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試乗インプレッション

魅惑のラグジャリースポーツ マセラティ・クワトロポルテ
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魅惑のラグジャリースポーツ マセラティ・クワトロポルテ

マセラティが誇る最上級モデル、クワトロポルテ。ピニンファリーナが手掛けた美しい4ドアボディに400psエンジンを組み合わせた豪華サルーンに、清水和夫が試乗した。
[2005/06/27]

前席はスポーツカー、後席はリムジン

これほどまでに妖しいクルマは世界中を探しても見付けられない。誰が見ても超高級車とわかる凛としたたたずまいでありながら、その低く構えたプロポーションはスポーツカーのようにも見える。このクルマは、後席が特等席のラグジャリーセダンなのか、それとも運転を楽しむスポーツサルーンなのか? マセラティ・クワトロポルテの性格を外見から探るのは難しい。

クルマに乗りこむとまず最初に感動するのは、イタリアの伝統工芸品を思わせる上質な造り込みだ。デザイン性が高く、使われている素材も上質なので、これなら誰を乗せても優越感に浸れそうだ。しかもリアシートは十分なスペースが確保されている上に、後席センターコンソールには助手席スライド用の操作ボタンが付いているので、後席から助手席を前の方に追いやることもできる。これならリムジン用途としても十分通用するだろう。

しかしドライバーズシートに腰を掛けると、その雰囲気は紛れもなくスポーツサルーン。本来オートマチックのシフトレバーがある場所には、それをうんと小さくしたようなT字レバーがごく控えめについている。シフト操作はそのレバーではなく、ステアリングコラムの両脇から生えているパドルスイッチによって行う。T字レバーを使うのはギアをバックに入れる時だけで、その他の操作はすべて“ステアリングパドル”によって行う。

オートマチックは似合わない

ステアリングパドルは右側がシフトアップ用、左側がシフトダウン用で、両側のパドルを同時に引くとニュートラルにシフトされる。この要領はフェラーリとまったく同じだ。ベースとなっているメカニズムはマニュアルギアボックスで、足元にはアクセルとブレーキの2つのペダルしかない。マセラティがMDS(マセラティ・デュオ・セレクト)と呼ぶこの2ペダル・マニュアルの最大の特長は、オートマチックよりも素早い変速を可能とし、ダイレクトな運転が楽しめることだ。

ニュートラルから右側のパドルを手前に引くと、コツンという軽いショックが伝わってきて、ギアが1速にエンゲージされたのがわかる。それを確認してからアクセルを踏み込むと、まるでレーシングカーのような乾いた音を響かせながら、メーターの針を一直線に跳ね上げる。もの凄いパワーだ。しかもちょっと踏んだだけで間髪入れずに回転を上げるレスポンスを併せ持っている。

クワトロポルテが搭載するエンジンは、フェラーリの息が掛かった4.24リッターV8である。最高出力は401ps。そのパワーをもって、全長5mを超える優雅なボディを静止状態からわずか5.2秒で走らせるのだから、アクセル操作はスポーツカーを操る時の心構えで挑みたい。クラッチ操作を自動化した「MDS」は、その素早いシフトダウンと比べると、シフトアップ時には一瞬もたつくような間を見せるが、その直後に強烈な加速感が襲ってきて、すぐに遅れを取り戻してしまう。

ドライバーを選ぶ

しかもクワトロポルテのパワーユニットが優れているのは、スペック面だけではない。エンジンの搭載位置がボンネット後方にある、いわゆる「フロントミドシップ」に仕上がっているのだ。このレイアウトを実現するために、トランスミッションはリアアクスル手前に置いた「トランスアクスル」とし、前後の重量バランスを均等化。これが優れたハンドリングを生み出している最大の秘訣だろう。ただフェラーリのエンジンを積んだだけではなく、搭載方法にも工夫が凝らされているのだ。

実際、巨体の持ち主であるにもかかわらず、ワインディングを苦手とはしていない。わずかにステアリングを切るだけでノーズがスパッと向きを変える。この前後重量バランスの良さとパワフルなエンジン、伝達性能に優れる2ペダルマニュアルのコンビネーションは、自由自在のコントロールを可能にする。この美しいボディからはとても想像付かないかもしれないが、その気になればドリフト走行も楽にこなせるスーパーハンドリングマシンなのだ。

というわけで、冒頭の後席が似合うラグジャリーセダンなのか、運転を楽しむスポーツサルーンなのか、という問いに対する答えが浮き彫りになってきた。クワトロポルテの本質は、ドライバーを熱くさせる“4ドアスポーツカー”だ。もっとも内装が豪華でスペース的にも十分なゆとりがあるこのクルマなら、後席でゆっくりくつろぐのも悪くはない。ただしその場合、ドライバーには上手なアクセル操作をしてもらわないと、ぐっすり眠ることはできないかもしれない。

Report:清水和夫
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