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コラム

有名ブランドが売り買いされる時代(4/5)

世界のパワーブランドと肩を並べたか
有名ブランドが売り買いされる時代(4/5)

レクサスは知名度と信頼度については盤石であるといえるかもしれない。しかし、レクサス・ブランドに対して「何か」足りないと感じてしまう、この気持ちは何だ?
[2008/04/24]

クルマへの想いが強いほど沸き起こるモヤモヤ

ここまでのところでレクサスが「知名度」と「信頼度」ではほぼ揺るぎない地位を獲得したことがわかる。もう盤石か?そう思えるほどこれらの分野でのレクサスは強い。でも読者諸兄はレクサス・ブランドに対して「何か」足りないと感じているのではないか。よくわからない「何か」が。筆者もそうだ。クルマが単なる実用品でなく、特別なものとしての想いが強い人ほどそういった印象を受けるのではないか。この説明が難しいモヤモヤ感はどこからくるのか…。ブランド力の3つ目の要素である「魅力的な特徴」の難しさの秘密がここにあるのかもしれない。

このモヤモヤ感を少しでも解消してもらおうと、まわりの「有識者」に尋ねてみることにした。まずブランド力があると言われている老舗メーカーに関する印象をユーザーに聞いてみた。すると「運転が楽しい」「匠の技」「エレガントな佇まい」「歴史と伝統が感じられる」「独自のスタイル」などという評価がかえってくる。特にドイツメーカーに対しては昔からアウトバーンで鍛えられた「本物の技術に裏打ちされたクルマ作り」というものを感じることが多いようだ。

次にレクサスに対する印象をきいてみる。ところが「すごく静かで乗り心地がよいクルマ」というイメージが語られることがあるが、あとの評価は「安心感」に代表されるような「信頼度」に関するものが多い。「信頼度」に関するイメージはむしろ老舗ブランドを凌いでいる印象を受けた。それはそれでスゴイことに違いない。これだけ「信頼度」が高いブランドは他にはトヨタくらいかもしれない。でもやはりそれだけではクルマとしては物足りない。「知名度」や「信頼度」以外の「何か」がないか。それがモヤモヤとした、よくわからないものでもいいから何か出てくるかと期待した。残念ながら今回は何も得られなかった。

「魅力ある特徴」は正体が不明

前述の欧州老舗ブランドに対する印象のほとんどが人間の感覚に訴えるエモーショナルなものだ。つまりはっきりと定義できないものばかり。「運転が楽しい」といっても何が楽しいかは十人十色。「独自のスタイル」に至ってはもっと説明が難しい。だからモヤモヤ感がつきまとう。これが「魅力的な特徴」の正体のようだ。「よく知っている」(知名度)や「壊れない」「安心できる」(信頼度)といった要素は分かりやすく、把握しやすい。「よく知っている」や「壊れない」などのように、場合によっては統計的に測ることもできる。前述したJD Powers の初期品質調査などがそれだ。このように、このモヤモヤとした「魅力的な特徴」はブランド力に必要な3つの要素のうちの一つであり、最も実現が難しい。大事だけど、モヤモヤとしていてわかりにくく、達成も難しい。「知名度」と「信頼度」と合わせて三つを併せ持っているパワーブランドはやはり伊達ではない。

以上の考察からとりあえず「知名度」と「安心度」を「わかり易い」項目、「魅力的な特徴」を「モヤモヤした」項目とする。レクサスは「わかり易い」点では抜きん出ているものの「モヤモヤした」項目では老舗ブランドに及ばないようである。

ここにブランド力の難しさがあるように思う。「わかり易い」項目は企業努力で頑張れば達成できるかもしれない。でもモヤモヤしたものは企業として目標にしにくい。例えばモヤモヤを統計的に測って商品企画やマーケティングに反映しようとしても難しいに決まっている。このモヤモヤとしたものをつかみ取るための手順書はない。きっと長い歴史のなかで、特定の人間が強い意志をもって育むものなのだろう。そこには偶然が作用するかもしれない。でもその努力が報われ、人々に受け入れられるようになるとそれが途方もない財産となる。築きにくい財産。だから自分でやるのが難しいと思うと他社が築いたものをカネで買う。約20年前、大枚250億ドルを払ってジャガーを買収したフォードなどがその道を選んだ。

繰り返すようだがレクサスにはまだ「モヤモヤした」ものが足りないようだ。それを表すもう一つの指標が車両価格だ。プレミアム・ブランドの主戦場であるアメリカでの価格を比較してもそれがわかる(表)。ミュンヘンやシュツッツガルトのメーカーの同じクラスの商品同士を比べるとどうなるか。レクサスの人気車種といえばRX、ベンツといえばSクラス、BMWの代表は3シリーズ。ということでこの3つのセグメントでの価格を比較してみた。いずれの場合もレクサスの価格が、よく言えば「お買い得」、批判的に言うと「弱気」。この価格差が「モヤモヤした」ものの有る無しを表している物差しかもしれない。ブランド代が取れるということは会社の収益に影響する。儲かればその儲けを次の商品や技術に投資できる。そうすることによって経営が安定するのだ。

文:白洲輪太郎
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