イタリアはもちろん、ヨーロッパ中が待ち望んでいたと言っても過言ではない新生フィアット500ことチンクェチェントがデビューした。昨年のオリンピックの興奮さめやらぬトリノで開催されたメディア向けの試乗会の模様を、ル・ボラン編集長、吉田聡がリポートする。
新生チンクェチェントはオーバークオリティ!?
トリノの街を流れるポー川を舞台に開催された盛大な発表会から一夜明けた7月5日、僕はトリノ・オリンピックで荒川静香さんが金メダルを獲得したアイスアリーナにいた。ここでもまた、世界中から大勢のプレスを集めてのプレゼンテーションが行なわれ、その直後からグループごとにお隣のスタジアムで試乗車をピックアップし、テストドライブへ出かけていくという段取りだ。
しかし、我々日本人プレスは試乗開始が午後4時からと最も遅いグループだったため、アイスアリーナのエントランスに置かれたチンクェチェントを囲んで、なんとなく時間をやり過ごしていた。でも、それがかえって、実車をじっくりと観察できる絶好の機会にもなったのだ。
まず、初めて間近に見て触って唸らされたのが、ドアを開閉した時の音と感触。“カチッ”“ボムッ”と、いかにも工作精度と密閉度が高そうなそれは、明らかにワンクラス上のクルマを思わせるもので、予想どおりの展開にちょっと嬉しくなる。というのも、この新しいチンクェチェント、見た目の品質感が想像以上に高かったからだ。
ボディ回りのどこを見ても、ラテン系の小型車にありがちな、割り切った粗さがないどころか、塗装のノリまでもかなりいい。インテリアもまた、スイッチ類のタッチひとつとってもスムーズでどこか滑らか。“バンッ”とか“パコン”といった低級な音と感触が、どこからも伝わってこない。
もちろん、クロームのドアハンドルはランチア・イプシロンのそれを流用しているし、室内にもどこかで見かけたパーツが確認できるなど、安価に設定せざるを得ない小型車ゆえの徹底したコスト管理が図られてはいる模様。しかし、そんなことが気にもならないほどの確かな作りは、本当にパンダやセイチェントなどと同じポーランド工場で生産されたものなのか、と疑ってしまうほど。小さな外寸と広い室内空間を両立するべく、エンジンをリアエンドに搭載するといった合理主義の元に誕生した初代チンクェチェントに対し、今度はクラスを超えた品質感で、まず見る者をハッとさせる。
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