90年代、ポルシェのグループCカーは圧倒的な強さを誇った。そのサーキットの王様を公道仕様にしてしまった猛者がいる。ポルシェのワークスドライバーも勤めたバーン・シュパンである。日本に数台生息するというバイザッハの禽獣を紹介しよう。
ポルシェを熟知する男が作った
時折、レーシングカーベースのロードカーが作られたというニュースを聞く。本当に時折なのだが、性能に憧れるクルマ好きにとってはまさに夢のようなクルマである。
かくいう筆者もそのひとりで、子供の頃、自動車専門誌で見たマクラーレンM6BGTには驚かされた。当時CAN-AMで、圧倒的な強さを誇ったマクラーレンM6をベースに、自分のためのスーパースポーツを作ることのできたB・マクラーレンの立場が羨ましかった。
同じ頃、ローラT70マークⅢにナンバーを付けて走っているアメリカ人がいる、という話も聞いた。レーシングカーが最高のクルマと思い込んでいる子供にとって、レーシングカーベースのロードカーという存在は、メーカー製スポーツカーの何十倍も魅力ある存在だった。とくにマクラーレンの場合は、作った本人がF1ドライバーでエンジニアの資質にも恵まれた人物ときていたから、これはもう完全にスーパースターを見るようなものだった。
こうした思考は何年経っても変わらないもので、1994年のル・マンで勝ったダウアー・ポルシェを見た時にも、これはすごいクルマだと魅せられたものである。なにしろベースは962だ。最強のグループCカーが母体となっている。性能本位の見方をすれば、どんなスーパースポーツでもかなうワケがない、そう思えたものだ。
だが、この時うかつにも、もう1台の962ベースのロードカーを忘れていた。それがここで紹介するシュパン・ポルシェ962CRである。
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