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試乗インプレッション

フォルクスワーゲン パサート
Volkswagen

「小さなエネルギーで大きなものを動かす」TSI戦略を地で行く
フォルクスワーゲン パサート

パサートよりもうひとつ上の車格のクルマでもサラッと走らせてしまうトルクフルで粘り強いエンジンが魅力。
[2008/03/10]

VWの積極的なTSI採用

可能な限り小さなエネルギー源で、可能な限り大きなものを動かす。

VWが推し進めるTSI戦略の原点は言葉にすればそういう、至極シンプルな発想に基づいている。直噴の1.4Lエンジンに2つの過給器を組み合わせ、緻密な燃焼噴射マネジメントを用いて2L超級のトルクを引っ張り出す。それに組み合わせるミッションを多段化してカバーレンジを広げつつ変速のステップ比を小さくすることで、常時使用するエンジンの回転域を引き下げる。排気量至上の価値観ではとても動かせたものではないというトゥーランやゴルフを軽々と走らせつつ、1.4Lなりにきちんと低燃費を誇ると。その技術は日本でも高く評価され、TSIは順調に数を増やしている。

今までのTSIで唯一シンプルでないところといえば、低回転のトルクを補填するコンプレッサーとそこから上を受け持つターボチャージャーの2つをエンジンルームに収めなければならないことだった。コスト的にも構造的にもこれは好ましい話ではない。そこで投入されたのが直噴1.8Lをターボで過給するシングルチャージャーモデルというわけだ。同門のアウディでは一足早くA3スポーツバックに搭載されていたこのエンジンを、一回り以上は大きいパサートに組み合わせてきたというところがある意味、VWらしい。

走り味、価格共に一番美味しいグレード

「TSIコンフォートライン」と名付けられたこのクルマは、パサートの中でももっともベーシックなモデルだった2.0FSIの後継となる。エンジンスペック的には160ps・25.5kg-mと、前型比で約10ps・5kg-mの向上となった。特筆すべきはこの分厚いトルクを1500rpmから発揮するということだ。ターボチャージャーのカバーレンジの広さがこの数字からも伺える。ちみなに組み合わされるミッションはトルクコンバーター式6速AT。日本規格の10-15モード燃費は2.0FSIの11.0km/Lに対して10.8km/Lと、殆ど変わっていない。

やはり走り始めてすぐにわかるのは、とにかくエンジンがトルクフルだということだった。高速道路はもとより一般道の流れでも、ギアは燃費重視で低回転を維持したままトントンと6速に駆け上がっていくが、1.5t近い車体を引っ張らせておきながら、微妙な加速にシフトダウンを要さないほどに粘り強い。アウディA3に搭載された時にはその力強さに驚いたが、恐らくこのエンジンならばパサートよりもうひとつ上の車格のクルマでもサラッと走らせてしまうだろう。

この新型エンジンは中~高回転域にかけてのパワーも申し分なく、そのデリバリーも極めてフラットだ。パワー感自体は5000rpmを超えるとやや落ち込む印象ながら、6000rpm付近までシュンと軽快に吹け上がる回りの軽さがそれを巧くフォローしてくれる。エンジンのサウンドやフィーリングに関しては特筆するようなことはないが、それはVWに期待する魅力に対するネガになるものではない。

先代にあたる2.0FSIが備えていた包容力に溢れた乗り味はそのままに、扱いやすいパワーとトルクをしっかり上乗せしたTSIコンフォートライン。お得感という意味でも3万円の価格アップは十二分に吸収する、パサートの中でももっとも美味しいグレードだと思う。唯一の心配は上位にあたる2.0T FSIを食ってしまうのではないかということくらいで、ライバルに対しても身内に対しても商品力は高い。

Report:渡辺敏史
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