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試乗インプレッション

BMW 135iクーペ
BMW

優れた動力性能のプレミアムコンパクト・スポーツ
BMW 135iクーペ

BMWのラインナップでは最小の四輪車となる1シリーズ。5ドア/3ドアに加え、新たにクーペがそのラインナップに加えられた。木村好宏氏による最新135iの試乗リポートをお届けしよう。
[2007/12/12]

ドイツではBMW1シリーズのプレミアム性が認められている

ゴルフに代表されるコンパクトカーにとり、室内やトランクの広さといった実用性は重要な項目だ。そして価格を抑える目的で、前輪駆動を採用する場合が多い。さらに台数を売らなければならないので、デザインは万人向けでコンサバに仕上げるのがこれまでの常識だった。

しかしBMWが2004年の夏に欧州市場に送り出した1シリーズは、ゴルフと5センチと変わらぬ小さなボディに後輪駆動、さらに好き嫌いがはっきりしたデザインを採用。また価格はエントリーモデルの116iでも、ドイツでは2万ユーロを超えている(ゴルフは同じ排気量で1万8000ユーロ台、これは日本でも同じで116iは295万円、ゴルフEは242万円と50万円もの差がある)。

ここで思い出すのはその一年前、2003年に登場したゴルフVである。自らプレミアム・コンパクトを標榜し値上げを敢行したが、ドイツ国内ではユーザーの不評であえなくエアコンを無料で装着する結果になってしまった。

BMW1シリーズはゴルフほどの台数を販売目標とはしていないが、エアコンをサービスすることなく(?)3年目にして45万台余りの販売記録を達成している。つまりBMW1シリーズはゴルフとは違ってプレミアムとみなされ、それなりの対価が許されたわけである。もっともBMWの本音としては、FFプラットフォームはミニにしか用意されておらず、FRでやらざるを得なかったという事情もあるが……。

実際のところ、BMWはここ数年かなり冒険的な試みを行っており、2001年から2006年までの開発コストがプラス53パーセントであるのに対して、利益率はマイナス24パーセントへと低下している。まぁそれでも販売台数は伸びており、社長のDr.ライトホーファーは2015年までには180万台を販売すると意気込んでいる。1シリーズはこの構想において、実は重要な役割をするはずである。2007年春には3ドアを加え、世界マーケットに合計で実に45万7000台余りを販売している。

さらにBMWはこの1シリーズのプレミアム性を一層高めるために、バリエーションの追加を始めた。彼らの考えでは、プレミアム・プロダクトとは個性的なユーザーの要求にも応えなければならないからである。その結果5ドアに続いて3ドア、さらに今回はノッチバックのクーペを発表したのである。

スタイリングは「02」のイメージを追求している?

2007年のフランクフルト・モーターショーで初公開されたこの1シリーズ・クーペは、基本的にはウエストラインから下はハッチバックと共通で、その上にクーペルーフをかぶせたものだが、リア部分を12センチ伸ばして独立したトランクを作ったために、意外なほどクラシックな印象に変わっている。BMWはこのトランクの延長についてリアエンドの造形が変わったためと説明しているが、おそらく1シリーズ・カブリオレのソフトトップ収納スペースを考慮したためではないかと推測できる。

ところでこのクーペは、主に北米マーケットを狙っていることが販売担当重役のクラウゼ氏から明らかになった。BMWはこれまで1シリーズを北米には輸出していなかったが、このクーペで初めてアメリカ進出を図っている。そのために改めてスモールBMWに対するマーケット・リサーチを行った結果、30年も前に人気を博した2002が、意外にもアメリカ人の心を捉えていたことが判ったのである。クーペのデザインではウエストのプレスラインがリアエンドにまで回り込み独特の雰囲気を強調しているが、これはまさに70年代にヨーロッパばかりでなくアメリカでもヒットした02シリーズを意識したものであるという。

かつてアメリカのデザイン・ワークス(BMWのデザインを行う子会社)の社長を務め、現BMWのデザイン・ディレクターであるエイドリアン・ファン・ホーイドンは「単なるノスタルジーではなく過去の遺産に対する新しい解釈で、エンスージャスティックな北米のBMWユーザーをターゲットにしている」と語ってくれた。

この1シリーズ・クーペは、デンマークのコペンハーゲンでプレスコンファレンスが、スウェーデン領ゴットランド島にある町ヴィスビー(VISBY)で試乗会が、それぞれ開催された。ちなみにこの12から14世紀に栄えた町はユネスコ世界遺産であり、日本では宮崎駿のアニメ映画「魔女の宅急便」に登場するコリコという町のモデルになった所である。実はホンダもFCXの試乗会をここで行っている。試乗コースはこの島をほぼ半周する合計200kmほどの一般道と、そのほぼ3分の2の地点にあるゴットランド・サーキットでのスポーツ走行を含んだものである。

ポルシェ・ケイマンを凌ぐ動力性能を誇る

試乗車はすべてが135iのM仕様で、ボディ関係ではオリジナルのMスポイラーをはじめとするドレスアップ・パーツと、およそ15ミリローダウンするMスポーツ・サスペンションが装着されている。タイヤとホイールは135iの標準装備品で、フロントが7.5J×18+215/40R18、リアが8.5J×18+245/35R18となる。

