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新開発のガソリン直噴エンジンはいったいどこがスゴい?
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BMWテクノロジーフォーラムリポート part1
新開発のガソリン直噴エンジンはいったいどこがスゴい?

BMWジャパンは、最新の技術を報道関係者に公開するテクノロジーフォーラムを開催。ここでは5つの講演のうちのひとつ、ガソリン直噴エンジンにおいて高出力と高効率を両立したとされるスプレーガイド式燃焼システムについての技術的特徴を紹介する。
[2007/05/28]

欧州メーカーが近ごろ積極的に展開するガソリン直噴エンジン

みなさんは直噴エンジンと聞いて何を思い浮かべるだろうか?おそらく最初に浮かぶのは、1990年代の半ばに登場した三菱のGDIやトヨタのD-4あたりだろう。この当時のガソリン直噴システムは、インジェクターからシリンダー内に高圧の燃料を直接噴射し、吸気ポートからのスワールやタンブルといった渦流と混ぜ合わせ成層(層状)化したところに着火、リーンバーン(希薄燃焼)を実現するもの。ポンピングロス(シリンダーへ吸気するときおよび排気するときに発生するエネルギー損失)を低減するとともに低燃費性を売りにしていた。

しかしながらリーンバーン領域が低回転時の狭い範囲内だけに限られ、高負荷時には結局燃料をリッチ(濃い)側にすることで出力を稼いでいたために、スペック上は低燃費をアピールしていても実用燃費では目ざましい向上が見られず、さらにリーンバーン領域ではNOxが多く発生し、触媒のみで排ガス規制に対応することが難しくなったこともあり、徐々に姿を消していってしまった。

その後直噴エンジンは、コモンレール式の開発に合わせて、ディーゼルエンジンの代表的技術へと変化を遂げ、直噴=ディーゼルというイメージが定着。しかしながら最近の欧州メーカーではアルファロメオのJTS、VW、アウディグループのFSIなど、ガソリン直噴エンジンを採用したモデルが続々と登場させるなど、にわかに注目され始めた。そして昨年BMWも3シリーズのクーペ335iにツインターボを組み合わせたガソリン直噴エンジンを搭載、さらにはNAの3.0リッター直6、1.6リッター直4ユニットにも直噴システムを採用するに至ったのである。

これまでのガソリン直噴エンジンとどこが違う?

このうち、今回のテクノロジーフォーラムでは、本国ではすでにマイナーチェンジ後の5シリーズ535iに搭載されている新開発の直列6気筒エンジンと、同じくマイナーチェンジ後の1シリーズ120i&118iに搭載済みの直列4気筒エンジンについての技術的特徴とポテンシャルについて紹介された。スペック上では、例えば新型の3.0リッター直6における最高出力は272psで、最大トルクは32.1kg-mと、従来の3.0リッターエンジンと比較して、14psと2.kg-mのパワー&トルク増加を達成しつつ、燃費が24%も向上しているなど直噴システムによる効果は大きいようだ。

この新開発の直噴エンジンの特徴を述べる前に、右のグラフにある、熱効率に対する圧縮比と空燃比の関係を説明しなければならないだろう。理論上では、エンジンの圧縮比を上げればあげるほど、そして空燃比をよりリーン(薄く)にすればするほど、熱機関としての効率は向上、すなわち燃費は向上する。BMWの直噴ユニットは、一般的な4バルブエンジンが、圧縮比10強、そして空燃比12前後(λ=0.8)で混合気を生成しているのに対して、圧縮比を12.0まで高めつつ、空燃比の基準値を排気ガスが浄化しやすい理論空燃比(燃料1に対して空気14.7)となるλ=1(ストイキオメトリー)とし、熱効率を高めることで燃費性能を向上することをコンセプトとしている。

BMWでは今回の新型ガソリン直噴エンジンを開発するにあたり、従来からのスワールやタンブル流などで燃料を成層化する希薄燃焼エンジン(ウオール/エアガイド式と呼ぶ)とは異なる、スプレーガイド式燃焼システムと呼ばれる方式を新たに採用した。このシステムの最大の特徴はインジェクターに200barという高圧で燃料を噴射し、しかも極めて高い精度の噴射が可能なピエゾ式を使用し、それをシリンダーに横方向からではなくスパークプラグのすぐ横に配置したことだ。

