス・ベンツ
CLK240×CL55AMG

メルセデス・クーペ考:贅沢の21世紀的愉しみ方

4名が乗車できるサイズながら実際には一人、もしくは二人で乗ることがよしとされるクーペというクルマ。
過剰はすでに前世紀的美徳だがCLKはメルセデスが世に問う最新のクーペだけにそこに何があるのかを勘繰ってみるのも面白い。
そこでCL55AMGを連れ出し乗り比べながら少し考えてみた。

リポート|熊倉重春|S.Kumakura フォト|郡大二郎|D.Kohri
取材協力=ダイムラー・クライスラー日本
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メルセデスのクーペはまずCLありき。

世の中すべからく幹と枝がある。CLKの「K」はkurz(ドイツ語で短いという意味)の頭文字で、つまり短いCLということ。やはりメルセデスにとってクーペの王道はCLで、その普及型というか枝がCLKになる。これはスポーツカーにおけるSLとSLKも同じ位置関係だ。
クーペは本来きわめて贅沢なカテゴリーだから、メルセデスほどのメーカーが手がけるとあらば、CLが当然の答えには違いない。たしかにCLに乗ってみると、パーソナルカーとして求められる要素のすべてが、完璧以上に満たされているのがわかる。言い換えれば、飽食の極みでもある。
それも当然といえば当然で、CLのベースとなったのはSクラスセダンであり、5人を最高の居住環境と性能で運べる器なのに、それをクーペに仕立て直したのだから、贅沢さも余りあるほどだ。それだけにクーペとはいえ2ドアセダンとして立派に通用するほどリアシートも広いが、それをいっては意味が薄れる。そんなことは百も承知の上で、単なるプラス2くらいに扱うのがCLの乗り方だ。
たまたま今回このページに登場したのは、中でも最もスポーティな仕立てのCL55AMG(360ps)だが、もちろんノーマル系のCL500(306ps)でもCL600(V12で367ps)でも基本的な事情は変わらない。速く快適に走るための装備も完全なら、信じられないほど簡単に地平の彼方まで駆け抜けてしまえる性能も、すでに何回も紹介した通りだ。フームと深いため息とともに周囲のすべてを置き去りにできるパワー、何ら緊張なく崖っぷちのワインディングをかすめ去るフットワークなど、どこを突いても非の打ちどころがない。
しかもクーペでありドライバー自らが主人公として位置すると、知らず知らず世間を見下す気分になったとしても無理はない。これがビッグ・メルセデスの最大の魅力であると同時に、最も嫌われるポイントでもある。要はどちら側にいるかということだ。
しかし、これほどのクルマともなると、かえって「何もここまで」の感が伴うこともある。全長5m、ホイールベース2.9m、全幅1.9m近い巨体を純粋に個人用のみに使う罪悪感もなくはない。最低でも1200万円近く、最高なら1700万円という現実の問題もある。その対極として生み出されたのが「K」だ。
つまりCLKは、ベーシックなCクラスのコンポーネンツを利用して、より買いやすく日常的にも扱いやすく仕立てたものといえる。だから物理的にはCの延長でも、精神的にはCLの延長と見るべきだ。それはデザインに最も色濃く現れている。従来のCLKがデビューした当時は、ちょうどメルセデスが姿を激変させるきっかけの時期だった。そんな中でCLは、いかにも威圧感に満ち満ちた旧世代の象徴として君臨していたから、それを受け継ぐわけにはいかなかった。そこで独自の丸みを帯びたボディを与えられたわけだが、結果としてはまだまだ生煮えだったのは否定できない。クーペとしての軽快なプロポーションを求めながら、なおかつ実用的な室内スペースも確保しようと頑張ったため、特に重要なリアクォーターまわりが鈍重になってしまったのは惜しかった。
それに対して今度は、あくまでCLの伸びやかなラインを継承したため、横から眺めての窮屈さが激減している。もちろんCクラスベースだけに全長4.6m級の縛りがあり、斜め後ろからはCL並みの量感は演出できていないが、このサイズにしては無理の少ないまとまりといえる。やはりクーペはスマートさこそ命だ。
いや、見ようによっては、むしろCLよりクーペらしいともいえる。kurzには「濃縮された」という意味もあり、たしかにCLを干して水分を抜いたような引き締まり感があるのも事実だ。やはりCLほどのサイズとなると間延びも避けられない。実際面でも、たとえば非常に大きなドアなど、ボディ各部の支点間の距離が長いので、そのぶん剛性を感じにくかったりする。SクラスやCLがオートクローザーを持つのも、単なる贅沢のためでなく、そんな欠点を隠す目的があるはずだ。
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絶対性能の差こそあれ、CLKは間違いなくCLの走りのテイストすべてを受け継いでいる。その上で、クルマとの一体感は明らかにCLを上回るのだ。 |
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