インテリアはスタンダードの1シリーズとほとんど変わらず、BMW流にあっさりとしている。ドライバー正面のナセル内の左側に280km/hまでのスピードメーター、その右隣には7000rpmから8000rpmまでがレッドゾーンのタコメーターが並んでいる。またスピードメーター内には燃料計そしてタコメーターは温度計がそれぞれ組み込まれている。

キー・ユニットをステアリングホイール右にあるスロットに押し込み、その上にあるスタート・ストップ・ボタンに軽くタッチすると、前方から軽い震動がまるでタコメーターの針を促すかのように伝わってくる。

この135iに搭載されているエンジンは2979cc直列6気筒ツインターボで、最高出力306ps/5800rpm、最大トルクは1300rpmから5000rpmの間で400Nm(40.8kg-m)を発生する。つまり3シリーズのトップモデル335i(セダンやクーペ)と同じチューンのパワープラントを装着しているのである。

ただしこの135iの重量は1560kgと335iクーペよりも40kg以上軽いので、パワー・ウエイト・レシオはおよそ5.1kg/psとポルシェ・ケイマン(5.6kg/ps)を凌いでいる。その結果、BMWのプレスキットによれば標準の6速マニュアルを装備した135iクーペのスタートから100km/hまでの加速性能は5.3秒で、これはポルシェ・ケイマンs(5.4秒)よりもわずか鼻先の差ながら速い。一方最高速度は、本来ならば260km/h以上のポテンシャルがあるにも関わらず、残念ながら250km/hでリミッターが作動してしまう。ちなみにBMWではユーザーの希望に応じておよそ2500ユーロでリミッターの解除を行っている。

エンジンは非常にフレキシブルなので6速80km/hで1800rpm、また町に入って6速50km/hに落しても普通に走ることができる。さらにハイウェイでは100km/hでも2000rpmを僅かに超えた付近でクルージングが可能だ。ハイウェイではステアリング・コラム左側から生えたレバーを使ってオプションのオートクルーズ・コントロールをセットすれば、前車との設定車間を保ちながらストレスフリーな合法クルーズが可能である。ちなみに複雑な操作方法が多くなった現在、このクルーズコントロール・レバーの操作は非常に簡単で使い易い。

ところで快適と言えば、この135iクーペには他のBMWモデル同様にランフラット・タイヤが標準装着されている。一般的にランフラット・タイヤは、パンクなどで空気圧が低下した際にクルマを支えるためにサイドウォールが頑丈で固いために、乗り心地はスタンダード・タイヤと比べると固い。しかも悪いことにこの島の路面は必ずしも完璧というものではなく厳しい冬のために舗装は割れた個所も多かった。そんな条件下でもブリヂストン・ポテンザのランフラット・タイヤを装着したテスト車の乗り心地は、これまでにテストした1シリーズの中で最良のものであった。継ぎ目や穴などによるショックの吸収、そして悪路からのロードノイズも含めてスポーツセダンとしては普通のレベルに達したといってよい。

サーキットでは水を得た魚のよう

ゴットランド・サーキットでは、全長およそ7kmのコースの一部を使いハンドリング・テストを行った。ここでの135iクーペはまさに水を得た魚という言葉がピッタリの挙動を見せてくれた。すでに述べたようにポルシェ・ケイマンやボクスター並のパワー・ウエイト・レシオを与えられた135iクーペは、まずストレートを猛然とダッシュ、シケイン風のコーナーに飛び込む直前でフルブレーキ、フロント338mm×26mm、リア324mm×22mmのベンチレーテッド・ディスク・ブレーキは難なくスピード落としコーナーに進入する。

前後50対50の理想的なバランスのせいでコーナーではニュートラル、非常に安定しており、スロットルとステアリングの駆け引きを楽しむことができる。ここでやや気になったのはロック・トゥ・ロックが3回転のややスローなステアリングだ。DTCをオフにした状態でタイトなコーナーに飛び込んだ時にテールが派手に流れ出したのだが、スタイリングのカウンター操作が忙しくて、ステアリングを思わず「おくって」しまった。すると次のコーナーで前輪がどっちを向いているのかが読み難くなってしまったのだ。

また、シフトレバーは短くて良いのだが、おそらくジョイントが奥にあるためかシフトストロークがやや長めで、スポーティな操作系とは言い難い。まあいずれも本当は腕が良ければ余り問題がないのかもしれないが、ノービスとしては改善して欲しい。

この135iクーペはまずドイツ市場で11月24日から発売が開始され、その後ヨーロッパ各国へデリバリーが広がって行く。ちなみにドイツでの価格は135iが3万8950ユーロ(約643万円:19パーセント付加価値税込)で、これにナビやオートマチック・エアコンなどのオプションを装備するとすぐに4万5000ユーロ(約743万円)に達してしまう。ただし、これらの国々へはすべてがマニュアル車で、来年の春からようやく北米や日本向けに6速オートマチック付きの135iが準備され輸出も開始されるはずである。もちろん価格はまだ発表されていない。



Report:木村好宏



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