ピエゾ式インジェクターがこのシステムの最大のカギ

これまでのガソリン直噴エンジンで使用されていたインジェクターは、ソレノイド式と呼ばれる電磁弁を備えたタイプが主流であったが、新開発のスプレーガイド式直噴システムでは、このピエゾ式インジェクターを採用したことにより、ESUからの信号に対して、インジェクター先端のニードルが極めて短時間に連続して反応、それゆえ非常に細かな噴射量とタイミングの制御ができ、クリーンで効率の良い燃焼が可能となった。ちなみにこれと同様のシステムがメルセデスベンツCLS350CGIにも搭載されている。

さらにインジェクターの周りはオープンスペースになっており、燃料を安定した円錐型の噴霧として供給することも可能。ウォール/エアガイド式では、噴射した燃料がシリンダーの壁に沿って流れてしまう性質を持つことにより、これが燃料損失の要因となっていたが、そのデメリットを解消することができたわけである。インジェクターからは、通常1回の燃焼行程につき2回(もしくは3回)燃料が噴射されるが、スパークプラグからの距離が離れるにつれて円錐状に広がっていく混合気中に含まれるガソリンの割合が低くなるため、着火するタイミングに合わせて濃い混合気を噴射。そこから順次着火が伝播していく、リーンバーン(希薄燃焼)を形成しているのだ。

しかもピエゾ式インジェクターは広い作動域全体を通して高精度の混合気を生成することができるため、リーンバーンモードを高回転、高負荷域まで維持することが可能となっている。また従来のガソリン直噴ユニットでは、吸気ポートに渦流を発生させるためのフラップ(コントロールバルブ)を設ける必要があり、これがエンジン出力を消耗し、効率と高出力の低下を招いていたが、スプレーガイド式ではその必要がないため、高出力、高効率、すなわちパフォーマンスと低燃費を実現することができるのだ。

バルブトロニックとのすみわけはどうなる?

BMWではこのスプレーガイド式直噴システムの採用により、一般的な4バルブエンジンと比較すると熱効率が向上するとともにガス交換損失も低下、また混合気が生成する成層状態の改善により、ウォール/エアガイド式の直噴ガソリンよりも、不完全燃焼が減少しており、実効率も高まっているという。肝心なドライバビリティに関しても、ECUがインジェクターの噴射制御を、混合気が「均質」になる状態と、リーンバーンを形成する「成層」、そして両方の中間レベルの「均質-成層」といった3タイプの動作モードを同時に算出しており、アクセルペダルを踏んだ際のドライバーのトルクの要求に対してレスポンスよく反応してくれる制御がなされているようだ。

このようにして出力、性能、レスポンス、そして燃費といった特性において、高いレベルを達成しているスプレーガイド式直噴エンジンだが、BMWではすでにバルブトロニックという革新的なバルブコントロールシステムをNAエンジンの多くのモデルに導入している。データだけを見ても、動力性能や燃費に関して、新開発の直噴エンジンのほうが勝っているようであるが、今後全てのモデルに転用していくのかが興味のあるところではある。

しかしながらこの直噴エンジンは、最大のキーとなるピエゾ式インジェクターが非常に高価で、しかもリーンバーン領域で発生する排気ガスに含まれるNOxを浄化するシステムにもコストが掛かることから、例えば高級グレードに搭載するなど、そのあたりの住み分けをしていくようである。さらには、使用するガソリンの硫黄分の含有量が多いと、シリンダー内の層状燃焼がしにくくなる、といった問題点もあるという。そのためもともと自動車燃料に含まれる硫黄分の割合が多い我が国でも、この直噴システムの効果を最大限に発揮できない可能性が考えられる。

とはいえ、ガソリンエンジンの高出力、高効率化にまた一歩進んだ技術をプレゼンテーションしたBMWの直噴システムは高い評価に値する。そして今後フォロアーを生み出していくことになるだろう。

Report:相澤隆之

※昨日アップしたエリックシュネーマン氏の写真が間違って掲載されておりました。ここにお詫びして訂正いたします。
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